第38話


「いやー楽しかったね!満足満足!」


「ははは……そうですね……」


「……あり?疲れちゃった?」




 モールの中のお店を粗方見て回り、僕達は帰りのバスを待つべくバス停に立っていた。


 お姉さんが不思議そうに僕の顔を覗き込む。


 疲れたかとお姉さんが聞いてきたけど、本音を言うととても疲れた。


 何時間もお姉さんの着せ替え人形になっていたんだ。


 女の人の買い物は長いと聞いた事があるけれど、まさかここまでとは。


 同じ時間買い物していたはずなのに、ぼくはシナシナに、お姉さんは対象的にツヤツヤに満たされているような様子だった。

 

 なんなんだこの違いは!


 ショックを受けている僕に、お姉さんが続けて言った。




「あちゃー、君を喜ばせるはずが、ウチが楽しんじゃったw ごめんねー……あ、そうだ、ちょっと待ってて」




 お姉さんはヘラヘラと笑いながらバス停を離れて行った。


 少し待つと、お姉さんは両手に何かを持って戻ってきた。




「はい!」


「これ、なんですか?」


「何って、クレープだけど」


「クレープ……」

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