第40話

 バスに乗り込み家路につき、疲れていた僕とお姉さんは、昨日の残りのカレーを食べて、早々に床についた。


 お姉さんは今日も僕と一緒に寝ようとしたけど、疲れているのでと断ると、渋々別で寝る事を許してくれた。


 布団の中に潜り込みながら、今日一日を振り返る。


 忙しなかったけれど、楽しかったなと、そう思った。


 クレープも美味しかったし。


 お姉さんと出会ってからまだ日は浅いけれど、お姉さんが側に居てくれてからは、毎日が楽しい。


 こんなにも人に優しくされた事が、僕の短い人生経験の中では少なかった。


 最初は怖かったけど、お姉さんは良い人だ。


 それはもう、疑いようのない事実だった。


 できる事なら、こんな生活を、いや、お姉さんの近くに居させてくれないかと、そう思っていた。


 でも……


 お姉さんは、僕に沢山のものをくれる。


 経験も、美味しい食べ物も、優しい気持ちも。


 でも、僕は、お姉さんに何をあげられるだろうか。


 考えても、考えても、何も思いつかない。


 人にもたれかかるような事だけは、頼るだけのようなみっともない真似は、したくなかった。


 お姉さんに貰うだけもらって、足を引っ張る。


 そんな風になってしまうくらいなら、僕は……


 黒く苦い感情を抱きながら、僕は静かに眠りについた。

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