第3話 赤紙②

「本当だ、パソコンがある」


 秋房あきふさが部屋に入ると、机の上に1台の黒いノートパソコンが置いてあった。所々に小さな傷はあるが、そこは大した問題では無い。動けばそれで良いのだ。


「それと、これが手紙だな」


 パソコンの横の隣には開封された1通の真っ赤な封筒が置いてあった。どうやらハサミを病室に持ち込めない秋房の事を考えて、医師が予め開封してくれたようである。その証拠に、赤い封筒の裏には"中は見てないから安心して!"と書かれた付箋が貼ってあった。


 ――それにしても随分と赤い封筒だな。差し人の名前も住所も書かれて無いし、一体誰が出した手紙なんだ?


 秋房は多少不審に思いながらも封筒から手紙を取り出し、書いてある内容に目を通す。


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 結城 秋房様。貴方は異世界人狼ゲームのプレイヤーに選ばれました。


 下記内容をご熟読の上、ゲームにお参加下さい。


◆ゲーム概要

 参加者は都立世田谷育英高等学校、1学年の全教員・全生徒になります。


 プレイヤーが異世界へ転移した後、とある条件によりサバイバー陣営、またはクリミナル陣営に自動的に振り分けられます。各陣営には勝利条件が設定されており、その条件を達成し、最終的に元の世界に帰還する事でクリアとなります。


◆以下はサバイバー陣営の勝利条件です。

①公爵の爵位を持つ全ての魔族を討伐する事。


相良さがら りんを殺害した犯人を全員殺害する事。


③上記2つをクリアし、特定の場所から帰還する事。


◆以下はクリミナル陣営の勝利条件です。

①公爵の爵位を持つ全ての魔族を討伐する事。


②サバイバーを全員殺害する事。


③上記2つをクリアし、特定の場所から帰還する事。


◆以下はルールの詳細です。

①異世界で死亡した場合は本当に死亡します。


②ゲームの期限は5年間です。


③ゲーム開始時、全プレイヤーに個人スキルを付与します。また、一部のプレイヤーには役職スキルを追加で付与します。各スキルは身体の中に蓄えられた魔力を元にして行使できますが、使い過ぎると一定時間スキルが使えなくなり、その他にもペナルティが発生します。


④ 役職は占い師が3人、霊能者が3人、騎士が3人、聖人が1人、処刑人が1人、呪術師が1人、決闘者が1人、通信士が1人、奴隷が1人、幽霊が1人、権力者が1人。場合によって、イレギュラーな役職が追加される場合があります。


⑤異世界転移後に手帳を配布します。手帳には死亡した者の名前が自動的に記載されますが、死因と役職スキルに関しては特定しないと記載されません。


⑥異世界では何をしても大丈夫です。


⑦1番最初に元の世界へと戻って来た者には、どんな望みも1度だけ叶えられるスキルを与えます。


◆その他・補足事項

 

◎ゲームは西暦2021年6月11日、日本時間11時に開始予定です。


◎異世界では各プレイヤー様と同じ音声言語でお話し頂けます。


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「何だこれ? 悪戯か?」


 手紙に書かれていたのは悪質な悪戯だった。死人の名前を悪戯目的で使用するなど、どう考えてもまともな人間のやる事では無い。


 と、その時だった。


 ガラッ! という音と共に、病室のドアが勢い良く開かれたのだ。

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