挿話1 童話 哀れな王子様

『昔々、あるところに一人の王子様がいました。

 王子様、と言っても正式に王家を継承することのできない、第二王子という立場でした。 

 第一王子は彼の兄ですが、弟のことをこれ以上ないと言っていいぐらい嫌っており、いつもひどい言葉をかけたり、彼の顔を殴りつけたりしました。継母である王妃もそのことを知りつつ、第一王子の行いを叱ったりはしませんでした。

 それというのも全て、第二王子の母親の血筋は由緒正しいものではないからです。その母親も、可哀そうな王子様を産むとすぐに亡くなってしまいました。

 彼は父親である王様とその家族の中で育てられましたが、血のつながらない王妃や第一王子にひどく疎まれ、蔑まれる毎日だったのでいつもうんざりしていました。

 そして王子様は大きくなると、王家の城とは別の城に住まわされることになりました。

 王様たちによる厄介払いでもあり、新しいお城は元居たところよりも小さいですが、彼を嫌う人間もおらず、王子様の大好きな本もたくさんあったため

「なんだ、ここの方が快適じゃないか」

 と哀れな王子様は次第になじんでいきました。

 王子様には、家来と世話係がいました。

 一人は、王様よりも年がいった男の家来。

 もう一人は、若い娘の世話係です。

 二人とも性格は全く違いましたが、王子様に良く尽くしてくれました。

 王子様はとても幸せでした』

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