第26話
「あ、あの、お姉さ……」
「ん〜どうしよっかな〜……オムライスもいいけどパスタも捨てがたい……いや、朝から重すぎるか? いや、朝こそエネルギー摂取を……」
お姉さんはメニューを決めるのに夢中で、僕の呼びかけに全く気がつかない。
でも、機嫌が悪いのは治ったみたいで、いつものお姉さんに戻っていた。
よかったと、そう胸を撫で下ろす。
依然としてお姉さんが怒った原因はわからないままだけど、もう怒っていないのなら、とりあえずは大丈夫そうだ。
あとはこれからの生活の中で、お姉さんの怒りのポイントを、地雷原を探っていけばそれでいい。
「あ、呼んでた? ごめんごめん! ウチ、ここのファミレス大好きで、来ると集中しちゃって周りが見えなくなるんだよねw」
「そんなに好きなんですかここのお店……」
「昔っから通ってるからw まぁまぁ、ここなら和洋中甘いもの辛いものしょっぱい物なんでもあるから好きなの頼みなよ」
「そうなんですか……ごめんなさい、僕、こういうお店初めてで……あ、でも本で読んだことあります。シェフさんが気まぐれで作ったサラダとか出してくれるんですよね? あと、美味しかったらシェフを呼んでくれたまえとか言うって!」
「……ごめん、多分君の期待に添えるお店じゃないと思うここ」
「え!? 違うんですか!? ……あ、
違います違います。ガッカリしたとかじゃなくて、ただの僕の勉強不足です…アハハ…あ、もしかしてこのメニューって奴の中から選ぶんですかね? な、何にしよっかなー!」
持っている知識をフル活用して話を合わせようとして、失敗した。
僕はバカだ。
せっかく連れてきてくれたお姉さんをしょんぼりさせてしまった。
悪いと思ったので、わざとらしくから元気を出してメニューを見た。
どれもこれもが美味しそうに見えたけど、ひとつだけ、一際僕を惹きつけるメニューが目に入った。
「お、決まった? どれどれ? 君、妙に大人なところあるから塩辛とか選んでたりしてw いや、そんなメニューないか……え?」
お姉さんがいつものふざけたノリで、僕が見ているメニューのページを覗き込んできた。
僕を釘つけにしていた写真を見て、お姉さんが一瞬固まる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます