第5話

 「え……浬? あの猫は……?」

 猫がいない。下の方を探すけどどこにも見当たらなかった。

「浬、どういうこと?」

「……あのね、俺、猫なの」

「はい?」

「今までいた黒猫は、俺なの」

「え、え? えええ?」

 どうした。急にどうした。私が寝ぼけてんのか? 浬が夢見てるだけ? それか両方の頭がおかしくなったかの三択だな。

「浬、病院行こうか」

「信じてないな」

「だって人間が猫になるなんてそんな」

「逆。猫が人間になってる」

「ふーん。……えほんとに?」

「ほんと」

「証拠」

「今の変身」

「魔法?」

「うちの家は代々人間に変身できるすごい術を持ってるんだ」

「でもなぜうちの高校に?」

「近所だったし、……由良と仲良くなりたかった」

「うん。なるほど。じゃあまた明日」

「え?」

 そう言って私は教室から出た。だってそんな、猫だなんて話、信じられるわけあるか。まあ最後の一言は気になるが、きっと私の妄想だろう。夢だ夢。明日学校に来たら何もかも元通りのはずだ。

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