第21話

 ……どうやら寝ぼけているようだ。


 仕方ないな、まったく。


 そう心の中で思いながら、お姉さんの腕を振り解こうとする。




 けれど、お姉さんの腕はまったく振り解けなかった。


 人形みたいに整った輪郭。


 雪だるまみたいに白い肌。

 

 花の蜜のように柔い匂い。




 そして、もの凄い力。




 お姉さんの腕力は、小学生の僕の全力では到底及ばないくらいに強かった。


 そうして抱き寄せる力は徐々に強まり。


 いつの間にか、浴室でされたのと同じように、僕の顔がお姉さんの胸の間にすっぽり収まる形になっていた。


 それは、つまり……僕は、息が吸えなくなっていた。




「う、うぅー! ゔぅー!」


「へへへ、くすぐったいよ〜!」




 必死に脱出を試みるも抜け出せず。


 肝心のお姉さんはまだ寝ぼけているみたいで、楽しそうに寝言を口にしていた。


 ダメだ……深い眠りについている……


 こっちはくすぐったいどころの騒ぎじゃないのに。


 抵抗虚しく、僕の意識と酸素濃度は徐々に薄れていく。


 さっきは精神的におかしくなってしまうかもしれないと言った。


 けど、前言撤回。


 僕はこのお姉さんに……


 


 物理的に殺◯されてしまうかもしれない……ゔっ……

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