82 捜索依頼

俺たちはすぐさまその穴の中に入っていた。なだらかに下る坂を歩き続けていくと洞窟の壁の色が灰色から虹色に変わった。今までのここに至る洞窟の壁の色が混在した色だ。


「気を付けろ。ここから地下13階層だ。以前に来た時はここから下に竜種がゾロゾロいたのが見えたからな」

「そうね。あれは凄い光景だったわね」


俺とスリーが地下12階層で大猿共と戦った後に、脱出前に下の階層を見た時には様々な種の竜がいたため、ここがおそらく最下層なのだと判断した。魔素が明らかに濃い。強烈な魔素の塊の存在感がこの奥にあるのを感じるのだ。


「さっきの打ち合わせ通りで行く。俺が前衛。3人は後衛だ。スカーは2人を護衛。スリーは聖魔法で光源の生成と、魔法で傷ついたメンバーを随時治癒。スカイは俺のバフと敵のデバフ。いくぞ」


「「「OK!!」」」


俺が先頭に立ち、地下13階層に突入した。


スカイからのバフの歌声が小さく聞こえてきた。俺の体が今までよりも軽く強靭になっていくのを感じる。実感としては全てのステータスが3~4倍になっていると思う。こんなバフをずっと勇者パーティは受けていたのか。スカイのバフは本当に凄い。


目の前に紫色の五メートルほどの竜が現れた。この竜は長い首と体を持ち四本の足で歩行している。全身強靭な筋肉を纏い、体表には硬い鱗が覆っていた。それぞれの鱗は光を反射して、キラキラと光っている。このダンジョンの他の魔獣と同様に、目は存在しない。この洞窟内で過ごしている為に視覚がある必要はないのだろう。大きくて鋭い顎を持ち、尖った牙が口元から見られる。翼は持っておらず飛ぶことはないようだ。長く鋭い棘が並ぶ尾を持ち、おそらく尾を武器にしながらもその強大な体躯のバランスを取るために使われると思われる。大きな尖った耳を持っており音の反響を持って周囲の様子や地形を把握するのだと推測できる。


俺たちが現れた為に「グルルルルゥゥゥ」と唸りながら俺たちを警戒している。


(紫色の竜か・・・何属性だろうか?)


俺は様子見もあったのでスタスタと竜に向かって歩いていった。音はほとんど立てていたつもりはないが、竜は俺の足音を認識し、正確に俺の位置を認識し、こちらに向かって咆哮してきた。


「グアァァアァァアァァァ!!!」


そして口から濃い紫色の衝撃波が飛び出し猛烈な勢いで俺に向かってきた。俺はその衝撃波を掌で受け止めた。


バン!!!!


俺の掌に接触した瞬間にその衝撃波は消し飛んだ。俺の腕が少し後ろに下がった程度であったが、これぐらいなら体に直接を受けたところでノーダメージだろう。衝撃波が消滅した後に、薄い紫色の空気が漂い始めた。この臭いには覚えがある。懐かしい匂いだ・・・


この臭いは・・・毒だ!


俺がよく毒草の洞窟で嗅いでいた匂いだ。この濃度の毒霧を出せる竜がいるというのは、なかなか凶悪だな。この濃度の毒霧の場合、普通の人間であれば数分で死ぬ。これは筋力低下の毒だ。


となると、この13階層に入ってこの竜と戦えるのは、俺とスカーレットだけになるのか・・・いやスリーが回復魔法を常時全力でかけていれば戦闘には入れるか・・・それでは魔力が欠乏すると死んでしまう。そのリスクは取れないぞ。今は3人とも後ろで待機してもらおう。後ろからもしかしたら魔族パーティも来る可能性もなる。後方警戒も続けなければならない。


俺はゆっくりと毒竜に近付いていった。衝撃波を無数に飛ばしてくるが、どれだけ俺に当たろうが全くダメージは俺には通らない。地上の魔獣やエルフであればこの衝撃で体が切断され、衝撃で生き残ってもこの毒霧で死んでいるだろう。


俺の周りは毒霧で周囲が見えなくなっていた。しかし奴は衝撃波も毒霧も全く俺に通用しないことに気付いたのか、攻撃方法を変えて俺を直接喰らうことにしたようだ。横向きに頭を傾け地面と平行になりながら俺に噛みつこうとしてきた。


俺は敢えて毒竜の牙を体に受けた。


ガキッ!!!!!


牙が俺の体を全く貫かない。傷つけることもない。俺の体、腕、足、頭、首、目、どこをどう噛みついても牙は体の中に入り込まない。小さいがあまりにも強固な物体がそこに立っている、そんな印象だろうか。


「グルルルルゥゥゥアアァァァァァァァ!!!!」


毒竜は咆哮を上げて何度も何度も俺に噛みついてきた。


ガキッ!ガキッ!ガキッ!ガキッ!ガキッ!ガキッ!ガキッ!ガキッ!ガキッ!ガキッ!


噛みつき上空に持ち上げようにも俺のスキル重量化があまりに重く、持ち上がらない。牙が硬質化スキルで固くなった俺の体を上滑るのみであった。


スカイのスキルのおかげもある。あまりのチート感が半端ない。竜の攻撃が全く効果を示さない。


「まぁスカイのおかげかな。しかし竜がこれぐらいの強さなら大丈夫だな」


俺は安心して、竜の頭を手で掴み地面に叩きつけた。


ガン!!!!!!!


地面にめり込み毒竜は沈黙した。掴んでいる手と逆の手を手刀にして竜の頭蓋骨を貫き脳を破壊した。


竜は一瞬「グルァァ」と弱々しく叫び声をあげ、全身を痙攣させて完全に沈黙した。


「この程度の攻撃で死ぬんだな」


その後、奥を見ると赤色や青色、黄色など色とりどりの竜たちがゾロゾロと出てきていた。


「さぁ『超高純度魔鉱石』に辿り着こうか!!」






                ◇







―ミハルド伯爵邸―


「ノート様!ノート様!こちらをご覧ください!」


ミハルド伯爵邸の執務室で、ミハルド伯爵当主ノートは決裁、検討が必要な書類を処理しながら、部下に指示を与えているところだった。執務室に魔族パーティ支援担当の兵士が走り込んできた。


「どうした騒々しい。何があった?」


「はぁ!はぁ!はぁ!はぁ!はぁ!こちらの映像をご覧ください!」


「魔族冒険者パーティに変化でもあったか・・・?んんん?これは何の映像だ?」


「はい、現在魔族冒険者パーティのメイユ式映像送受信魔道具からの映像です。11階層での初めての竜種との戦闘もあり、魔族パーティもかなり苦戦を強いられておりましたが、とうとう魔族パーティも11階層を突破する見込みです!」


「おぉ!!そうか!それは素晴らしい!!他のエルフの冒険者パーティは、魔族と比べて圧倒的に戦力が違い過ぎるからな。『超高純度魔鉱石』の獲得にはエゴロヴナのチームが最有力だ。期待している・・・」


そう言っている間に、突然映像が途切れ、画面は暗くなった。


「なっ!?」


「えっ!?」


兵士は魔族パーティから送られてくる映像が突然切れたことに困惑した。魔道具の不調かと思われたが、どこをどう見ても異変はない。


兵士は焦りながらも冷静に「魔力を遮断する場所に入った場合は、今までも何度か映像は切れることはありましたので、そのような状況であると思います」と答えたのだが。


「バカ者!!!!魔力遮断で映像が切れたなんて、そんな話を私は聞いたことがないぞ!何故報告をしない!魔族パーティの生死の責任は、このミハルド伯爵があるのだぞ!映像が途切れるなど、一大事ではないか!?」


「大変申し訳ございません!!映像が切れるのもそういう時は一瞬でありましたので、ご報告事項に上げておりませんでした・・・」


こう話している間も、魔道具の画面は真っ黒で何も示さないでいた。


もしこの魔族パーティに何かあれば、魔族本領からミハルド伯爵領に強烈な圧迫が与えられ、最悪取り潰しになる可能性もあるのだ。ノートの苛立ちは募るばかりだ。


「おい!!どうするのだ?!」


「いえ・・・どうすると言われましても・・・壁の色を見ている限りでは、おそらく地下12階層に入ったところで映像が切れましたので・・・」


「ので、何だ!?」


「おそらくですが、奈落の底での階層の狭間での魔獣の攻撃は今までなかったように思います。推測ですが、魔力自体を遮断するような性質が地下12階層にあるのかもしれません・・・」


「推測では話にならん!?現に今も反応がないではないか!誰かを派遣しろ!先ほどの地下12階層手前のチェックポイントへ誰かを飛ばせ!?魔族たちは各層の狭間の区域でチェックポイントを記録しているだろう!ミハルド伯爵領の存亡がかかっておるのだ!誰か状況確認できる者はおらんのか?」


「えぇと・・・只今でしたら、ウィングパーティという冒険者パーティが現在7階層まで攻略しております。魔族パーティ以外であれば一番奥まで行っている一番有能なパーティです」


「地下7階層か・・・致し方ないな。了承しないかもしれないが、私兵団も同行し、最大限の支援をすると伝えろ。報奨金も多く出して、そのパーティに捜索依頼を出せ!魔族パーティの安否を確認させに行け!もしくは救出だ!」


「し、承知いたしました!!!」


そう言って兵士は急いで執務室より飛び出していった。ウィングパーティの動向を知るギルド職員の名前と姿を思い出しながら、その者たちへの打診方法を考えていた。


「くそ・・・何かあったら魔族どもに我々が潰されるんだ。何かあってからでは遅いのだ・・・くそ、あのエゴロヴナの奴らも我々の同行を断るからこういうことになるのだ!!力はあるのはいいが自信過剰な連中だ!!」


ノートは苛立ちながら自身の執務室の机を叩き、事態の推移を見守るしかなかった。




―地下2階層―


ウィングたちは各階層をしらみつぶしに調べながら、ダンジョンを降りていた。もちろんネオたちが転移魔法陣に入ってしまえば、どこに行くかはランダムに決まる為、このように調べたところで無意味かもしれないのだが、ダンジョン内に入れば、まだ見つかる可能性あるのではないか、との一縷の希望を託して降りていた。


そして、そろそろ地下3階層に差し掛かるところまで来た。


ウィングは焦りながら周囲を見渡していた。

「いない・・・いないぞ・・・くそっ!!」


焦るウィングを尻目に、ユハは冷静に現在の状況を分析していた。


(本当に一か八かのこんな確率の低い方法で逃亡を企てようとするのかしら?たしかに転移魔法陣を踏み抜けば、地上のどこかに出る可能性もあるにはあるけども、更に下位層に行く可能性もある。いくらネオとスカーレットの索敵能力が高いからと言って、あの子たちの低い戦闘能力では死んでしまう・・・いえ、それほど追い詰められていたと言えばそれまでなのだけれども・・・何か引っかかるわ)


ネオが自身の力を正確に悟らせていなかった為に、ユハたちはネオたちの動向に関して全く把握できないでいた。


ツリーは周囲を見ながらこの捜索自体のあまりな非効率さに捜査打ち切りの提案を出した。


「なぁ、みんな、たぶんこの方法では無理だ。こんな捜索をしていても、まるで砂浜に落とした一本の小さな針を探しているようなものだ。むしろ地上階にいて待つ方がいいんじゃないか・・・?」


ライトも頷いた。

「ツリーの言う通りかもしれねぇな。この捜索は無茶だ。確かに俺も勢いで来ちまったが、冷静に考えればここであいつらを見つけられる可能性はあまりに低い。地上階で待つ方が無難だろ?どうせ、あいつらは地上階に出るまでは何度も転移魔法陣を踏み抜いて、逃げようとしているんだろう。生きていれば地上階、死んでいればダンジョンの藻屑だろ。ダンジョン内を探すだけ価値がない」


アスクとストーンも同意の視線をライトとツリーに送っていた。


さすがに捜索の非効率性を感じ始めていたウィングもこの意見には同意せざるを得なかった。


「そうだな・・・それでは一旦地上階に戻るか。くそっ!!面倒なことをしてくれているぜ、あいつ。本当に、スリーとスカイが可哀想だ・・・」


苛立ちながら転移魔法陣を使おうとウィングは袋に手を入れようとしたところで、ユハがそれを咎めた。


「あなたたち、そんな簡単に転移魔法陣を使わないで。あなたたちは自分で稼いだお金じゃないから分からないと思うけど、その一枚一枚が金貨100枚するのよ。国の支給も無限にあるわけじゃないの。地上階まですぐそこなんだから、もう一度歩いて戻りましょう。道中でスリーたちを見つけられる可能性もあるんだから」


苛立つユハはできるだけ冷静にウィングに自分の行動の軽率さを指摘して、歩きながら地上階に戻ることを提案した。


皆、同様に事態の展開に対する焦燥感と苛立ちで神経をすり減らしていたが、ファーダムの支援無くしてこのダンジョンアタックもありえないと思い直し、渋々ユハの言う意見に同意せざるを得なかった。


しかし、ウィングは心の内で毒づきながら地上階を目指すために踵を返した。


(元はと言えば、お前たちファーダムの依頼で俺たちはここにいるんじゃないか!そのせいでスリーとスカイが死にそうな目に遭っている・・・その責任をユハはどう取るつもりだ・・・くそっ!!納得いかねぇ)


そう思いながらも周囲を見渡しながら地上階に向けて勇者パーティは歩き始めた。


30分ほど歩けば、すぐに地上階の入り口が見え始めた。ダンジョン内は緊張の連続であったため、どんな階層にいようとも心身共にすり減っていく。勇者パーティメンバーたちは早く地上階のどこかでゆっくりと休憩したいと思っていた。しかし、入り口付近で何か喧騒の様な声が聞こえてくる。


「どこにいる・・・?!」

「まだ帰って・・・!」

「いつなんだ・・・?!


断片的に話は聞こえてくるが、何を騒いでいるのだと思いながらとうとう地上階に到着した。


ウィングは大きく伸びをして太陽光を浴び、今の自分たちが安全地帯に入れたことの安堵感を嚙みしめた。そこへ兵士の恰好をした者たちがウィングの所へ駆け寄ってきた。


「すいません、みなさんはウィングパーティですか?」


ウィングたちは突然兵士たちが自分たちに話しかけてくるのに全く理由が分からず眉を上げた。疲れの為苛立つウィングは平静に応答するつもりはなかった。

「なんだ!!??俺たちは疲れているんだ!俺たちがウィングパーティだったら何だと言うのだ!?」


「すいません、お疲れのところ。みなさんの冒険者としての力を見込みまして、洞窟内の冒険者パーティの捜索依頼をしたいと思っております」


ウィングはまさか、スリーとスカイの捜索をギルドが本腰を入れて取り組むのかと思い、内心嬉しさを感じた。

「スリーとスカイの事か?!そうなんだ!冒険者のネオが他の冒険者を洗脳し拉致していき、このダンジョンに連れ込んでいったんだ。俺たちはすでに捜索をしているんだ。その件かのことか!?」


次は兵士たちが困惑する番となった。今のウィングの話の最初から最後まで何の話をしているか分からず、「いえそうではないんですが・・・」と目を輝かして期待を膨らまして聞いてくるウィングに申し訳なさを感じながらも、用件を伝えた。


ウィングは兵士たちの話を聞いて、ガックリきた。


兵士たちの話によると、なんでも地下12階層に入った魔族の冒険者パーティの足取りが分からなくなってしまったとのことだ。『足取りが分からなくなった』というのは具体的に言うと、彼らが持ち歩く送受信魔道具というものが存在し(「携帯か?!」とウィングは反応した)、それが映らなくなってしまったようなのだ。かれこれ1時間も経つが映らないので、捜索依頼が出たようなのだ。


「ちょっと待て」

ライトは話を聞き終えて口を開いた。

「そもそもお前たちは何者だ?兵士の恰好をしているという事はギルド関係のエルフではないだろう?」


「はい、私たちはミハルド伯爵より直接、命を受けてここに来ております」


「ミハルド伯爵・・・どうして伯爵が直接魔族の保護に動くんだ?」


「もし消息を絶った場合、捜索依頼するように事前に魔族パーティ様から伯爵様にお願いがありましたので、このような対応をさせてもらっているのです」


他のメンバーたちも困惑したような面持ちでこの依頼を聞いていた。そもそもダンジョンアタックは100%冒険者側の責任であって死のうが何をしようが、冒険者の選択の結果だ。捜索依頼を出すなんて普通あり得ない。


しかし、兵士は魔族とエルフ間の機密情報に当たる事柄の為、それとなく違う理由を説明せざるを得なかった。


「ふーん。そんなこともできるんだな。結構な金額じゃないのか?」


「はい、もちろんです。お金で命は買えません。魔族パーティ様から相応の金額が支払われています。どうされますか?捜索依頼を受けていただけませんか?ウィングパーティは、エルフパーティの中でも最も深い階層に行かれています最も有能パーティと聞いております。是非ご参加願えればと思います」


ユハはその話を後ろから聞いていたが、何点か不明な点を聞いていった。

「失礼。少し聞いてもよろしいですか?何を持って『捜索』となるのですか?成功報酬はいくらですか?もし捜索した結果、死んでいた場合の報酬はどうなりますか?またギルドからも支援はしていただけるのですか?そして今どれぐらいのパーティが捜索に参加していますか?地下12階層といえれば、私たちでもまだ到達していない階層です。そこに少人数で捜索に行けと言うのは、無茶だと思います。それといつまでの返事になりますか?」


「『捜索』は文字通り、探していただくことです。まだ魔族パーティ様が危機に瀕しているのかどうかもわかりません。もし救助の必要な場合はそれも依頼に含みます。報酬は皆様に6000枚金貨を用意いたしております。魔族パーティ様の生死に関わらず、です。ギルドからの支援としても転移魔法陣の提供とポーションなどの支給をいたします。他の冒険者パーティにはお声かけはしておりません。戦力にならないパーティを連れて行っても命を粗末にするだけですので。ウィングパーティのような、力のあるパーティにだけお声掛けしております。もちろん皆様だけでなく、精強な兵士団もご同行いたします。ご返事は今すぐお願いできればと思います。即捜索を始めたいと考えています。いかがでしょうか?」


「では一旦パーティで話しますので、待ってもらっていいですか?」


「はい、よろしくお願いします。しかし早めにしていただきますようにお願いします。1分1秒を争っていますので」


ユハは勇者パーティを兵士たちから遠のけて、近くの茂みの方まで移動した。


ユハ「と、いう事らしいわね」

ライト「金貨6000枚か。今の俺たちの頭数で割ったら一人1000枚。はっきり言って破格だな。日本円では1000万円だぜ」

アスク「危ないでしょ?地下7階層でも危なかったのに、いきなり12階層はないんじゃないかしら」

ツリー「けども、伯爵の直属の兵士団と一緒に地下12階層に行けるんだよね。こんな機会が無ければ地下12階層は見れないよ。地下12階層に行った他のパーティに聞いても、同じぐらいの金額は取られる可能性があるよ。お金を支払うことなくもらえて、12階層のことが分かるなんてすごいことだよ」

ストーン「滅多にない機会」

ウィング「しかしエルフならまだしも、魔族の支援だろ・・・魔族にはむしろ死んでくれた方がいいぐらいだぜ」

ユハ「それはその通りね」


ユハは自分の思考の中に入り込んでいった。

(これほどの金額。伯爵には魔族との間に何か大きな契約があるのね。莫大な報酬と貴重な経験を一方の天秤、そしてもう他方には私たちの命リスクと魔族支援。判断が難しいわ)


皆それぞれのメリットデメリットを天秤に測り考えた。


ウィング「まぁいいんじゃねぇか。伯爵直属の兵士団が来るんだろう。戦力的には申し分ないはずだ。この伯爵領の軍事産業を進めっているって話だからな。その戦力を借りてダンジョン探索ができるんだ。良いことずくめじゃねぇか?どうせ、魔族が死んでいたとしても報酬はもらえるんだろうからな。それにスリーとスカイも当分は戻ってこないだろう。俺は行くぜ」(少しはパァと遊びたいからな。俺たちが稼いだ金だ、ユハに文句は言わせねぇぜ)


ライト「まぁこんな機会はないわけだからな。たまにウィングは良い事言うぜ」(兵士団の実力が知りたいぜ)

アスク「私は行くべきじゃないとは思うけどな・・・」(私はちょっと休みたいわ)

ストーン「滅多にない機会」(地下12層の魔獣が見てみたい)

ツリー「確かに難しい判断だけど・・・若干行きたいかな」(兵士団との連携は面白そうだな)

ユハ「もしかしたら渡りに船かもしれないしね」(このままダンジョン攻略が進まない以上、伯爵の兵士団との伝手ができるのもいいかもしれないわね)


それぞれの思惑を胸に、勇者パーティは兵士の依頼を承諾するのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る