第27話

「お子様ランチ?」


「……あ、いや、違うんです! 珍しくて見てただけで、これがいいってわけじゃ……こいういうのはもっと小さい子が食べるものですもんね! もっと違うの……」




 言い訳するように僕が言うと、お姉さんはにんまりと笑って言った。




「ぷっ……あ、違う違う。いいじゃん!好きなの頼みなよ!店員さんすいません〜!」


「あっ、まっ、待ってくださいお姉さん!」




 お姉さんは僕の言い訳なんてものともせずに、やや強引に店員さんを呼んだ。


 ち、違う……違うんだ……確かに本で読んだ時から憧れていた【お子様ランチ】。


 一度は食べてみたいとそう思っていたけれど、同時に小さい子が食べるものだと理解していたから躊躇っていたのに……お姉さんめ……


 そうメラメラと怒りの炎を燃やしていると、注文を伺いにきた店員さんが僕たちのテーブルまでやってきた。


 若い、多分高校生くらいのアルバイトのお姉さん。


 その店員さんが注文を聞くと、お姉さんは言った。




「日替りパスタとお子様ランチお願いします〜!」




 お姉さんがそう言う間、僕は恥ずかしくてずっと俯いていた。


 誰がどう聞いても、お姉さんがパスタで、僕がお子様ランチだ。


 僕、もう高学年なのに……変に思われないかな……


 そう不安になって、恐る恐る店員さんの顔を覗いた。


 タイミング悪く、目が合ってしまう。


 一瞬のようで、長く感じた沈黙の時間。


 そうして、店員のお姉さんは僕の顔をまじまじと見つめて。


 


「ふふ……お子様ランチですね。畏まりました。」




 そう言って、中へと戻って行った。


 ……僕はもう、おしまいだ……    

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