第33話

 一方で僕は、豹変したお姉さんの攻撃を大きく受けて順位を落とし、しまいにはお姉さんが仕掛けたであろう謎のバナナの皮を踏み、泣きそうになりがら、圧倒的なビリケツとしてレースを終えた。

 

 あまりの衝撃的なレースに、僕は言葉を失って呆然としていた。




「…………あっ!」


「…………」


「あ、へへへ、ご、ごめんね?つい血が騒いじゃって……へへへ」


「……いえ」




 思うところは沢山あったけれど、お姉さんが楽しそうにかつ嬉しそうにしていたので、余計な事は言わないようにした。


 別に、ゲームに負けたくらいで僕は……




「……でも、ふふ。君、あんなに攻撃当たることってないよ……しかもあんなに芸術的にバナナの皮を……ふふ、ふふふ」




 ……前言撤回。


 子供ながらも男として、ここまで言われて引き下がるわけにはいかなかった。




「……いっかい」


「へ?」


「……もう一回やりましょう」


「え……う、うん!」




 僕からの再戦の申し出に、お姉さんは目をキラキラと輝かせながら頷いた。


 けれど、その余裕もいつまでもつだろうか。


 次は、絶対に負けない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る