⨕31:清冽ェ…(あるいは、清廉/それは/キミが見た陰∽陽の遅延さ)
その腹腔内にいくつも設置された
「ちょいと無理な姿勢になっちまうが、
頭ん中で両機の体長などを計算してイメージしながらそう指示を出していく。うん、両腕を左右で拘束されてお姉坐りのまま拷問だの凌辱だのを待つ
わけの分からん昂揚感に支配されている場合でもねえ。同じく接続を確信しただろう腹上の小顔から、目顔にて頷かれる。ぶっつけの方法は、一体となったこの機体を、俺とナディルカが呼吸を合わせて残るわずかな光力を細心の注意をもって紡いでいかなけりゃあならねえ。行くぜ……と黒細板越しに視線を交わらせたらちょっとびっくりしたような顔をされたが次の瞬間、いつものきりとした表情に改まった。よし、と思いまずは両脚に稼働を……とか思った、その、
刹那、だった……
「……マダここニ、読み取らセナい『異物』がイタかぁ……ドウなってイるんだァ……? 何故ココまで呑み込マレて何事モ無ぃぃいイイ? やハリ、それモまた『光力』ト、そうイうわけナノかぃぃイイイ?」
頭の中に不快に響き渡るのは、もはや音声とも認識することは難しかったが、その言葉繰りで何とか「壮年」であろうことは分かった。いや、
「……さぁ~なぁ~? お前さんの大好きな『学習』とやらを駆使してもピンとは来てねえんだったら俺らにもさっぱりだわなぁ~。ひとつだけ言えんのは、そいつを今からお前さんにぶちかましてやるっつうことだけだけどよぉ~」
「黒細板」を通しての視界やや奥。「粒子」がまたぞわぞわといった感じで集まったと思うや、そこにもはや見慣れた第一壮年の
寝そべった姿勢のまま、砂と重油を詰めたような己の両腕を何とかほんの少しずつ上げていく。と、上に乗ったナディルカの両脛、いや両ふくらはぎ辺りにようやく指が届いた。この脚の角度とか動きとかで機体を制動するとか言ってたよな……直感操作になっちまうが、もうここまで来たらそれが最適解な気もしている。正にのてさぐり状態にてその薄いつるつるとした防護スーツにぴたりと包まれた流麗曲線をまさぐりつつ、それと連動しているであろうノガシターの、さらには外側のテッカイトの挙動を探り探り確かめていく。
あっ、ちょダメぇ……と腹上でややそのしなやかな身体を一瞬硬直させたものの、意図は伝わった模様だ。緩やかな動きであったものの、確かに
「ははァ……そンナ風なコトも可能なんダねェ……いヤはヤ、十全に対応を考えテ『いざ』トいうヨウな感じダッタんだが……成程マダまダ奥は深イ。まあソレでコそ『学習』もまタ捗るってナもンさァ……」
相変わらずの壮年じみた物言いだが、はっきりこりゃあ俺らを意識してらっしゃいますなあ……興味のないことを殊更に撒き散らしてくるってのはその逆が真、って本人以外にはバレバレの
こっから、で最後にしてやる。
「……ッ!!」
阿吽以上の呼吸感。俺が機体に「左脚を十一時方向に踏み込ませると共に、右脚は一拍遅れで真後ろに引く」という動作を促すのとほぼ同時に、ナディルカは「右腰後ろにぶら下げていた
「!!」
巻き込むようにしてシェイクして、吸い込むようにして叩き洗いして、その「粒」ひとつひとつが担っているんだろう「学習記憶」を全部、ぜぇ~んぶまっさらな状態に戻してやんぜぇぁッ!!
白い光を
「ゴォァッ!?」
勿論それと共に壮年顔もその
そこのけで行かせてもらうぜぇ?
「経路オールグリーン、これより当機は両操縦者の光力を『
互いの認識は成った(はず)。そしてそれに伴って光力の流れもごくごく自然に対流するようになってきたじゃねえか。平常心、そいつがいつだって重要よぉ、エネルギー充填率問題なし、射出角度良し、準備万端、万事ヨシ!だぜぇぁあああ……いくぞッ!!
「本時刻を以って本作戦を以降、『
ええェ……という声が上から漏れて来るものの、滞りは無い模様だ、いける……自身の身体にも力を込めた、その、
刹那、だった……
「……ッ!!」
揺さぶる衝撃。が、操縦席を貫く。
「ナディルカ、緊急事態だ、『時雨茶沢
困難は百も承知だぜ、だがもう行くしかねえ、ねえんだッ!!
「……」
揺れる実視界の中、ひと動作ごとに痛む両腕を伸ばし、腹上の細い肩を掴む。上気させた小顔の中で少し尖らせられる桃色の唇。それごと華奢な身体を引き寄せた。覚悟を決めたか、身体を合わせ、最適な体勢へと移行してくるその重みと体温を感じながら、今度こそ、とカウントを取ろうとする。が、その、
刹那、だった……
上下動および横揺れにだけ気を取られていた。それがいけなかった。激しい前後動。それに対応できなかった腹上の身体は一瞬、俺の身体の上を頭上方向へと滑り昇り、
「「あ」」
瞬間、極限まで圧縮された二人の光力は、藍色と桃色の二重螺旋を描く軌道にて増幅され、
「……!!」
吹っ飛ばしていったわけで。
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