第254話 代償

 直史はシーズン中に達成したパーフェクトの回数は、NPBよりもMLBの方が多い。

 一つには先発する試合数が違ったということもあるが、もう一つはMLBの方が振り回してくるバッターが多かったからだ。 

 NPBではレギュラーシーズン中、四度のパーフェクトを達成したのが今のところの記録である。

 おそらく未来永劫、更新されない記録のはずであった。

 しかし復帰した直史は、その年に二度のパーフェクトを達成している。

 去年も一度は達成し、そして今年も一度達成している。

 参考パーフェクトを含めれば二度なのだが。


 もしもこの五月の上旬に、二度目のパーフェクトを達成してしまったら。

 頻度的に六回ほどもパーフェクトが達成されるかもしれない。

 それはMLBでの記録と比較してみれば、不可能ではないように思える。

 この八回、おそらくここが最後の難関。

 先頭打者は四番の水上悟である。


 強打者と呼べるようなバッターとは、何人も対決してきた直史。

 しかしその中で、本当に難敵と言えるようなバッターは、片手で数えられる程度であった。

 その全員が日本人だ。ブリアンなども強打者ではあったが、直史の本質的には、それほど恐ろしいバッターではなかった。

 そしてその難敵の中の一人が、この悟なのである。

(久しぶりに対戦したら、30代の後半でまだ成長してたからな)

 数字上はもう、全盛期を過ぎている。

 だがここぞという時の打席では、結果を残すのが好打者なのである。


 最初の打席は粘られて、第二打席目は外野に飛ばされた。

 先頭打者で出てきたここは、とりあえずランナーには出したくない。

 パーフェクトの継続にはこだわらない。

 下手な欲があると、それが絶たれた時には、メンタルに反動が来る。

 それでも負けることはないが、気力のスタミナも温存しておきたい。


 打たせてもいい。

 だが条件としては、単打までである。

(ゴロを打たせる)

 そう思って組み立てていくが、ボール球は確実に見逃す悟である。

(パーフェクトを阻止するのに、かなり必死か)

 タイタンズ打線は、最近好調であった。

 前に直史が投げた時は、三本もヒットを打たれて、最終回はリリーフに任せている。

 むしろ打線からすると、三本しか打てなかったというのは、かなりの問題であるのだが。


 ここでパーフェクトなどをされると、残りの二試合には確実に影響する。

 さらにその後にまで、打線が引っ張られてしまう可能性が少なくない。

 ここでのヒットは悟にとっては一本のヒットに過ぎないが、タイタンズ全体にとっては大きな一本だ。

(とは言っても、それすら難しいんだけどな)

 ボール球から入ってきたのは珍しかった。

 バットを動かしかけたが、しっかりと止める。

 

 ボールカウントが増えて、そこからの三球目。

 スルーかと思ったスイングした球が、より落ちた。

 減速の加減から、スルーではなく滅多に使わないスプリットとはインパクトの瞬間に分かっていた。

 だがそこからカットして行くほど、スイングに余裕がない。

 ボテボテのゴロが三塁方向へ。

 悟の打球速度を警戒し、サードは深めに守っていた。


 慌ててダッシュするが、悟もこうなったら全力で走る。

 エラーを期待もするし、内野安打の可能性もある。

 ともかくここで、パーフェクトを阻止するというのが重要なのだ。


 ボールをそのまま右手でキャッチしたサードだが、そこから一塁に投げるのは直史が止めた。

 もう完全に間に合わないタイミングである。

 内野安打にて、パーフェクトピッチング阻止。

 だがそれには代償が必要となっていた。




 必死で走ったのは、間に合うと思ったから。

 実際にヒットと出て、パーフェクトはおろかノーヒットノーランまでも防ぐことが出来た。

 しかし駆け抜けたとき、変に膝を伸ばしてベースを踏んでいた。

 己の肉体の頑丈さを、過信していたこともあったのかもしれない。


 その場で座り込むほど。激烈なものではない。

 だが間違いなく、膝のところで何かが切れる音がした。

 痛みはあるがそれ以上に、膝が抜けるような感覚がする。

 ボールデッドの状況で、ベンチに合図をする。

 タイムがかかって、足を引きずりながら、悟はベンチへと向かった。


 パーフェクトが阻止された時は、味方であるはずのタイタンズファンからさえ、どよめきが聞こえたものだ。

 今もどよめいているが、その性質は間違いなく違うものとなっている。

 他の選手に支えられて、悟がベンチの奥に引っ込む。

 そして代走が送られてきた。


 そもそも試合は既に、決まったようなものである。

 だがここでパーフェクトを防ぐために、不動の四番が下がってしまったのだ。

 ボールを当てられたとかではなく、駆け抜けたところでの負傷。

 ここで心配にならないはずもない。

 パーフェクトを防がれたレックスファンからさえ、心配の色が見えてくる。

(膝か)

 直史にはなんとなく、何が起こったのか分かった気がしている。


 視界の端に捉えられたのは、必死で一塁ベースに足を伸ばした悟であった。

 だがあそこはもう一歩足して、普通に駆け抜けるべきであったのだ。

 真っ直ぐに伸ばした足で、膝に一気に重さがかかった。

 腱や靭帯が、ある程度負傷したのかもしれない。

 その具合によっては、今年のタイタンズの成績も変わってくるだろう。

 そして復帰に時間がかかるとなれば、悟の年齢からして引退の可能性すらある。


 年上の先にプロ入りした人間が、現役を引退して行くのはいくらでも見ていた。

 高校時代には甲子園などで対戦し、期待を持たれてプロの世界に入ってきた選手たち。

 直史がプロ入りする前に、既に引退してしまった人間などもいた。

 まして復帰してからは、自分よりも年下の選手たちが、普通に引退していったのだ。


 今年のキャンプからのオープン戦では、青砥の引退試合も行われた。

(年上で残ってるのは、織田さんぐらいか)

 ひょっとしたら他のチームの、二軍あたりに選手兼任のコーチなどがいるのかもしれないが。

 大介との勝負は、純粋な野球の勝負というのではなく、どれだけこの世界で生き残れるか、という対決になるのかもしれない。

 それはそれで、本当の生き残りをかけた勝負になるとも言える。


 もっともそうなったら、ピッチャーで技巧派の直史の方が、ずっと有利であろう。

 バッターはバッティング技術の他に、純粋な視力が問題となる。

 距離感を測る視力を失えば、スピードボールはもう打てなくなる。

(そうやって衰えるならともかく、怪我からの引退っていうのはどうなんだろうな)

 怪我で一度引退したという実績持ちの直史であるが、あれは絶望視するほどの故障ではなかったのだ。




 パーフェクトが途切れて、安堵されるか失望されるはずだった。

 しかし今のドーム内は、不穏な空気に満ちている。

 だがこの異常な雰囲気の中でも、直史は投げられるのだ。

 むしろこういう雰囲気こそ、求めているぐらいとも言える。


 高校の後輩であり、その才能は一瞬で見抜くことが出来た。 

 甲子園の頂点にも立ったし、大介の抜けた後は西郷などと共に、NPBでもバッティング面で大きな記録を残した。

 メジャー挑戦も普通に囁かれていたぐらいだが、家庭の事情で日本に残ったのだ。

 大介との比較で考えても、またスピードボールへの対処を考えても、おそらく成功したであろうと言われている。

 だが出身地である東京の、タイタンズにFAで移籍した。

 かなり不良債権になることも多いタイタンズへのFAなのだが、悟はもう10年以上も四番を打っている。

 歴代でもかなりの上位になっている試合数であった。


 復活が無理だ、などと直史は思わない。

 直史自身が五年以上のブランクから、復帰することが出来ている。

 ただ悟は年齢もあるし、直史と違って大きな故障の可能性もある。

 少なくともタイタンズからは、リリースされるのではなかろうか。

(場合によってはうちで獲得する選択肢もあるか?)

 レックスの打線は、まだまだ得点力を必要としている。

 そして同じ東京のチームであるのだから、レックスでも問題ないのではないか。


 タイタンズは資金力が豊富であるため、FAなり外国人なりで、単純な打撃力はある程度埋めてくるだろう。

 公傷扱いになるから、年俸はある程度の低下は抑えられるだろうが。

 同じ学校の出身で、日本代表としては同じチームで戦ったが、プロのリーグ戦で味方になったことはない。

(いかん。色々と考えすぎてるな)

 直史はメンタルを整えなおして、ピッチングを再開した。


 結局この試合は、この後も一本のヒットが出ただけであった。

 そしてそちらのランナーは、ダブルプレイで消しておく。

 パーフェクトもノーヒットノーランもなかったが、マダックスは達成。

 これでレックスは一気に有利になる。

 この不動の四番打者は、ちょっとした故障は確かにあった。

 それがショートからのコンバートの理由の一つだ。

 だがここでの離脱は、相当に大きなマイナスとなる。

 タイタンズはチームの編成自体から、考え直さなくてはいけなくなったのだ。




 右膝の半月板損傷。

 珍しくはないが、軽くもない故障である。

 左打者の悟にとっては、踏み込んだ後に踏ん張る側の足だ。

 当然ながらしばらくの離脱となる。

 あとはその期間がどのぐらいになるか。


 珍しくはないだけに、前例も色々と残っている。

 今季絶望、などと書いている新聞もあったが、その後ろには小さく「!?」が付いているのだ。

 世間を騒がせないと、売れないところがマスコミのひどいところだ。

 もっともタイタンズとしては、普通に状況を説明したが。


 手術をするか保存療法にするか、その判断は少し待たなければいけない。

 少なくとも即手術、と判断されるような故障ではなかった。

 腱や靭帯の断裂でなかっただけ、まだマシであったと思うべきか。 

 だが怪我というのは誰にも、起こってほしくないことであるのは間違いない。


 タイタンズは打撃の中心選手を欠くことになった。

 もちろんこれをある程度、埋めることが出来るのがタイタンズの選手層だ。

 しかし単純な数字ではなく、勝負強さやケースバッティングを考えた場合、悟の価値はもっと高くなる。

 レックスは相手の不運によって幸運をつかんだ。

 このタイタンズとのカード三連戦を、全勝で通過する。

 

 単に勝利したというだけではなく、ある程度の点差があったため、大平と平良を使わなくても良かったというのが大きい。

 もっともリリーフはあまり使わなければ、試合勘が鈍ってしまうものだが。

 ブルペンで軽くキャッチボールはしても、本気で投げることはなかった。

 一応第二戦は、三点差で最終回だったので、セーブのポイントは付くところだったのだが。


 シーズン前半は、休ませられるだけ休ませればいい。

 どうせレギュラーシーズンの終盤は、絶対に必要になってくるのだ。

 今年のセ・リーグは二位から五位までは、あまり差のない展開で進んでいた。

 だがここからタイタンズは、ずるずると落ちていくことになる。

 数日後、患部の状況が明確になってから、やっとタイタンズは発表した。

 手術をした上で、最短で二ヶ月での復帰。

 ただし年齢的に回復力の低下も考えれば、今季絶望も確かにありうるのだ。


 シーズンが終わってからの方が、リハビリに集中出来るだろう。

 むしろここで休んで、しっかりと膝の状態を元に戻すべきだ。

 そもそもプロで20年もやっていれば、あちこち小さな故障はあるのだ。

 ただし今季を完全に見送った場合、実戦からは八ヶ月以上も遠ざかることになる。

 それでピッチャーのボールに、アジャストしていけるのか。


 試合勘などとは言わない。純粋にそれだけ離れていれば衰える。

 そう考えればどうしても、今季中には戻ってこなければいけない。

 選手としてこの先、まだ現役を続けられるのかどうか。

 現時点までにも、多くのタイトルを取ってきた悟。

 将来の殿堂入りは当然であるが、本人がどう思っているか、それが重要である。




 人生は山があれば谷もある。

 悟にとってはまず、体格に恵まれなかったことが不幸ではあった。

 しかし体格はともかく、フィジカルは圧倒的に恵まれていた。

 そして入学した高校では、最後の夏の甲子園を、優勝して終えることが出来た。

 ここからはしばらく、順調すぎる人生が続く。


 大介のいないリーグに入ったおかげで、首位打者に打点王、盗塁王あたりは何度か取れた。

 ミスタートリプルスリーと言われたのは、この20代の前半から30歳頃までである。

 FAかポスティングかと騒がれたこともあった。

 25歳の頃にはホームランも普通に30本以上打っていたので、完全にアスリート型の選手とも言われた。


 大介がいなくなったところで、セ・リーグにFAで移籍。

 メジャー移籍はしないのかと言われたが、そのあたりは現在の夫人との交際も関係している。

 大物野球選手と芸能人の結婚というのは、最近は少なくなっていただけに、かなり注目されたものだ。

 また年齢差がそこそこあったことから、ロリコンなどとも言われていた。

 

 セ・リーグでもトリプルスリーは達成したし、ホームラン王になった年もある。

 もっともその頃には、走力がやや落ちてきていたが。

 この数年は長打を重視していた。

 それでも走ることを、軽視していたわけもない。

 あそこはそこまで、全力で走るような場面であったか。

 怪我をしてからであると、色々と反省すべきことが出てくる。


 一応医者の診断では、三ヶ月ほどで完治すると言われた。

 リハビリを含めてであり、そこまで致命的なものではなかったからだ。

 ただ復帰しても、試合にすぐに使ってもらえるか、それは定かではない。

 タイタンズは助っ人外国人を、しっかりと中軸で使っている。

 悟よりも頭半分は大きな選手たちが、悟に打率も打点もホームランも負けているのが、いっそ爽快ではあった。


 東京は悟の生まれた場所であるし、高校時代は千葉、プロ入りは埼玉と、関東が生活圏の中心だ。

 それだけにある程度、昔の知り合いも戦友も、見舞いに来たりはする。

「で、実際のところはどうなんだ?」

 その日の見舞いに来たのは、白富東の同学年からは、悟と同じくプロ入りした宇垣であった。

 スターズに入って10年以上プロで飯を食い、それなりの成績も残していた。

 だが当然のようにとっくの昔に、プロは引退している。


 白富東は悟の世代から、上にも下にも何人も、プロ入りした選手がいる。

 ただ悟の下の選手たちは、かなり活躍した者もいたが、既に選手を引退している。

 むしろ上の方に、現役がいるという方がおかしいのだ。

「早くて二ヶ月、遅くても半年以内には復帰できる」

「半年だったらもうシーズン終わってるだろうが」

 それはそうなのだ。




 軽いリハビリは、二週間か三週間ほど経過してから始まる。

 だが状態が悪ければ、まだしばらくの安静が必要になるのだ。

 プロになるような選手というのは、誰もが体の強さを持っている。

 それは身体能力もそうだが、回復力などもそうである。

 悟にももちろん、その力が備わっている。


 ただ年齢的なことは、絶対にあるのだ。

 疲労の回復には、どんどんと時間がかかるようになる。

 それでも野球の場合は、年間で143試合もやるので、一試合あたりの負担はそれほど強くもない。

 ずっとプロで戦ってきた肉体が、年齢の衰えをどう上回ってくるか。

 さすがに自分の努力などで、どうにかなるものではないのだ。


 軽い捻挫程度であれば、試合に出てしまうのがプロである。

 なにしろポジションの取り合いは、チームの中で激しいものであるからだ。

 宇垣なども故障から、戦線離脱をしてしばらく、復帰した時にはポジションを奪われていた。

 およそ30歳を過ぎていれば、ポジション争いは若手有利になる。

 チームの強さを大ベテランに頼っているというのは、あまり健全ではない。


 そろそろいいんじゃないかな、と宇垣などからすると思える。

 悟の年俸は確か、五億を超えているはずだ。

 それがこの10年ほどは続いている。

 もう充分に稼いだろうが、もしもMLBに行っていれば、それは少なくとも数倍になっていたであろう。

 ただ悟は日本に、色々と大切なものを残していたわけだ。


 何が今の悟の目的になっているのか。

「まあみっともないプレイしか出来なくなったら引退するけど、そうじゃない限りはな」

 悟は大介ほどの、野球星人ではない。

 ただ人間として、普通に考えていることはある。

「子供たちに、父親としてかっこいいとこを見せたいわけだ」

「なるほどなあ」

 宇垣としては普通に納得出来る話ではある。


 悟はけっこう年下の女優と結婚した。

 出会った時は相手が未成年であったため、仲がいいところを散々ロリコン呼ばわりされたものである。

 と言うか宇垣も普通に言っていた。

 そんな若い頃の年の差など、10歳であっても半世紀も経てば、何も問題のない年齢差になる。

 悟の子供は、上が八歳で下が四歳。

 さすがに佐藤家の血統ほどの、子沢山ではない。


 妻も一時期は女優業から身を引いていたが、最近はまた活動を始めようとしている。

 子供たちが小さいので、そのあたりは家庭内で話し合うことになるが。

「今日は嫁さん、どうしてるんだ?」

「午前中に来てた。どのみちしばらくは入院だしな」

 自宅から近い病院であるので、特に問題はない。

 それに怪我であって、命がどうこうという問題ではないからだ。




 スポーツ選手以外にも、一芸において世間を魅了する人間は、モチベーションの維持が重要になってくる。

 大介のようにただ好きだから、というだけでいまだにトップでいられるのは、かなりおかしい部類である。

 20世紀の最も成功したスポーツ選手と言われたマイケル・ジョーダンなども、一度は三連覇をしたことで、引退をしたのである。

 そこから他のメジャースポーツである野球に、挑戦したというのは有名な話だ。

 結局そちらでは、メジャーにまでは上がれなかったようだが。


 その後にもう一度NBAに戻って、その復帰年は敗北。

 だが敗北したことによって、逆にモチベーションが上がったとも言う。

 二度目の三連覇を果たし、ラストダンスと言われて引退。

 ただ実はその後、もう一度復帰しているというのは、若い者は知らないかもしれない。

 さすがにもう体が、トッププロの間では通用しなくなっていたそうな。


 悟の場合は、モチベーションはまず、自分の幸運への感謝にある。

 シニアの重要な時期に、怪我によって活躍が出来なかった悟。

 体格の問題もあって、特待生などの話はなくなった。

 しかしその引越し先で、一年目となるスポーツ推薦が始まる学校があった。

 それが白富東であったのだ。


 160km/hを投げる武史を、おおよそ四ヶ月の間だが、経験できたことはありがたかった。

 それ以上に、直史のピッチングを知ったことが、意識に強く残ったが。

 メジャーで引退したはずが、40歳のシーズンでNPBに復帰。

 さすがに通用しないだろうと言われたが、上杉との死闘を繰り広げた。

 また大介との対決も、新たな伝説となった。

 ようやく悟は、直史と公式戦で、何度も戦う機会を得たわけである。 

 それまではオールスターか日本シリーズしかなかったのだ。


 果たして直史のモチベーションはどこにあるのか。

 悟としてはそこは、不思議に思うことがある。

 そもそも大卒から、プロ入りしなかったことも驚きであった。

 だがたまたま武史や淳と会った時などは、プロに来るつもりなどあるはずがないと、はっきりと言われたのだが。


 自分が怪我から復帰して、再び一軍のグラウンドで戦うモチベーション。

 それを持つために、何をすればいいのか。

 リハビリの辛さというのは、かなり言われたものだ。

 タイタンズの編成陣などは、引退を示唆するようなことも言っていた。

「俺はまだやれるはずだ」

「まあお前ならな」

 同じ釜の飯を食った仲間。

 悟と宇垣の話題は、怪我のことにはあまり触れず、懐かしい過去に遡っていくのであった。

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