第19話 謝罪動画
「お前やらかしたな...事務所に行くのは辞めだ。家に帰ってこい」
「え、兄さん、僕なんかやっちゃった?」
「はぁ...自覚なしか。まぁ俺もさっき視聴者からの指摘を受けて気づいたんだけどな...お前、昨日コラボの告知しなかったな」
...すっかり忘れてた、やばいやばい。配信の終わりに話すといったのになんか落ちがついたからそのまま配信終わっちゃった...
「思い出したようだな。まぁ、あのまま切りたい気持ちは分からんでもない。配信としては良い終わり方だったとは思うが...爆発で落ちもついたし...まぁ、これ以上は帰ってから話そう。さっさと帰ってこい」
あ、切れた。まったく、いつも言いたいことだけ言って切るんだから...
取り敢えず早く帰らねば。
急ぎ足で家に帰る僕の頭の中はこれからどうしようかということばかりで埋め尽くされている。
正直に話すか...それとも次の配信で告知するか...炎上やコラボに支障がないようにするにはどうしたら良いのか...
一人で考えていても何も始まらない。
考えたことも自分では良い手と思っているだけで他の人から見たら悪い手かもしれないのだ。
そう悩んでいる内に家に着いた。考え事をしている間は時間が経つのが速いように感じる。
「ただいま...」
「おかえり、こっちに来い」
リビングに行くと兄さんが座っていた。
ジェスチャーで反対側の椅子に座れというので少し恐怖を感じながらも座った。
「さて...どうするつもりだ? 炎上もせず、変なイメージもつけられず、この問題を解決する方法は何か考えたか?」
「SNSで取り合えず告知を...「SNSをやっていない層もいる、それしかやらないのは却下だな」
「次の配信でこく...「遅い」
うーん、一体どうしたら...
「ピンチだと思う必要はないぞ。上手くやればチャンスにもなりえる。ただ告知するより大きい影響も与えることが出来るチャンスでもあるんだ。寝落ち配信なんて見てみろ。別に炎上はしていないだろ?」
あれは上手いことコラボしていた人が場を繋いだからいいものを...しかも事務所所属だったし...でも寝落ちした本人は叩かれてもいないし、なんなら寝落ちがネタになってる...
そうか! この事をネタにしてしまえばいいんだ!
「結論は出たか?」
「僕の初投稿の動画...謝罪動画にするよ」
「ふーむ、インパクトは十分...ただお前が今後こういうミスをする人というイメージがつくぞ? それでも大丈夫か?」
「仕方ないことだよ。自分で蒔いた種だし。これで注目されるなら何も問題はないはず」
自己犠牲だろうが問題ない。僕一人だけのグループではないのだから。まぁ、そもそも自分が蒔いた種だし...
兄さんの方を向くとニヤリと笑っている。
どうやら正解をだすことが出来たようだ。
「vtuberというのは全てをネタにしてこそだと思わないか? 世の中には身バレやら下ネタやら胃カメラやらで人気になっている人もいると聞いた。何もかもネタにしないと生き残れないんだよ。同じことを何回もやると飽きられるけどな」
そう言いきった兄さんの目には何か狂気的な物が宿っていた。
兄さんにも伸び悩む時期があったのが原因だろう。吹っ切れてありとあらゆる事をネタにし続けた結果、今の登録者まで行けたらしい。
謝罪をネタにするのはどうしたらいいのか...初投稿ということを全面に出して動画は作ろうと思う。概要欄に初投稿とか書くのも良いかもな。
「謝罪+告知という方向で行こう。何か、案はあるか?」
「取り敢えずフリーイラストの謝罪会見のやつを使ってマイクを設置しようと思う。それからテロップで告知忘れとかを表示して...」
「...そもそも、お前に編集が出来るのか? 配信しかやったことがないんだろう?」
...あ、盲点だった。
「編集初心者のお前にすぐ編集が出来るわけないだろ。代わりに俺がやる。次作る時までには学んでおけ」
また兄さん頼りか...そろそろ自分で何もかも出来るようにならないとな。兄さんみたいに。
「そうと決まれば台本作りだ。何か希望とかはあるか?」
一つの案が僕の頭に思い浮かぶ。どうせだし兄さんも巻き込むか。
「それじゃあ、兄さん。協力を頼むよ」
「ほぅ、どんな案だ?」
__________________________________________
「で...出来たぞ...」
4時間後ぐったりした様子の兄さんが僕にそう言った。
どうやら編集が終わったみたいだ。
「ありがとう兄さん。それじゃあ投稿する?」
「まぁまて、まだチェックが終わっていない。それが終わったら投稿だ。二人で確認するぞ」
兄さんのPCで動画が再生される。
僕の希望通りに謝罪会見のマイクやテロップ等が表示されている。背景が白の動画というのは何か寂しいからね。
月谷レボン「皆さんどうもおはこんばんにちは。レーブユニオ0期生の月谷レボンです。えー今回の謝罪をすることになった経緯ですが...配信終わりに告知をすると言ったのにも関わらず告知をせず配信を閉じてしまいました...誠に申し訳ございませんでした」
記者とかかれた札を首から下げたアキタが登場する。
山犬アキタ「いつも見ている視聴者さんに申し訳ないとは思わないんですか?」
月谷レボン「だから謝罪を...」
山犬アキタの手から匠が召喚される。
月谷レボン「...申し訳ないと思っています...」
山犬アキタ「どうして配信を切ろうと思ったんでしょうか?」
月谷レボン「匠の爆発によって気が動転していたといいますか...爆発したからといいますか...」
山犬アキタが召喚した匠を爆発させる。
山犬アキタ「本当は?」
月谷レボン「...スゥー爆発で落ちがついたと思ったから勢いでつい...」
山犬アキタ「土下座だな☆」
そんなポーズ差分はないからテロップで全力土下座中というのが表示される。
山犬アキタ「で? 本題の告知は?」
月谷レボン「昨日より丁度2週間後、今日の13日後、レーブユニオン全体での初コラボ、バトルクラフトウォーズを実施します! 各チャンネルで各視点での同時配信を行います! わーーパチパチ」
山犬アキタ「...」
背景に告知用のポスターが表示される。レーブユニオン所属の4人がにらみ合ってるいるような構成になっており中々カッコいい。
月谷レボン「拍手してくれないと僕だけ盛り上がってるようになるじゃん!」
犬山アキタ「そういえばお前は爆発で落ちがついたら良いといったな?」
月谷レボン「え、いや、そんなことは...」
犬山アキタ「問答無用!」
ドカーーーン!!!
アキタが匠を召喚しそれを爆発させ動画が終わる。
最後にこの動画に出てくるキャラクターについては全て使用許可を貰っています。というテロップが流れる。
こんなので良いのかな...でも違和感はあまり感じない。
「これでいいと思うよ。兄さん」
「なら良かった。これでいこう。SNSでの告知、次配信での告知も忘れずにな。あと次からメモ取れ」
「わ、分かったよ...兄さん」
次からこういうミスをしないようにしないと...反省だな。
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