第5話 遂に始動!!

名前というのは非常に大事だ。YouTube、小説の再生数やPV数にも直結してくる。

例えばカルボナーラという商品をカルボナーラと書いて売るより、とろとろ濃厚と付けたり、シェフ監修と付けたりすることで同じ商品だとしても美味しそうに見える。

このように名前ひとつで印象がかなり変わるのだ。

名前を適当に付けてはいけない。そう僕は思っているのだが...


「やっぱりサンシャインズがいいっすよ!」


「...ホワイトスノーズ...譲れない...」


「Vtuberカンパニー! これでいこう!」


全員名前のセンスが壊滅的になかったのだ!

兄さん...グループ名にカンパニーは似合わないと思うな。

上二つは悪くはない。しかしどちらも多種多様な人が集うグループの名前としては似合わない。


「話が平行線だな。ここで提案だ。社長の真人に決めて貰わないか? 勿論俺達の意見を考慮した上で決めて貰いたいが」


「...賛成...」


「賛成っす! 真人さんお願いしますっす!」


絶対兄さんこういう時振られたくないが為に僕に社長というのを押し付けたよ...

それじゃあ...夢...仲間...


「レーブユニオン! 夢の同盟レーブユニオンってのはどうだ?」


「レーブユニオン...いいと思うっす!」


「...賛成...」


「イタリア語と英語を合わせたのか...うん! いいんじゃないか」


良かった...皆賛成してくれた。


「それじゃあレーブユニオンに決定だ! さて...次話すことは君達3人が転生するかどうかだ。転生しないのであれは今までのリスナーは変わらないが転生するのであれば今までの応援してくれていたリスナーを捨てることになる。さてどうする? 勿論転生の費用は此方で出そう」


途端に場が静寂で包まれる。それも当然だ。長く応援してくれていたリスナーを自分の都合で捨てるのだ。辛いに決まってる。

リスナーがそれほど居なかった僕でさえあんなに悩んだんだ。そう簡単に決められることではないだろう。


「そ...それってもうちょっと考えることって出来るッスかね...?」


「駄目だ。この顔合わせが終わり次第、準備にすぐ取りかかる。この事務所だってタダじゃないからな。月日が過ぎていくうちに金もかかるからな」


兄さんの言う通りだ。時間が経つにつれ一方的に金が減っていくだけだ。やるなら早く取りかからなくては金と時間の無駄だ。


「僕は転生するよ」


「分かった、真人」


「えぇ! そんな早く決めて大丈夫っすか?」


「僕は元々その事について聞いてたしね。もう引退配信もしたよ」


「...どんな思いで...引退...した?」


どんな気持ちと言われると難しいな...僕の場合あまり応援してくれている人もいなかったし、恐らく自分の覚悟はここにいる人とはとは比べ物にならないほど軽いのであろう。


「状況が状況から参考にはならないかもしれないけど、僕は生まれ変わろうと思って引退したかなぁ」


「生まれ...変わる...?」


「僕はあまり人気がなかったからね。全てをリセットして事務所所属としてやりたい、という気持ちがあったかな。過去の記録を全部消して昔の自分とは重ねられず人気になりたい! って思いもあったかな。個人勢だった時は声があまり良くないみたいだったし急な方向転換も良くないと思ったのもあるね」


「理由...多い...でも...1から変わりたいというのは分かった...覚悟...いる」


霧山さんの顔が覚悟に満ちた物になる。


「やる...!今までの...自分とは...おさらば...!」


「分かった、引退配信をしておいてくれ...そして高野さん、君はどうする?」


高野さんは非常に苦しげな顔をして立っている。まるで何かと何かに挟まれているような表情だ。やってみたいけど何かが心残りで出来ないというような感じだ。


「いや...自分は今のままで頑張るっす...」


「後悔しないね?」


「やって後悔すると分かっているんだったらやらない方がましっす」


「何か理由が...いや、止めておこう。分かった。山内タイヨウのままでやるということだね」


高野さんは青い顔をしながら頷いた。

なんだか触れては行けない気がするぞ。


「霧山さんは誰か依頼するクリエイターの希望とかあるかな? あったらそれを考慮した上で選択するけど」


「...ない...お任せで...」


「じゃあ、俺の知り合いで実績もあるクリエイターに依頼しておく。真人も同じようにしておこう」

 

今更だが兄さんは僕が兄さんの弟ということを言っているのか?


「アキタさんは何で真人さんのことを呼び捨てにしてるんっすか?」


「それはこいつが俺の弟だからだよ」


「「えぇ!?」」


「あれ? 言ってなかったっけ?」


やっぱり言ってなかったんだ兄さん...

たまに抜けてるとこがあるんだよな


「コネ...? 大丈夫...なの...? 君の...言葉が聞きたい...」


状況を見ればどう考えてもコネでこの立場についたとしか思えないよな。僕だってこの状況になったらコネだと思う。


「コネ...か...僕は元々一人で建てるつもりでいた。まぁ多分無理だったろうが...それを兄さん...山犬アキタに相談したら事務所建てたいけど俺が上に行くのは嫌だから代わりにならないか? と言ってきたんだ。コネというのは本当だが、ただのお飾りじゃなく、みんなと一緒に成長していきたいと思ってる」


これは本心だ。

お飾りなら僕じゃなくても問題ない。でも、僕が自分で建てるって決めたんだ。いつまでもお飾りじゃいられない。


「そう...分かった...今はその言葉...信じてみる...」


「今さらッスけど瑠璃ちゃん、私に語尾指摘した割には普通にタメ語で話してるっすね」


「大学生を...中学生と見間違えるようなやつを...私は敬わない...」


「仕方ないっすよ、だって身長ひく...!?」


「.....」


瑠璃さん!?

まるで猛獣を目の前にしたようなプレッシャーが僕を襲う。このプレッシャーの対象はあかりさんなのにこのプレッシャー...あかりさんはどうなって...あ、顔面蒼白でプルプルしてる。


...駄目だ。この重圧に反抗して声を出せる気がしない。


「身長が...小さい?...まだ成長途中...」


「でも大学生なんて殆ど伸びな...ヒッ!」


どうしてそんなに地雷踏めるんだよ!

学べよ!


「成長途中...成長途中! ...分かった?」


「は...はい! 分かったっす!」


「じゃあいい」


瑠璃さんは身長が低いのがコンプレックスと心の中でメモしておこう...やっぱいいや、このメモ見られたら殺されそうだし、忘れるに限る。うん、そうしよう。


「そ...それじゃあ真人、この事務所...レーブユニオンのSNSのアカウントを作っておいてくれ。フォローする人はフォローしてきたこの事務所の演者だけにしてくれ。」


「分かったよ、兄さん」


場が静寂に包まれる。兄さんも何も言わない。

ふと兄さんの方をみると何か意味ありげな目配せをして来た。

あぁ...そういうことか


「では、これより...夢の同盟レーブユニオン! スタートだ!」


「「「オー!!!!」」」
















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