第20話
お姉さんのその言葉を聞いて、心臓がドクンと跳ねた。
暖かい、とても優しい言葉。
その熱は、心臓から全身に伝って、僕の体を火照らせる。
「お、お姉さん?」
しばらくの無言が続き、黙っていることの方が恥ずかしくなった僕は、体をくねらせてお姉さんの方へと振り返る。
「すぅ……すぅ……」
お姉さんは、眠っていた。
どうやら、僕と同じようにお姉さんも疲れていたみたいだ。
お姉さんを起こさないように、そっと顔を覗き込んだ。
人形みたいに整った輪郭。
雪だるまみたいに白い肌。
花の蜜のように柔い匂い。
適当な態度や言動で気づかなかったけれど、お姉さんはとてつもなく綺麗な人だというのを今理解した。
それを知ってしまうと、余計にこの状況が恥ずかしくなってしまう。
それに、シャワーの事も相まって……
変な気持ちになりそうになって、首をブンブンと振りながら正気を取り戻す。
何をやっているんだ僕は!
お姉さんは純粋な気持ちで僕の事を引き取ってくれたと言っていたのに、肝心の僕が邪な気持ちを抱いてどうする!
それに、信用しすぎるのもよくない。
信用しすぎると、裏切られた時に立ち直れないからだ。
とにかく、今後はこういった至近距離での接触は避けた方が良いかも知れない。
あぁ……でも、お姉さん元々の距離が近いんだよな……
やっていけるだろうか……
また、新しい不安が増えてしまった。
確かにお姉さんの側にいれば、物理的な危機は訪れないかも知れない。
けれど、こうも気を使っていたら、今度は精神的におかしくなってしまうんじゃ……
「ん〜〜〜」
僕が一人悩んでいると、何故か、お姉さんが僕に抱きついてきた。
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