第2話

 よし。今日も逃げ切った。まあ私を目の敵にしているのは生活指導の先生だけだから、学校が始まってしまえば、鬼ごっこの必要はないのだが。

 朝のホームルームで担任が入ってくる。

「きりーつ」

 朝の挨拶。みんなの眠そうな声がおはようございますと響く。みんな元気ないなあ。

「えーっと。二学期の途中だけど、今日から転入生が来ます。じゃ、入ってきて」

 そういえばなんか言ってたな。来るって。どんな子だろ。

 教室のドアが開いて転入生が入ってくる。その途端、教室の空気が揺れた。ざわっとなる。後ろのるんちゃんが話しかけてきた。

「え、かっこよくね?」

「う、うんカッコいい」

 一言で言うと、カッコいい。そんな人が入ってきた。二言で言うと、めっちゃカッコいい。カッコいいしか、この人を形容する言葉が見つからない。そのくらいカッコいい。身長は一八〇行くか行かないか。足長い。顔小さい。バサバサのまつ毛。高い鼻。はっきりした大きな二重。小さな唇。なんだか全体的に猫の雰囲気を漂わせている。その人は教室のざわめきなんか気にせず教壇の前に立って自己紹介を始めた。

猫屋敷浬かいりです。えとー十六歳。結構転校してるので、慣れてはいます。たぶん一ヶ月ぐらいしかいないけど、よろしく」

 猫屋敷……すごい名前。名前まで猫じゃん。

「じゃあ席はあそこの窓側一番前ね」

「はい」

 はっ。そういえば何故か昨日席替えした時に私の隣の席が空いたままだったのを不思議に思ったけどそう言うことだったの!

 猫屋敷何某がこちらに歩いてきて隣に座る。

「うち佐藤由良!よろしく!」

「よろしく」

 おお。ちょっと片眉を上げた。なんか漫画のヒーローみたい……!

「わかんないことあったら聞いてね!」

「ありがと」

 イケメン転入生が隣なんて、ついてるぅ!

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