(二)-9

「今日からお前の弟になる業平だ。今までもよく遊んでいたが、仲良くしてやれよ、剛志」

 今の父が兄にそう僕のことを紹介したことを、今でもはっきりと覚えている。

 そして兄は、僕に手をさしのべて「遊ぼーぜ」って言ってくれたのだった。

 お葬式で、黄色く変色して動かなくなりわずかに開いたままの父と母の口唇を見て、僕は絶望した。何をどうしたらいいか、わからなくなっていた。息が詰まるような気分だった。それまでも家が近所だったから一緒に遊ぶことが多かった。でも、このときのいつもと同じ動きをした剛志兄ちゃんの口唇が、そんな呪縛から僕を解放してくれた。


(続く)

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