第4話 初顔合わせ
「僕が君を救ってあげよう! さぁ...この手をとって...」
「カットォ!中々良くなったね。演技に幅が出てきたんじゃないかな?」
「ありがとうございます。先輩」
「ということで、真人くん。"あれ"やってよ」
先輩はこれさえなければ顔も良くて普通にいい先輩なんだけどなぁ
「やりたくないって前も言ったじゃないですか」
先輩は無言でこちらを見てくる。こうなったら先輩は梃子でも動かない、そういう人だ。
「分かりましたよ、やればいいんでしょ?」
途端、先輩の表情が明るくなり期待の眼差しを送ってきた。本当に分かりやすい先輩だ。
「ゴホッ、ゴホン、あー、あー、...雪野先輩! 頑張ってください!」
「そう! そう! これ! このショタボが聞きたかったんだよ!」
先輩はそう言いながら椅子に寄りかかる。
これで当分は求められないだろう。
「いやー仕込んだ甲斐があったものだよ。本当に」
そう、僕は入部した直後、先輩に騙されて演技で使うからと言われショタボの出し方を覚えさせられていたのだ。
騙されたと気づいてから問いただしたら、真人君の声は天性のものだよ。磨かないと損じゃん☆と言われた
絶対私利私欲だ...
「よしっ! これで終わり! 大やんの所に行ってくるから先帰っといて~」
「大やんって...大野先生ですよ。僕たちの顧問は」
「そうだな、真人。演劇部の顧問は大やんじゃなくて大野だな! さ~て雪野、一緒に話そうじゃないか!」
うしろを振り向くと笑顔で立っている大野先生がいた。
あっ...先輩終わったな
「あの~お許しは~「ない」
「ぞんなぁぁぁー!!! 真人ぐーん! だずげでぇぇぇぇぇ」
今までお世話になったし助ける...ことはない。そんなことよりショタボ覚えさせれたことをまだ恨んでいる。
俺は笑顔で見送ることにした。うん、それがいいだろう
「真人! 帰っていいぞ!」
「はい! さよなら!」
「恨むぞー! まさとくーん....」
だんだん遠くなっていく雪野先輩の叫び声...生徒指導室まで連れていかれたな
今度慰めておこう、そうしよう。
校門を出た僕は一直線に駅に向かう。
今の時間は4時30分、十分間に合う。
ホームにつき列車に飛び乗る。
その時眠気が僕に襲いかかってきた。
ここで寝たら確実やばい...
そう思いながらも僕の意識は闇へと引きずり込まれてしまった...
__________________________________________
...何駅寝過ごした?
急いで次の駅の確認をする。
良かった、2駅しか乗り過ごしてなかった...
時間は今5時30分
ここから戻る電車は...30分後!?
バス使わないといけないな...
ドンッ!
「あっ、ごめんね!」
「ううん...大丈夫...」
そういって彼女は足早に去っていった。
子供みたいだったし申し訳ないな...
おっ! バスが来たようだ...あれ、さっきぶつかった女の子だ。あの子も同じ方面に行くのかな?
バスに乗ったが電車ほど眠たくはなかった。
まぁ寝たんだからしょうがないだろう。
...眠いのは眠いが
ただただボーっとしていたら終点まで着いていてしまっていた。乗客は残り一番後ろに座っていた俺だけ。
「ありがとうございました~」
「はーい」
普段住んでいる田舎とはやっぱり違うな。高層ビルがいくつもあってまさに都会って感じだ。
地図では駅から5分のビルって書いてるけど...ってヤバイ! もうそろそろ時間だ! はやく行かないと!
俺は全速力で走った。
なんとか...間に合え!
ここのビルの2階! 駆け込む!
ガチャ!
「こ...こんばんは....」
「お前が最後だ。真人、重役出勤のつもりか?」
「時間には間に合ったじゃんか...」
息も絶え絶えに僕がそう言った。事務所の中には、兄さんと大学生くらいの女性が一人と...さっき駅でぶつかった女の子!?
「...あっ....さっき...ぶつかった...」
「あの時は急いでて...本当にごめん!」
「ん...こっちも...不注意だった...お互い様...」
見た感じ中学生くらいだよな...身長もそんなに高くないし...中学生がこんな時間にここに居ていいのか?
「なんだ、水谷さんとはもう面識があったのか、真人。皆、お前待ちだったんだ。さぁ、自己紹介するぞ」
そこそこな大きさの事務所に僕たちは円になって座る。兄さんが目配せしてくる。僕から発言しろってことだよな...多分...
「ゴホン、えー本日はお日柄も良く....「...」
ヒェッ、兄さんから何やってるんだと言わんばかりの無言の厚が...
「初めまして、この事務所のトップを務めさせていただいてる柳沢真人です。皆さん! この事務所に入ることを承諾していただきありがとうございます!」
僕は頭を下げた
トップが軽々しく頭を下げるのは良くないという人もいると思うが時と場合に応じて頭を下げることは良いと思っている。特にこの場合だとこの演者達が居なくなってしまったら、この事務所は無くなってしまう。だから頭を下げることが必要だと思ったのだ。
「そ、そんなに頭下げなくてもいいっすよ!」
「あかりちゃん...語尾...」
「す、すいません!」
「もういい...私から話す...北王子白水の中の人...霧山瑠璃...よろしく...これでも一応大学生...決して小学生なんかじゃ...ない...」
歳上!? 身長145cmくらいだぞ...
「それじゃあ次は私ですね! 山内タイヨウやってます! 髙野あかりです! 瑠璃ちゃんと同じ高校生っす!」
「...もう...何も言わない...」
さて、わざわざ兄さんが皆をここに呼んだということは何かあるのだろう。
俺は兄さんにそっと目配せをした。
「それじゃあ今回集まって貰った内容の説明を真人に変わって俺がしよう。今回集まって貰ったのはずばり! グループ名を決めるためだ!」
そうだった、まだ決まっていなかったんだ。
こういうのは真っ先に決めるべきだったのでは...?
これから決めるし問題ないだろう。多分
僕はそう思うことで自分に責任はないと思い込むようにした。
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