第30話


「うぉ〜でけ〜!ね?来てよかったでしょ?」


「はぁ……」


「ねー!もっと喜んでよー!泣」




 バスで20分くらいの時間をかけて、僕達は【夢島タウン】へと到着した。


 興奮気味に語りかけるお姉さんとは裏腹に、僕は冷めた声でお姉さんに言葉を返す。


 確かに、田舎者にとって、この大きさの施設というのは物珍しい。


 けれど、僕の心にはあまり響かなかった。


 小さい頃から倹約に努めていたからだろうか。


【夢島タウン】に対して、お金がかかっていそうだなという印象しか湧いてこなかった。




「あぁ、すごいですね……さ、暗くなる前に買い物済ませて帰りましょ?」


「むむむ……こうも冷めた態度を取られると負けたような気がするな……」


「負けるって……勝負じゃないんですから……」


「よし、決めた! 今日はここで遊び尽くして、君に子供の楽しみ方の何たるかを指導することにしよう!」


「えぇ!?いいですよ、子供にも子供なりに好みってものがあるんですから……それに、無駄遣いは良くない……」


「いいのいいの!お姉さん、お金だけは沢山持ってるんだから!そんじゃあレッツゴー!」


「ちょ、ちょっと〜」




 お姉さんに首ねっこを掴まれながら、僕達2人は【夢島タウン】へと吸い込まれて行った。

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