この作品のストーリーを簡単に紹介するなら、作業用掘削ロボットを駆って鉱山で働く無骨無作法なおっさんが、謎の無機質生命体と遭遇し、やがて世界の命運を賭けて必死に戦う事になるという、熱く燃えるロボット物です。
この手の搭乗型ロボットバトル物だと、格好良い兄ちゃんや、或いはオタク気質の少年が、華麗なテクニックや根性を駆使して戦ったりするのですが、本作の場合は、脂ぎった部分を残しつつも少しずつ枯れつつもある、そして体調も悪くなりつつある、そんな中高年のおっさんが主人公という、どうにも生々しい生活感を感じさせる設定だったりします。
しかしそんな現場仕事しか出来なさそうな、くたびれたおっさんが、自身の愛機に何気無く搭乗すると、魔法としか思えない熟練の技を、シャツのボタンを片手で留める様な気軽さで披露するという、このアンバランスな格好良さが、加齢臭すらほんのり漂い始めたおっさんに光を与え、そして大きな秘密を抱えて近づいて来た女上司を、次第次第に惹きつけてしまうという……おっさんを主人公にしたからこその、納得の展開となっている次第です。
おっさんが主人公だからこそ、歳をとろうが、今までの人生がどんよりしていようが、何事かを選択して決断し、己の為に乗り越えなければならないという、そういったメッセージが強く伝わる本作品、読んで損の無い逸品です。