第18話 何回もやった謝罪に価値なんてない
「であるからして...ここの数字とここの数字を=で繋ぐことが出来ます。これで証明完了です」
やべっ! 寝てた!
「真人、お前また寝てただろ?」
隣から小声でそう呼び掛ける声がある。
そう呼び掛けるのは僕の友達の島田大悟だ。
こいつはまるで念仏かのような抑揚のない声で話す教師...通称和尚さんの授業を耐え抜くことが出来る凄いやつだ。
「よく和尚の授業耐えることが出来るよな~何かコツとかないのか?」
「ふっふっふっ...慣れだよ、慣れ。普段から親父の馬鹿みたいな自分語りを聞いてるから耐性があるんだよ」
うーん、参考になりそうな気がしない...
和尚は優しい先生だから寝てても点数を引くことはしないだろう...多分...
クラス1の優等生ですら寝てるんだから仕方ないだろ!
キーンコーンカーンコーン
「えー、それでは、起立、礼」
「「「ありがとうございました」」」
眠たげな声が教室中に響き渡る。もう6時間目が終わった。これから待ちに待った部活だ。
「そーいや、V辞めたらしいじゃん」
こいつ、今何て言った?
まるで全身に水をかけられたかのような錯覚に陥る。
なんでこいつが僕がVをやってるっことを知っている? そのことは誰にも言っていないはず...
「顔に出てるぞ、どうして分かったのかって。簡単さ、俺がお昼寝サンゴさんのファンだからだよ。それで過去にサンゴさんが手掛けたVの配信とやらを見たんだ。そしたら偶然にも開いた配信で例の事件の話をしていたんだ」
あぁ...例の事件か...
今でも鮮明に記憶に残っている。大学生である大悟のお兄ちゃんの友達の4股が発覚した話だったな。
偶然現場に居合わせたんだが、あの女性達の圧は今でも忘れられない。
だって! なんか背後からオーラらしきものが出てたもん! 怖いよ!
「あのオーラは凄かったな...女性は怒らせないようにしようと心に誓ったよ...」
「そうだな...」
というか身バレだよな、これ。
アーカイブ消しておこうかな...いや、でもそれはあの時見ていた視聴者への裏切りになりそうだし...まぁ、話したのも少しの間だし、もう引退したから今さら身バレしたからなんだというのだ。消さなくていいや。
「だいごー部活行くぞ~!」
「分かった! ちょっと待ってろ! そーゆーわけだから、また明日な!」
そう言い残して大悟は部活に行ってしまった。
さて、僕も部活に行きますか。
「ふふーん♪ふふーん♪」
お、彼処にいるのは高梨先輩か?
「お、後輩、私を崇めよ」
今日はやたらに機嫌がいいな...普段はこんなこと言わないのに、ソシャゲのガチャで大当たりでも引いたか?
「台本、会心の出来だよ、ふふーん♪」
「へぇーどんな台本が出来上がったんですか?」
「ふふーん♪ カジノのでボロ負けした男が成功するストーリーだよ!」
どや顔で僕に渡そうとしてきた台本を僕は無表情で叩き落とした。
「な、なにするんだ! 後輩!」
「み、み、未成年がこんな演劇出来るわけないだろーーー!!!」
「お、お、おーあーるぜっと...」
orzを口で表現しないでくださいよ...先輩...
部室前でorz状態になっている先輩を押し退け部室に入る。
どうやら一番乗りのようだ。
「ショタボ真人くーん~部室前で高梨がおーあーるぜっとしてるけど何かあったの?」
またウザ...また、何かやらかしそうな先輩が来たよ。
「そこに落ちてる台本見てくださいよ。どういうことか分かりますから」
「ほうほう、なるほどなるほど...さて、ゴミはゴミ箱に入れるものだよな」
その言葉を聞いた途端、おーあーるぜっとしていた高梨先輩が立ち上がりゴミ箱に入った台本を探し始めた。
この鬼畜先輩本当にゴミ箱に捨てやがった...
「雪野ぉ! ゆ、許さんぞ! も、もう台本は作らないからな!」
「!? ちょちょちょっと落ち着くこーよー高梨「これが落ち着いていられるか!」
あーぁ、また始まったよ。
大抵このあと雪野先輩が土下座でもして解決するんだよなぁ。
「悪ふざけだったんです...土下座でお許しください...」
「それ、何回目?」
おや、今日はちょっと様子がおかしいぞ?
いつもはこれで解決するのに。
「昨日もしたよね? 雪野の土下座に価値なんてないよ?」
「...エクレア...参堂山のスペシャルエクレア
奢るんで許してください! 台本ないと本当に不味いんです。どうか御許しください。足でもなんでも舐めるんで」
「よし、許す。あと汚いから足は舐めるな」
昨日も土下座したんだ...そんなに土下座するようなことするなよ...情けない先輩だな。
あと足を舐めるような汚いマネはしないでくださいね。
雪野先輩を思わず蔑んだ目で見ていたら雪野先輩は悔しそうな表情でそっぽを向いた。
唇の端が微かに上がっている。
もしかして喜んでないよな?
「雪野、蔑まれて喜んでる、きっしょ」
「高梨ちゃん...仕方のないことだよ...いつか高梨ちゃんにも分かるよ...」
「うわ、なんか悟った口調になってる、きっしょ」
先輩と本格的に付き合いを見直す時が来たかもしれないな。
こんな性格でも学校では優秀な方だっていうことが信じられない。
猫かぶってるんだろなぁ。
「雪野先輩、そんなことしてないで早く部活やりましょう」
「真人くん...そうだね、やろうか」
「雪野いつまでその口調でいるんだ? 正直言って気持ち悪い」
__________________________________________
「「「ありがとうございました~」」」
「よし、大やんへの報告は部長である私が行こう。部費のこととか諸々話したいからね」
一応こんなのでも雪野先輩は部長なのだ。
僕はもう少ししたら予定があるから事務所に行かないといけない。
掃除やらなんやらあるみたいだ。
「それじゃあ僕は帰ります。お疲れさまでした~」
「「おつかれー」」
ピロピロリン!
校門から外に出た時僕のスマホが鳴る。
兄さんからか...
「もしもし、兄さん何のよう?」
「お前やらかしたな...事務所に行くのは辞めだ。家に帰ってこい」
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