第8話
浴室に木霊する、お姉さんの声。
【家族】
その言葉は、僕には縁遠い言葉だった。
たしかに、僕には両親がいた。
けれど、2人は僕にとって頼れる存在ではなかった。
物心ついた時から、僕は自分の事しか頼れることができなかった。
だからこそ、憧れる気持ちもあった。
互いに思い合える存在。
無償の愛を与えられる存在。
【家族】という、そんな存在を。
今、僕の目の前にいる、金髪の怪しいお姉さん。
今日初めて出会った彼女は、僕に言った。
僕の【家族】になりたいと。
お姉さんの事は全く知らないし、何なら少し怖いけど。
お姉さんのその言葉が、僕は本当は嬉しかったのかもしれない。
とてもまともには見えない風貌をしているけど。
こちらを真っ直ぐに見つめる、お姉さんの瞳に、僕は……
「お姉さん……」
「んー信用できない!?だよね?そりゃそうか…でも、私の気持ちが嘘じゃないって証明できる様なものなんて……あっ!そうだ!」
そうして、お姉さんは閃いたような表情で、僕の肩に置いてた手を背中に回し、僕の顔を自分の胸元に引き寄せた。
………………!?!?!?
「ほら!大好きのぎゅー!ウチは君の敵なんかじゃない!ウチは君の味方だよ!だから……」
「うっぷ!うー!うー!」
「だから、嫌いにならないで…」
もう、何が何だか分からなかった。
お姉さんも感情が盛り上がってしまっているのか、僕の言葉をまったく聞いてくれない。
そもそも、お姉さんの胸に顔を埋められて、声を出せないでいた。
声が出せないどころか、息をするのにも困るくらい強く僕を抱きしめるお姉さん。
お姉さんの色々な部分が、強く押し付けられる。
スベスベで、柔らかくて、いい匂いで。
僕の右足が、お姉さんの両足の間に挟まれる。
お姉さんは大人なはずなのに、どうして僕と同じように、大事な部分がツルツルしているんだろう……
そうして、様々な情報が頭の中に溢れてしまった結果、僕は何も考えられなくなって、呼吸も出来なくなったせいか、意識すらも遠退いて行ったーーーー
「……ん?あれ?ねぇ?ね?あ、ヤバ……」
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