T/事情聴取

 旧型の電気自動車は、モーターの軋むような音を立てつつ緩い坂を下っていった。道の両脇には細々とした住宅街がどこまでも延々連なっている。神崎はハンドルを握りながら、どんよりとうねる雲を見上げ、ため息をついた。

 午後になると、あれだけカンカン照りだった空模様はにわかに暗く怪しくなった。太陽が隠れた分だけ気温は下がっているはずなのだが、湿気のせいでさほど心地よくはない。このままずっと、クーラーの効いた自動車の中へ引きこもっていたかった。

「……それで結局」神崎は、助手席の赤尾に先を促す。「所轄の連中はなんていっていたんです?」

「犯人じゃあるまいし逃げも隠れもしないだろう、とさ」両手に抱えた官給のタブレット端末に目を落としつつ、不機嫌そうに言葉を続けた。「ま、連中としてもこの暑い中探し回るのは億劫だったんだろうがね。実際に出向かなきゃならんこっちの身にもなって欲しいぜ」

「出向くったって、あなたはどうせ」神崎はまたため息をついた。空模様のせいか、気分まで陰鬱になってくる。「車の中で待ってるだけでしょう。せめて給料分は働いてください」

 無精なのか体力の問題なのか実際のところはわからないが、どうも人間を相手にするのがひどく億劫であるらしく、外回り中の赤尾義持はかたくなに車から出ようとしない。老体だ何だと理屈をつけて、クーラーの効いた助手席にじっと座っているだけなのだ。そのくせ妙に勘が鋭く、あれこれ捜査の不備を指摘ばかりするものだから、今では彼と組みたがる同僚はただの一人もいなかった。今まさに行動を共にしている神崎もまた、成果が上がらないのだからベテランと組んで学ぶのが筋だ——などという適当な口実で上から押しつけられたというだけの話だ。お荷物と厄介者とをひとまとめにして捜査の前線から省くためだろう、と神崎は自虐混じりに推測している。

「給料分といったって、近頃の公務員はえらい安月給なもんでね」赤尾はとぼけた調子で肩をすくめた。「あんまり年寄りをこき使ってくれるなよ、お前の二回りも年上なんだぜ。足腰がキツいのなんのって……」

 エコノミー症候群になっちまえ——神崎は内心呟きながら、細い脇道へハンドルを切った。両脇を石塀に挟まれながら、自動車はゆっくりと進んでいく。ぽつり、と窓ガラスに滴が落ちた。ほんの数秒も経たないうちに、バラバラと細かな雨音が響き始める。

 風景が灰色に染まった。

 クーラーから流れる冷気が、心持ち湿り気を増した気がした。

「赤尾さん——」神崎はおもむろに口を開く。「例の一家惨殺事件、実際のところはどういう話なんですか?」

 警察の公式発表がいまいち判然としないせいか、そもそも捜査があまり進展していないせいか、一時は報道にも上っていたがすぐに人々の関心から消えてしまった。神崎も、警察内部でささやかれるあれこれの噂を耳にして「どうもおかしな事件らしい」と認識しているだけである。

「俺が聞いた話では」と、赤尾はこめかみに手を当てて、記憶をたぐるような素振りを見せた。「被害者一家は父母と息子二人の四人家族。唯一の生き残りは長男だけで、残りはみんな死んだらしい。犯人は大手新聞社の記者だった男だ。こいつは犯行後、風呂場で首を吊って自殺してる。詳しいことはわからんが、どうもその死体がひどい状態だったらしいな。そして——」彼は口元に笑みを浮かべ、続けた。「ここからが面白いとこなんだが、現場には『人権委譲契約書』なんて大層な紙切れがあったそうだぜ」

「人権の……委譲? そんなものがあるんですか?」

「バカ、あるわけねぇだろ。おままごとにしたって趣味が悪い。ただ、当人が本気だった可能性は大いにあるな。書面を鵜呑みにするのなら、被害者家族の四人全員が、自分の人権を犯人に譲り渡してるって話だ。犯人の『ペットになる』とか、『いかなる扱いを受けても文句をいわない』とか、『あらゆる人間的な行動を禁じる』とか……無茶苦茶な内容だよ、まったく。SMにしたってハードすぎる。生き残った長男も、自分を『動物だ』と思い込んでいたくらいだから……まあ、念の入った『調教』だったんだろうと思うぜ」

 ——そうして、保護されたのちに『動物』として飼育されることになった、か。

 なるほど、と神崎は頷く。なら、例の少年が『文化的』『文明的』でないにも関わらず施設送りになってないわけが理解できる。ことがややこしくなっているのは、少年自身が『人権の委譲』などというバカげた契約を有効と信じているからだろう。『動物である』という非文化的な自己意識は、恒常的なものではなく、単なる『契約の履行』である可能性が考えられる。つまり、その『契約』が無効であることさえ伝達できれば——その試みはことごとく潰えたに違いないが——彼は『人間』にすぐさま立ち返るかもわからないのだ。

 赤ん坊が、『見込み』で人権を認められるように、

 彼もまた、『見込み』で人権を認められるのではないのだろうか?

 あの憎たらしい〈戸籍省〉では、今まさに議論が繰り広げられているに相違なかった。

「犯人の動機は?」

「さて、どうかな——詳しいことは俺にもわからん。一応、捜査資料を請求しとくか?」

「お願いします」

 赤尾は慣れた手つきでタブレット端末を操作した。警察のネットワークに接続し、捜査資料のデータベースへアクセス要求を送信する。

 車の外へは出ないくせに、どうしたってこういうことには積極的なんだろうか——と、神崎は少し不思議に思う。仕事に、つまり事件そのものに興味がないわけではないのだろう。ただ単純に、身体を動かすのが面倒なだけか……あるいは自分が動くまでもない、などという上層部の連中に似た傲慢さをこの人も備えているのだろうか? 大学で文学なぞを研究する人間だから、あるいはそういう偏屈さも当然であるのかもわからない。神崎はそんなことを思いながら、カーナビの指示に従ってゆっくりとブレーキ・ペダルを踏んだ。

 車窓から視線をちょっと投げれば、すぐそこに小さなアパートが見える。築六十年は経っていよう、二階建てのマッチ箱めいた建築である。外へ張り出したベランダには、男物のよれた下着や、裸の女を印刷された抱き枕カバーなどが干しっぱなしで濡れている。

 自動車は路肩で停止した。モーターの音がピタリと止んで、車内には湿っぽい静寂が充満していた。

 雨脚は勢いを増している。

 天井に降り注ぐ水滴の音色は、機関銃めいて騒々しい。

 雨水はうっすらと道路を覆い、ちょっとした流れを形成している。

 神崎は顔をしかめ、ため息をついた。

 封印したはずの古い記憶が、チカチカと脳裏に明滅している。

 ——彼は、水が嫌いだった。


 神崎文則は、物心つくまでのごく短い期間を岩手で過ごした。彼が生まれた釜石市は、山峡をうねり海へと伸びる川のような形状の町だ。高地から吹いてくる乾燥した熱風で、夏などは東北にしては珍しい酷暑を記録していた。

 それでも海沿いの地域に足を運べば、心地よい潮風がないでもない。リアス式の細々と波打った海岸に立って、近海を漂う船影を見る——幼少の彼は、しばしばそうして母と海辺を散歩していた。

 海は、綺麗だった。

 あの日——三月も終わりにほど近く、空はよく晴れている。

 冷涼な風が、ごう、と頬を撫で回した。

 母の身につけていた長袖の上着は、水色で、澄んだ海とよく合っている。

 どこかで、海鳥が騒がしく鳴いた。

 悲鳴に似た鳴き声だった。

 何だろう?

 怪訝に思って、神崎は母の手をギュッと握る。

 不意に、めまいがした。

 ぐらり、と足がおぼつかなくなった。

 母が不安げな顔をして、彼の小さな身体を抱き寄せ——


 この揺れはめまいではない、とそのときやっと神崎は気づいた。


「おい、どうした」

 赤尾の声で我に返る。雨水に覆われた車道を見ながら、「いえ、別に」と彼は答えた。思い出したくもないいやな記憶が、まだ脳みその奥で渦巻いている。車内に響き渡る水音から意識を逸らそうとするかのように、神崎は「なんでもないですよ」と微笑んで、自動車の電源ボタンに手を触れた。

 カーナビの明かりが、パチン、と消えた。

 モーターの軋みが鳴りを潜めた。

「やっこさんは、二〇八号室に引きこもっているんだとさ」赤尾は気怠げに、アパートの一角を指さした。「所轄の連中が電話で在宅を確認してる。十中八九、単なる不幸な発見者だろうが……」気を抜くなよ、と神妙な面持ちで締めくくった。

「赤尾さんはまた、車の中でのんびり待機ですか?」

「水浸しになりたかないね」

「はいはい。それじゃ代わりに要領の悪いお荷物がびしょ濡れになってくるとしましょう」

 嫌みったらしく言葉を残し、神崎は傘を片手に外へ出る。

 路面を流れる雨水は、見た目よりもやや深かった。しぶきを散らしながら歩いていくと、革靴の底から生ぬるい水が染みこんでくる。治りかけの水虫が、足の裏で微かにうずいた。

 アパートの入り口にたどり着き、彼はじっくりと建物の外観を眺め回す。かつて白かったろう外壁は経年のせいで半ば灰色になっていた。その『灰色』も、剥がれたペンキを都度塗り直しているせいか、比較的あっちは白に近く一方こっちはほとんど黒……といった具合で、ひどくみすぼらしいまだらをしている。

「……ま、人のことはいえないか」

 自分が結婚前まで住んでいた警察寮の私室を思うと、そうバカにはできなかった。

 階段を上って一番奥が、目的の部屋であるらしい。金属製のいかにも重たげな扉が並び、そのどれもが一様に古び、錆びている。表面は緑に塗装されているものの、あちこち禿げて、銀色の地肌を覗かせていた。

 二〇八——と、扉に貼り付けられたプレートを見る。そのすぐ下には「山上」とゴチック体で小さく名前が記されていた。

「山上さん、いらっしゃいます?」神崎は少し声を張る。「山上さん……山上祐二さん?」

 扉の向こうから、誰だ、と小さく不機嫌そうな返事が聞こえた。

「警察の者です。お話を伺いたく……」

「鍵、開いてるよ。勝手に入れば?」

 山上祐二は、殺されたTを最初に発見した飼育員だった。死体を前に動揺したのか、警察の到着を待つことなく動物園を早退してしまったという。無理もない、と神崎は思った。何しろ殺されたのは——人権があるかどうかはまだ判然としないにせよ——ヒトの子供であったのだし、その上彼は一時でも飼育員として接していたわけである。飼い犬の死に目にさえ人間はしばしば動揺するのに、これがヒトの子供であれば、とても平常ではいられまい。

 いくらかの同情を胸にしながら、冷えたノブに手をかける。

 ギィ、と歯ぎしりに似た音を立て、扉の向こうが露わになった。

「どうも、失礼しますよ」

 最初に感じたのは「臭い」だった。カビと腐敗、人の脂や精液の臭いが、ごちゃごちゃに混じって室内にじっとりと充満している。電灯は消され、窓はカーテンにぴっちりと覆われ、唯一の明かりは壁際に位置する大きなモニターだけだった。白黒の荒い映像が、スローで再生されていた。モニターの明かりに照らされて、六畳ほどの部屋いっぱいに、食べさしのカップ麺や丸まったティッシュ、水垢だらけのグラスなどが雑然と置かれているのが見えた。

「あんたの足、濡れてる?」神崎が靴を脱ごうとしたとき、部屋の隅から野太く不機嫌な、そして無気力な声が漂ってきた。「床を濡らされると困るんだ。足が滑って危ないからね」

 山上だろうか、と神崎は思う。多分そうだろう。声の主は、暗がりに沈んでよく見えない。目を凝らしながら「ええ、できれば何か拭くものを……」と口にすると、ボンヤリとした人影は白い何かを投げてよこした。あちこちに赤黒い染みがついた、変な臭いのするタオルだった。靴下を脱いで足の裏を念入りに拭くと、また水虫が微かにうずく。

 いやな気持ちになった。

「で、何の用?」

 モニターの明かりを頼りにしながら、散らかった部屋の一角にどうやら座れる場所を見つける。床板が妙にベタベタとしていて、神崎は早くも立ち去りたい欲求に駆られた。車の中でのんびりとくつろいでいるだろう赤尾を思うと、毎度のことながらうらめしくなる。

「山上祐二さん、で間違いはないですか?」

 薄暗がりに目が慣れてきて、やっと男の顔が見える。光の加減か、異様にやつれて見えたものの、所轄の刑事から渡された写真と同一人物でまず間違いなさそうだ。神崎は懐から、メモ帳とペンを取り出した。

「ああ、山上は俺だよ」鬱陶しそうに答えると、神崎からモニターへと視線を移す。お前など視界にも入れたくない——というかのように。「で、何の用なの?」

「お話を伺いたいと思いまして」

「疑ってるってわけ?」

「いえ、ただ事実確認をしておきたいだけです。……遺体を発見されたのは、だいたい何時頃でしょう?」

「十一時だね」と、気怠げに答える。「餌やりに入ったら、あの有様だよ」

「ぴったり、その時間ですか?」

「間違いなく、ね」山上は眉間に皺を寄せた。「園長が時間にうるさいんだ。多少遅れたって動物は死にやしないのにね。……いや、今回は確かに死んじまったわけだけどさ」

 ヒヒヒ、と彼は心底つまらなそうに唇を歪める。

 実際、何も面白くなかった。

「鍵は確かに閉まっていました? それから……そう、何か変わったことはありませんでした? 怪しい人影を見た、とか」

「閉まってた、間違いない。変わったことなんか別にないよ」それから少し考えるような素振りを見せて、「……いや、ないことはないね」と訂正する。「学校の先生だかなんだかが、檻の前にいたんだったな。俺が餌やりに行くより前から、じっと覗き込んでいたんだっけ。女だったな。珍しいよ、あいつに興味を持つ人なんてそうそういやしないからさ」

 所轄の警官から、すでにその話は耳にしていた。朝から校外学習の引率できていた、若い女性教諭である。今頃は本署で事情を聴かれていることだろう。

「その女性は、何を?」

「さあね。あいつが死んでるのに気がつかないで、檻の中に話しかけている様子だったけど……でも、何にしたって外からじゃ殺せやしないだろう? 仮に犯人がいたとして、あの女じゃないと思うね。ほら、死体に刻んであった落書なんか——」

 ああ、と神崎は言葉を継いだ。「ニルワヤ、ですか」

「そう、それ。あんなの、中に入らなきゃとてもできっこないからな」

 この男はやはり犯人ではないらしいな——と、神崎はメモ帳に印をつけた。彼が少年を殺したのなら、当然ながら女性教諭が来るよりも先に檻へ入っている必要がある。しかしこの飼育員は、女性教諭のあとからやって来て檻に入った。

 ——あるいは彼女が来るより早く殺しを済ませていたのだとしたら? 殺害後いったん檻を出て、女性教諭が来たあとに再び檻を訪れる……?

 いや、それも妙な話だ。

 これではまるで、女性教諭がやって来るのをあらかじめわかっていた上で、アリバイ作りに協力させたかのようではないか。彼女の居合わせたのは、まず間違いなく偶然だろう。その辺りの裏取りは、またあとで済ませるとして——。

「檻の入り口は、あの扉だけなんですか?」神崎はまた質問を続けた。「どこか隠し扉とか、鉄格子の外れる場所なんかがあったりは……」

「バカいうなよ! 動物を入れる檻なんだから、そんな仕掛けに意味なんてないだろ」山上は、嘲笑するように鼻を鳴らした。「入り口は一カ所、あの二重になった扉だけさ」

「それで」神崎はいやな予感を胸にしながら、メモ帳に聞き取った事項を書き込んでいく。「錠の管理は……」

「キーは一本だけ、飼育員の詰め所にあるよ。朝の餌やりに持ち出されたあと……そう、だいたい八時半頃にはぜんぶ決まった置き場所に戻る。紛失がないように、園長自ら確認してるからまず間違いはないだろうな。詰め所には警備員が常駐していたはずだから、用もないのに鍵を持ち出せばすぐに止められるんじゃないかと思う」それから、む、と顔をしかめて「……いや、一本だけじゃないかもしれない」などと付け加えた。「マスターキーが、確か園長室の金庫にあったんだったかな。しかし、番号を知ってるのは園長だけだし、今まで使った試しはないよ。あれじゃないも同然だね」

 それではやはり、被害者の死亡した十時四十五分前後——あの檻は完全な密室状態ということになる。参ったな——と、神崎はここでペンを止めた。この事件は、どうも一筋縄ではいかないらしい。綿密に聴取しておかないと、また赤尾に不備をつっつかれかねなかった。

「あの、一つ質問……というか、疑問なんですが」彼は山上に向かって、尋ねてみる。「動物って、自殺するものなのでしょうか?」

「………………自殺、ね」モニターを向いていたしかめっ面が、ほんの少し和らいだ。それから無気力な目を神崎に向け、山上は「あんた何がいいたいの?」と問い返す。

「……その、ちょっとした思いつきなんですが」神崎は考えをまとめながら、慎重な口ぶりで話を続ける。「殺された例の少年は、自分を『動物だ』と思い込んでいたわけでしょう? 噂によれば例の事件で保護されて以来、一度だって言葉を話さなかったとか」

「確かにしゃべらなかったよ。よっぽどひどい目見たんだろうな……うちがあいつを受け入れたときも、身体の中はとんでもなく不健康だったわけだしね」山上は少し嗜虐的な、愉快そうな顔をした。「監禁中に何食べてたのか知らないけど、内臓がえらいことになってたんだ。重度の便秘で、餌に下剤を混ぜるしかなかった……」

「つまり、僕がいいたいのはですね」横道へ逸れる山上を遮り、神崎は自分の言葉を被せる。「自らを動物だと思い込んでいた以上、人間らしい行動なんて何一つするはずがないってことです。言葉を話さないように、服だって着ないし道具も使わない、きっと直立二足歩行だってしなかったでしょう? なぜなら彼は『動物』で、それらは人間独特の習性だからだ」

「……ああ、いわれてみれば確かにね」

「僕は寡聞にして、動物が自殺するだなんて聞いたことがないんです。人間のように高等な脳があるからこそ、苦悩があり、自殺があるんじゃありませんか? 動物を自認しその通り行動した少年は、だからどうしたって『自殺できない』。つまり……」

 他殺である。

 するといったい、犯人はいかにして檻の内部へ侵入し、そして飼育員が死体を見つけるまでに逃走したのか——。

 山上は、へぇ、と小さく息を漏らす。「なるほどね。それで『動物は自殺するのか?』なんて妙な疑問が浮かぶわか。単なる飼育員とはいえ、わたしはあんたより専門家に近いといえばその通りだし……」彼は少し考えるような素振りを見せて、「いや」と退屈そうに首を振った。「残念だけど、動物だって自殺するよ」

「そう、ですか」神崎は、微かに落胆の色を見せた。「でも、やっぱり信じられませんよ。狸が手首でも掻き切るんですか? 鶴が崖から飛び降りますか? 動物が人間のように悩み苦しむものでしょうか?」

「確かに少ないけどね、ないことはない。フィリピンの猿なんか有名だけど、こいつはストレスがかかると木から落っこちて自殺するんだ」そもそも、と彼は続ける。「人間独特の習性なんて、実際のところはそう多くないさ。たとえば言葉だって、定義にもよるけど人間だけのものじゃないんだから……イルカは二種類の音を使って会話するし、カニはハサミを振り上げて交尾相手にアピールする、ミツバチはダンスで花の場所を周りに伝える……ぜんぶ言葉といえば言葉なのさ。他の個体とコミュニケーションを取らない生き物なんて、むしろ少数派じゃないのかな。服は……どうだろうね。散歩中の犬なんか見ると、過保護な飼い主に着せられてるのは時々あるけど。苦悩にしたって、脳みその大きさは関わりないさ。そこらへんの獣医に聞いてみな、鬱病のオウムに紹介状を出してくれるぜ」

 人間と動物とを峻別するのは、案外と困難なものなのだ——と口にしながら、山上はじっとモニターの明かりを見つめている。まるで事件に関心を持っていないかのような……いや違う、と神崎は直感した。目の前の男は、むしろ事件から目をそらそうとしているのだろう。先ほどからの無愛想な態度だって、そう考えれば納得がいく。間近で目撃した死体の記憶を早く消し去ってしまいたいのか。

「しかし」と、神崎は続ける。「さすがに、文字を書く動物はいないでしょう?」

「さて、どうかな。アザラシだとか象だとかは、うまく調教すれば文字くらい書くけどね」

 完敗だった。

 なおもしばらく形式的な質問を続け、神崎はメモ帳を懐にしまう。「またもう一度、署で正式に今のお話をお聞かせ願うかも知れませんが」礼をいって立ち上がり、玄関に向かいかけたところで——ふと、振り返った。「ところで、山上さん」

「……まだ何か?」

「気になっていたんですが、それは何の映像ですか?」

 無気力な瞳が、ゆっくりと神崎に向けられる。

 モニターにボンヤリと照らされた顔は、どこか、能面を連想させた。

「これはね——」


 人間が、動物になる瞬間ですよ。


 騒々しい雨音が耳の奥に反響した。

 きぃきぃ、と甲高い軋みを上げながら、金属の扉がゆっくり閉まった。

 曇天とはいえ、廊下に出れば室内よりずっと明るい。神崎はややくらむ目を瞬かせながら、モニターに映っていた醜悪な映像を脳裏からせっせと追い出しいていた。忘れてしまおう。どれほどインモラルでも他人の趣味に首を突っ込むつもりはないし、十中八九事件とは関わりがないことだ。

 ——猿山に落ちる女。

 おそらくは監視カメラの映像だろう。横流しは何かの罪に抵触するのかもしれないが、今はあまり追求する気力が湧かなかった。雨は気分を憂鬱にする。

 元来た廊下を歩いていると、びしゃり、と濡れた靴が水っぽい音を響かせた。雨脚は勢いを増し、当分の間止む気配がない。体温で生暖かくなった靴下が、ひどく蒸して不愉快だった。水虫が、足の裏でジクジクうずく。


   □□□


「なぁ神崎、お前は自殺って何だと思う?」

 住宅街をしばらく走り、大通りへ合流しようという頃である。神崎から一連の会話の内容を聞いて、ぽつり、と赤尾が口を開いた。

「そりゃ、文字通り自分で自分を殺すことでしょう?」

 神崎は、ゆっくりとハンドルを傾ける。曲がり角に面した塀から、やたら背の高いヒマワリがひょっこりと顔を覗かせていた。花は枯れかけ、じき種をまき散らして今年の夏を終えるのだろう。茶色く縮れた花びらが、雨水にヒタヒタと濡れていた。

 また、雨音が強まった気がする。

「それじゃお前は何をもって『自分で自分を殺したんだ』と判断するんだ?」

 赤尾は唐突に手を伸ばし、横から神崎の両目を塞いだ。

「な——」甲高いブレーキ音が鳴り響く。顔を覆った手をはねのけて、神崎は怒鳴った。「なにするんですか! 死ぬ気ですか!?」

 自動車は民家の塀へ突っ込もうという格好で、そのやや手前に停止していた。背の高いヒマワリが、すぐ目の前で揺れている。あと一瞬ブレーキを踏むのが遅かったら——と、神崎は背筋が寒くなった。

「そう、それだ」と、赤尾は事もなげに口を開く。「自分の行為が原因で死ぬことを『自殺』と定義するのなら、今のだってまさにそうだ。装備不足の登山客も、感染症の患者を診て罹患した医者だって同じこと……みんな死ねば『自殺』になる」

 神崎は助手席を睨みながら、慎重にアクセルを踏み込んだ。

 車は再び、雨の中を走り始めた。

「定義が曖昧だっていいたいわけですか」

「たとえばここで、『死が明らかに予測されている場合においてその行動に至る』という条件を付け加える考えがある。本人が将来の死に無自覚であれば、裸で雪山に飛び出したところでそれは『事故』であり『自殺』ではない……」

「しかし、そんなことがありえますか?」神崎は少し首を傾げる。「自分が死ぬかもしれない——なんて、どんな行動にでもいえる話だと思いますけど。夜更かしをすれば脳梗塞で死ぬかもしれない、電車に乗れば事故に遭うかもしれない、道を歩けば通り魔に刺されるかもしれない、煙草を吸うのだってやっぱりそうです……どんな行為も多かれ少なかれ『自殺的』ってことになるでしょう?」

 確かに、と赤尾は頷く。

「自分が『死ぬ』という肯定文の未来予測が決して100%の精度を持ち得ないのと同様に、『死なない』という否定形でもやはり確実からはほど遠い……人は常に『死ぬかもしれない』『死なないかもしれない』という曖昧な予感を抱きながら『死』と『生』の可能性のバランスの上に生活している。デュルケームなんかはこの立場を取ってるそうだぜ」

 おかしいな、と神崎は思った。それではまるでありとあらゆる人間が、常に『自殺未遂』し続けているかのように聞こえてしまう。理屈の上ではそれで構わないのかもしれないが、どうにも実感が湧かなかった。実際、自動車を運転する今、自分はちっとも自殺しようなどとは考えていない。事故の可能性がないことはないが——助手席に赤尾を乗せているのは、それこそ自殺行為なのかもしれないが——できることなら死にたくはない、事故に遭いたくはないと思って慎重に運転しているつもりである。

「なんだか、僕の知ってる『自殺』とはずいぶんかけ離れた定義ですね」

「ああ、俺もそう思う。世間一般でいうよりも、ちょっと広く解釈しすぎだ。そもそもこの論理は『自殺』にばかり焦点を当てて、『生きる』という選択の意思を無視しすぎている。煙草を吸うのは緩やかな自殺でありながら、『より過激な自殺行為に手を染めない』という否定文的な『生の選択』でもあるわけだからな」

「ならやっぱり、空論ってやつじゃありませんか」

「ま、そういう批判は十分にあり得る」彼は続けて、だが別の考え方もあるのだ、とこう口にした。「死の原因となった行動に、今度は『死の予想』だけでなく『死の意図』をも加えるんだ。死のうと思っていない限り、それは『自殺』とは呼べないのだ——とね。本来なら生きていられたはずの人間が、『生きる』という道徳的義務を放棄して、自ら意図し死に至る。それが『自殺』だ——と、こいつはモーリス・アルヴァックスの理論だったな」

 神崎は、なるほど、と内心に呟く。

 先ほどの広すぎる定義よりは、はるかに納得しやすかった。

「しかしそうなると、どうして人は死ぬことを『意図』するんでしょうね」

 思いついた疑問を、ふと口にする。

 赤尾は「ふむ」と目を細め、それから片手を神崎に向けた。また顔を覆われるのじゃないだろうか——と彼が少し慌てていると、「違う違う」と赤尾は苦笑し、ピン、と三本の指を立てる。「自殺の分類だよ」

「……分類?」

 ——誘惑、逃避、意思。

 赤尾の色あせた唇が、淡々と三つの言葉を並べた。

「第一に考えられるのは、『死』そのものに『誘惑』されている場合だな。オフィーリアめいた水死とか、俯瞰からの墜落死とか、ある種の『美学』を伴う憧憬……。バタイユがいうようにエロスの本質が禁忌とその侵犯であるなら、不道徳な『自殺』に誘惑される者がいたって決しておかしな話じゃない。いや、それよりも根本的な部分では、『死』そのものが究極のエロス——侵犯されるべき禁忌であるといっても過言じゃないさ。到達してはいけないもの……到達すれば戻れないもの……永遠の始まりであり、終わりでもある……そういうものを『真理』だとか『神』だとか、はたまた『死』と呼んで人は歴史上あがめたり恐れたりしてきたわけだ。西洋芸術なぞを見るがいい、死はとんでもなくエロティックな題材だぜ……ステファノの〈死せるチェチェリア〉、ポールの〈ジェーン・グレイの処刑〉、アンドレア〈ルクレティア〉、クレメンテ〈小さなヴィーナス〉……特にリジェの〈ルネ・ド・シャロンの心臓墓碑〉なんかは傑作だ」あるいは、と彼はいった。「第二に、苦しみから逃れるために死を選ばずにはいられない、つまり逃避的な自殺というのもあるだろうよ。鬱病のような体質による苦痛、失敗などに起因する自己評価の低下による苦悩、あるいは胸の内に淀んでいた欲求不満なんかもあり得るだろうが——そういう個別の苦しみから逃げ出すために、人はしばしば自殺する」

「なんだか乱暴なやり方じゃないですか?」率直な感想だった。「苦しみがあるなら、まずそれを取り除くべきでしょう? 死んでしまえばそりゃ苦しみも何もあったもんじゃないえしょうけど、本末転倒というか何というか……」

「バカ、それができないから死ぬんだよ。カビの生えたパン切れから悪い部分をむしり取る……そうすりゃ確かに食えるがね。だがあまりにもカビの侵食がひどい場合を考えてみろ、パンそのものを捨てる以外に方法なんざないだろう? 一滴の泥水が混じった酒は、もはやまとめて捨てるほかない……どれだけ上質なワインであってもね。ましてイエスの血になんてなりようがない」

 そうだろうか、と神崎は思う。

 そうかもしれない。

「じゃ、意思による自殺というのは?」

 問いながら、彼はまた曲がり角でハンドルを切った。助手席をじろりと睨みつけながら、速度を落として慎重に進む。やがて、道は大通りへと合流した。運送屋のトラックが、路面の雨水を跳ね飛ばしながら前方を慎重に走行している。

 交差点に差し掛かった。

 信号が、赤に変わった。

 神崎はブレーキをそっと押し込む。

「第三に考えられるのは、強い意志によって実行された自殺だな。死の誘惑に理性が負けたわけでなく、また苦しみから逃れるために死を選ぶほかなかったのでも、無論ない。理性による積極的な死の選択なんだ」

「そんなことがありえますか?」

「ははははは! ありえるね! いや、間違いなくありえる。なんだったら、これこそがもっとも人間的で——そしてつまらない『自殺』の形式といったって、決して過言じゃないだろうよ」いかにも愉快げな赤尾の声が、車内に騒々しく響き渡った。「抗議の意志を示すために自ら焼身自殺する……そんなのは古今東西ごまんとある例だろう? 要するに殉教さ。信仰するのは人生哲学とか道徳だとか、決して『神』とは限らないがね」

「それじゃあ——あらゆる自殺がその三つに分類されるのだと仮定したら」神崎は問うた。「動物の自殺は、いったいどれになるんです?」

「さてね。わからんよ、そんなものは」赤尾はふん、と鼻を鳴らした。「動物にも『苦痛』があるのは確実だろうから、逃避的な自殺というのはまず確実にありえるだろう。例の飼育員が口に出した『フィリピンの猿』なんかは——多分ターシャとかいうメガネザルの一種だろうが——まさにこの逃避的自殺の実践者だな。だが根本的な問題として、動物と人間とが言葉で通じ合えない以上、『死の誘惑』や『理性的な死』なんてものをどこまで切実に感じているのか……つまり、『死』の概念や『理性』なぞをどこまで鮮明に内面化しているのかという問題には、どうしたって答えが出せねぇ。……というかな、それより何より、こんな『分類』はあくまで便宜上であって、あらゆる自殺を截然と区別する魔法の道具ではないんだよ。そもそも自殺者の精神はそこまで単純にできちゃいない、色々な苦悩が苦痛が混在し、自殺とは正反対の方向を向くものさえ中にはあり、しかしこのカオスの中から結果として出てくる行動が『自殺』である——というだけの話だ。だから、結局のところ自殺者の精神を個別に見ないことには何もわからん。それが動物なんて言葉の通じない輩であればなおさらだ。わからん以上は、ただ動物が『自殺することがある』という事実を見るしかねぇ。どうあれ連中は『自殺する』、確かにいえるのはそれだけだ」だが、と彼は小考し、続けた。「今回の事件に関する限り、重要なのは多分そこじゃないだろうな」

「なんだか迂遠な言い方ですね」神崎は少しうんざりしてきた。ここまで長々と話しておいて、結局『重要なのはそこではない』ときた。どうにも、この男の衒学的で回りくどい物言いが出会って以来好きになれない。「だったら、問題はどこだっていうんです? 動物は自殺する、だから檻の中の少年は自殺できる。しかしそれは『できる』だけで、他殺である可能性も否定できない」解決の糸口が見当たらない、と軽くぼやいた。「腕に刻まれたあの文字もそうです。動物だって文字くらい書く、だからなんだと問われればどうというわけでもない。ただ結論が保留になるだけ……」

「なぁ、神崎」と、赤尾がニヤニヤしながら口を開いた。「気がついていないようだがな、お前もあの飼育員も、一つとんでもない勘違いをしてるんだぜ」

「勘違い?」

「論点がちとズレてるんだよ。『死体の腕に刻まれた文字』『自殺』そういう要素が動物にありえるかどうか、なんていうのは『事実』の問題として考えるべきじゃない。あれは自分を『動物』だと思い込んでいたって話だろう? なら、その『動物』は科学的に裏付けられた存在ではなく——」

「……………………あ、」

 ああ、そうか。

 神崎はようやく合点がいった。

「なぁ、神崎。動物が自殺する、って話はお前にとって初耳だったわけだろう? 場合によっちゃ文字を書く、言葉だって持っている——ぜんぶ一般的な『動物』の印象からはちょいとズレた話のはずだ。だったらそんな『事実』は無視していい。なぜなら当然、『被害者も知らなかった』ことなんだからな!」

 自分を動物と思い込んだ少年が、いかなる『動物』のイメージを抱いていたのか。彼が従った『動物観』は、いったいどのようなものであったか。特別の教育を受けてでもいない限り、それはあくまでも一般的な印象の枠に収まるものと見て不自然はない。動物はしゃべらない、動物は歩かない、動物は服を着ない、動物は文字を書かない……。

 そして、動物は自殺しない。

 首を吊るシロクマも、電車のホームに飛び込むコアラも、空想の中にしかありえない。

 だから少年は、自殺できない。

「それじゃやっぱり——」


 あれは他殺だ。


「決定的なのはやはり『ニルワヤ』の文字だろうな」赤尾はいった。「飼育員のやつは、調教すれば動物も文字くらい書く——なんていってやがったみたいだが、そもそもこの反論からして無理がある。調教すれば書くってんなら、いったい誰が被害者を『調教』したのかって話だろう? 一家惨殺事件の犯人が監禁中に仕込んだってのか? それとも別の何者か? 何にしたって単なる『自殺』じゃ片付かない。そして『他殺だ』と仮定したとき——」

「密室殺人、ですか」

「それが一つだ」赤尾は満足げに頷いた。「付け加えるなら、『ニルワヤ』とかいうあの単語にいったい何の意味があるのか……」

 ふと気がつくと、いつの間にか信号は青へと変わっていた。

 アクセルを踏む。

 自動車はまた、走り始める。

 ざあざあと、雨は降り続いていた。少しだけ雨脚が弱まった気がする。先ほどまで前方にあった運送屋のトラックは、いつの間にか姿を消して、周囲はひどく閑散としていた。前後左右を見回してみても、車一つ、人っ子ひとり見当たらない。住人はみな、度を超した酷暑とゲリラ豪雨に心底うんざりしているのだろう——ここ数年で、夏の盛りに外出する人はめっきり数を減らしていた。みな、エアコンの効いた室内でのんびり寝転んでいるに違いない。無論、神崎のような警察官や運送屋といった人種においては、そうもいっていられないのだが……。

 数年前まで町を徘徊していた野良猫も、この頃は暑さでみな死んでしまったらしいと聞く。神崎は猫が苦手だったから、その点に関しては地球温暖化に感謝しないこともなかった。

「そうだ、ちょうどいい」不意に何かを思い出した様子で、赤尾が前方の分かれ道を指さした。「そこを右に曲がってみろ」

「構いませんけど……何か用事ですか?」

 赤尾はタブレット端末を取り出して、警視庁のデータベースを神崎に見せた。件の一家惨殺事件に関するファイルへ、アクセス許可が下りたらしい。事件番号、被害者氏名、その他細々とした事項に並んで、小さく事件現場の住所があった。

「どうやらすぐそこにあるらしいぜ」


 やがて、古ぼけた一軒家が視界に入る。

 空き家の札がかけられたそれは、どこか陰鬱な雰囲気をしていた。ここで人が死んだのだ、という先入観によるものか——あるいはまた、手入れをする者がいないせいで全体が薄汚れているのも原因だろう。

 近隣に住む大家によれば、あとひと月ほどで取り壊す予定なのだという。

 珍しく赤尾は車を降りて、自ら家の中へと向かっていった。


 中は綺麗に掃除され、血痕の類いは見当たらない。

 ただ——雨のせいか、空気がいやに重かった。


 そうか。

 あの檻の中の少年は、

 ここで動物になったのか——


 くらり、とめまいがした。

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