58 ガールズトーク

奈落の底は鬱蒼とした森林の中の丘の中腹にあった。直径10メートルもの巨大な穴だ。見れば分かるようなものだが、誰もその穴に気付かなかったのは、その奈落の底があった森林は死の森の一部であり、凶悪な魔獣が闊歩するデスゾーンであった為、地元住民がおいそれと近付くことができない場所だったからだ。


また草木が繁茂し穴を塞いでいた為、ただでさえ誰も寄り付かない場所に偶然にも通った人がいたとしても誰もそこに穴があることが気付かなかった。


今までもその穴に落ち、その穴の存在に気付いた者もいた可能性もあったかもしれないが、このダンジョンの凶悪なモンスターたちによって入ったもの達は瞬時に駆逐されたため、奇跡的な偶然が重ならない限りはこの奈落の底を見つけることは非常に困難だった。


今回巨大な穴が見つかった理由は、偶然に冒険者たちが植物の採取に森に侵入したところ、ある魔獣がその穴に落ちていく様子を目撃したのだ。


魔獣が穴に落ちた後に穴の奥から金切り声が聞こえてきた為、その穴の中に何かが潜んでいることを理解し、すぐにその場から離脱した。


都市ウォルタに急いで戻り、その冒険者達はすぐさま冒険者ギルドに報告しに行った。


冒険者ギルドは報告を受けダンジョンの可能性を疑いただちに捜索隊を編成して派遣した。


派遣隊の捜査の結果、なんとダンジョンが発生していることが確認された。冒険者ギルドは、大規模な探索隊を組織し、ダンジョン内部を調査し出したが、ダンジョン中のモンスターたちがあまりに精強であった為、即断念。ミハルド伯爵に援助を求めた。


ミハルド伯爵当主ノートは今までもエルフ族国の歴史の中で、中小規模のダンジョンが数個発生したことがあるのを知識として持っており、それぞれのダンジョンがエルフ族国の歴史の転換点に大きな影響を与えたことは、多くのエルフ族の知識層にとっては常識であった。


だからダンジョンの存在は歴史的に見ても、経済的に見ても、軍事的に見ても、あまりに魅力的な存在であったのだ。


歴史上国の趨勢にダンジョンが与えた一番大きな影響は超高純度魔鉱石の発見だった。その力を持って、サニ派は自分たちの兵士を増強することを可能にし、エルフ族が劣勢となっていた魔族との戦争を一気に反転させることができた。


もちろん当時のサニ派法王ナーリア37世の『他宗派邪教宣言』の為にサニ派の兵士たちが死兵にできたことも要因としては大きい。


それからダンジョンは恐怖と羨望と畏敬の念を込めて『奈落の底』と呼ばれるようになったのだ。しかしそれ以降、『奈落の底』が見つかることはなかった。何が原因で、どのような過程で生成されるかは謎のままであった。また奈落の底は永続的に存在するのではなく、奈落の底の最下層に存在する魔鉱石を獲ると奈落の底を支えていた魔素が大幅に減少し、一気に崩落していくのだ。後に超高純度魔鉱石が無くなった奈落の底を訪れると、そこには何も存在していないかのように思える風景が広がり、奈落の底跡には何もない空洞が静かに佇むだけであった。


ノートは歓喜した。


(まさか奈落の底が下賜された領地で見つかるとは!)


早々に伯爵領の全ての物的、人的、金銭的資源を総動員して奈落の底の攻略に注力するのであった。




          ◇




春日たちが都市ウォルタに到着してから約10ヶ月の日々が経った。ノートがダンジョン攻略の大号令を発出して、『根』たちはすぐさま転移魔法陣を使い情報をヒト族国王に報告した。国王はすぐに勇者パーティ派遣を決定し『根』達が今まで築き上げてきたルートを使い、多大なサポートを得て、たったの2ヶ月間の移動で勇者パーティはミハルド伯爵領の都市ウォルタに到達することができていた。


春日達は最初は情報収集と言語習得、冒険者としての討伐任務、ダンジョンの上層部に慣れることに集中して、都市ウォルタでの生活を送っていた。


エルフ領は魔族が間接統治をしている為、ヒト族であることが分かると逮捕・送検・死罪となる。


春日達はエルフ領に潜伏している諜報部隊員より変装のアミュレットを手渡され、外見をエルフに変化させた。驚くべきことに髪の毛の色が金髪となり瞳も碧色へと変化した。これで誰も春日達の事をヒト族と思う人はいないだろう。


そして春日達のことを知っている魔族もいないだろうが、念の為にお互いの事をコードネームで呼び合うことにした。


春日翼は「翼」のウィング。

菅原光輝は「光輝」のライト。

三原美幸は「三原」のスリー。

真木千尋は「尋」のアスク。

柏原樹は「樹」のツリー。

立石悠真は「石」のストーン。

赤石そらは「そら」のスカイ。

ユハはユハ。


春日ウィングは、この1年の戦闘の中で勇者のスキルを大幅に強化することができていた。


【勇者】→【歴戦の勇士】

ー火属性攻撃・耐性→火属性強撃・無効化

ー水属性攻撃・耐性→水属性強撃・無効化

ー木属性攻撃・耐性→木属性強撃・無効化

ー風属性攻撃・耐性→風属性強撃・無効化

ー金属性攻撃・耐性→金属性強撃・無効化

ー雷属性攻撃・耐性→雷属性強撃・無効化

ー聖属性攻撃・耐性→聖属性強撃・無効化

ー闇属性攻撃・耐性→闇属性強撃・無効化

ー物理攻撃耐性→物理強撃・無効化

ー魔法攻撃耐性→魔法強撃・無効化

ー物理攻撃50倍→200倍

ー魔法攻撃50倍→200倍

ー魔力♾

―体力回復C

―回復魔法C

―指揮官


各属性の攻撃と耐性を強化し、小ダメージで連撃ができる『スラッシュ系』の魔法攻撃以外にも、一極集中で大ダメージを与える『ストライク系』、広範囲に渡る『ウェブ系』、設置をして防御にも攻撃にも使える『ウォール系』、他にも相手の動きを縛る『バインド系』なども使えるようになっており、他のスキルも獲得し、殲滅能力、継戦能力も格段に強化された。


また他のパーティメンバーも、大きくスキルを進化・強化することに成功している。


菅原光輝ライト

【暴威の王】→【残虐の英雄王】

ー物理防御無効化→物理攻撃消滅化

ー魔法防御無効化→魔法攻撃消滅化

ー攻撃力100倍→攻撃力1000倍

ー防御力100倍→防御力1000倍

ー身体能力100倍→身体能力1000倍


三原美幸スリー

【聖女の癒し】→【聖女の奇跡】

ー回復魔法SSランク→SSSランク

ー聖属性攻撃・耐性→聖属性強撃・無効化

ー魔力100倍→魔力300倍

ー魔法攻撃・耐性→魔法強撃・無効化

ーカリスマ性

ー扇動力

ー団結力

―交渉力


真木千尋アスク

【賢者】→【古の賢者】

ー魔法攻撃・耐性→ 強撃・無効化

ー火属性攻撃・耐性→火属性強撃・無効化

ー水属性攻撃・耐性→水属性強撃・無効化

ー木属性攻撃・耐性→木属性強撃・無効化

ー風属性攻撃・耐性→風属性強撃・無効化

ー金属性攻撃・耐性→金属性強撃・無効化

ー雷属性攻撃・耐性→雷属性強撃・無効化

ー聖属性攻撃・耐性→聖属性強撃・無効化

ー闇属性攻撃・耐性→闇属性強撃・無効化

ー回復魔法→回復魔法Sランク

ー魔力50倍→200倍



立石悠真ストーン

【狩人の牙】→【狩人の爪牙】

ー弓矢攻撃・耐性→弓矢強撃・無効化

ー走力10倍→100倍

ー器用さ10倍→100倍

ー必中攻撃→必中強撃

ー防御貫通率100→1000


柏原樹ツリー

【不動の壁】→【鞏固の反射壁】

―物理攻撃無効化→物理攻撃反射

―魔法攻撃無効化→魔法攻撃反射

―犠牲

―身代わり


赤石そら《スカイ》

【詩歌の歌姫】→【戦場の歌姫】

ー味方の士気の向上→士気急上昇

ー味方の攻撃力向上→攻撃力急上昇

ー味方の防御力向上→防御力急上昇

ー味方の魔力向上→魔力急上昇

ー味方の身体能力向上→身体能力急上昇

ー味方の感情を煽る→感情高揚化

ー味方の感情を収める→感情沈静化

ー声量増大・貫通→声量指向性・増減

ー魔力拡張・遮断



彼らは確かにこの殺伐した異世界において、自分たちの生存を保障する力をつけてきたのだった。


ウィングはパーティメンバーを連れて、宿舎の大部屋でテーブルを囲んで討議兼昼食を摂っていた。


今朝は3層の情報を集めるために冒険者ギルドで情報屋や地図の購入、ギルド内の討伐依頼票を見ながら、どのようなモンスターや鉱物、植物があるのかを確認していた。その情報共有のために集まっていた。


「かなり入り組んだ構造をしているわね」

アスクは高値で購入した地図を広げて、皆で頭を突き合わせて何の準備が必要かを考えていた。


「どうやら爬虫類が多く出るらしい」

ツリーはギルドに併設されている資料室で見つけた情報を共有した。


ウィング「爬虫類というと、蛇やトカゲや、カエルとかか?」


ツリー「そんな感じだね。今までの傾向性から考えると、2層の昆虫類も巨大化していたから、巨大な蛇やトカゲがいると思う。変温動物だから気温の変化に弱いのかな」


ライト「既に潜ったことのある冒険者とも話を聞いてみたが、基本は魔法攻撃主体で乗り切ったと言っていたぜ」


スリー「基本は火魔法が主体なのかな?ウィング、アスクが主戦力になるね」


アスク「そうなんだ。分かったわ。しっかりと頑張っていくわ。魔法ポーションをいっぱい買っておかないといけないわね」


ウィング「そうだな。弱点を突いて効率的に戦いを進めていきたいな。この10ヶ月間で2層しか突破していないんだ。安全も考慮しないといけないがそろそろペースにも気を配らないと、な」


ストーン「他の冒険者チーム5つと魔族チーム1チームがダンジョンアタックをしている。魔族チームは6層」


ツリー「そうだな。無数に冒険者チームは参加しているが、3層より奥に潜れているのは、俺たちも入れて計7チームだ。他のチームは全部1層の上層部で主として出てくる、ゴブリンを攻略できないでいるから、ゴブリンとの戦闘を避けながら、草花や鉱石の採取に終始しているな。それぞれ貴族のチームが3つと、Aランク冒険者チームが3つ。そして魔族たちがチームを組んでダンジョン攻略をしている。他のチームもだいたい3層で攻めあぐねているしな。魔族たちだけがかなり先行しているから、早く追い付かないと厳しいかも」


ライト「とにかくまだ3層の情報が足りない。今日と明日ぐらいは、情報収集と準備に充てて、明後日ぐらいからアタックをしたらいいと思うけど、どうだろう?」


そこに、ヒト族国からここまで案内役としてきた、ユハが発言をした。


「では、私の方で冒険者ギルドに運搬者

ポーターの依頼書を提出しておきます」


ユハは盗賊の称号を持ち、索敵に特化した力を持っていた。罠の設置、解除。ダンジョン内の空間を把握できる能力にも秀でており、ダンジョンアタックに最も適した人材であった。近接戦でもかなりの腕前であった。


ユハは年齢25歳、身長160センチの細身の女性だ。ショートボブの髪型をし、基本黒を基調とした服装を好んで着用している。


このチームでも女性陣からはお姉さん的な立場で、戦闘からこの世界の常識または恋愛や避妊のことなども、三原美幸スリー真木千尋アスク、赤石そら《スカイ》からは色んな事を相談されている。


男性陣からもこの世界の常識などの相談を持ち掛られ、とても信頼される姉の様な存在となっていた。


ユハはそのような信頼を得ながらも、勇者パーティの補佐に徹し続けていた。ユハの素性は兵士団第800部隊所属であり、諜報部隊とだけ説明していた。


兵士団第800部隊とはファーダム国の諜報部隊『根』の表での名前となっており、生まれた時から諜報部隊として訓練を受けてきた、生まれながらの暗殺者のグループだ。


いつも笑顔でパーティメンバーに接しており大人な雰囲気でいるが、どこか謎めいた箇所も垣間見える時もある。またそこが魅力的なんだ、というのが男性陣のユハに対する総評だったりする。


ウィングは皆のそれぞれの役割を明確にして、話し合いの終了を告げた。皆は思い思いにその場を辞して、自分たちのするべきことに取り掛かり始めた。


ウィングはスリーに一緒に買い物に行かないかと誘ったが、スリーは既にアスクとユハとスカイの女性陣だけで買い物をすることを伝え、ウィングの誘いを断り、部屋を出て行った。


ウィングは、はぁ、とため息をついてツリーに声をかけて、一緒に冒険者ギルドの調べものを手伝うと伝え、ツリーと部屋を出ることとした。









女性4名はワイワイ言いながら、賑わう街のメインストリートに繰り出し、ダンジョンアタックに必要な物を買おうと話し合っていた。しかし必要なものより、欲しいものに話が脱線するのがこの3人の悪いところでもあった。ユハは自分の意見は言わず、常に3人のやりたいようにさせていた。


アスク「ねえ、さっきの洋服、可愛かったよね!私、絶対それ着てみたいな」


スリー「本当に可愛かったよね!アスクに絶対に似合うと思うよ。それに色もすごく綺麗だったし」


スカイ「アスクはスタイルがいいから、何でも似合うね」


アスク「ありがとう!一緒にお店に行ってみたいな。いつか行けるかな?」


スカイ「賛成―!すぐにいこー!」


スリー「スカイ・・・。分かっていると思うけど、まぁ、当分は無理じゃないかな。洋服を買って着るタイミングが無いしね」


アスク「うーん、そうだね。今は、我慢我慢かな」


スカイ「残念なのだー」


スリー「はははは。我慢できるかな?アスクは、我慢できなくて買っちゃうじゃない?」


アスク「はははは。スリーも、誘惑に負けちゃダメだよ」


スリー「えー、私は何も買わないよー」


スカイ「さっきのスリーの真剣な視線は、無理だったねー」


アスク「そうそう。さっきスリーが熱心に見ていたバッグもすごく可愛いと思うよ」


スリー「ははは。バレてたかー。まぁ、今はオシャレより冒険だからね。また買いに行こうね。あ、どこか可愛いカフェでお茶しない?」


スカイ「賛成―!」


アスク「ユハさんは、一緒に行きませんか?」


ユハ「良いわよ」


アスク「じゃあ、最近行ってみたいと思ってたカフェがあるんだ。可愛いメニューがあるみたい。前からチェックしていたんだ」


スリー「それは楽しみ!カフェで、お茶してデザートも楽しもう!」


スカイ「カフェカフェ♪」


それから4人は、カフェでお茶をしながら、まったりと時間を過ごしていた。このような時間も殺伐としたこの世界で、精神を安定するのに必要なものだった。それをよく理解しているユハは、3人がやりたいことを最優先にしてサポートしているのだった。



カフェに着いた4人の女子達は、早速飲み物を注文して、談笑に興じるのであった。



アスク「スリーは、最近恋愛してる?」


スリー「まぁ、この世界に来てからは忙しすぎて、恋愛どころじゃないよ」


スカイ「スリーは聖女として忙しいもんね」


アスク「忙しいのは分かるけど、やっぱり恋愛は大事だよ。ここでの生活にも張りが出るわよ」


スリー「うん、そうだよね。でもなかなか出会いがないんだよ」


スカイ「えー、たぶんスリーに言い寄る人はいっぱいいたと思うけどなー」


アスク「まぁ、そうだね。けどもスリーのお眼鏡にかなう人はなかなか見つからないんだね。恋愛は難しいよね。でも、いつかスリーにも素敵な人が現れるよ」


スリー「ありがとう、アスク。アスクはライトとはどうなの?」


アスク「まぁ、大切にしてくれるから良いけどね。最近ライトが構ってくれないの。私、ちょっと寂しいんだけど、どうしたらいいかしら?」


スカイ「ライトとは上手く行ってないの?」


スリー「ユハさんは、何かありますか?」


ユハ「そうねー。まず、冷静になって、どうして彼が構ってくれなくなったのか考えてみるといいわ。冒険の事や、もしかしたらプライベートのストレスかもしれないし、何か特別なことがあるかもしれないわね」


アスク「うーん、確かに最近、ダンジョンアタックの準備をしていて、忙しいみたいだし、ストレスを感じているかも」


ユハ「彼もストレスを感じているなら、まずは話を聞いてあげることが大切よ。彼の気持ちに寄り添ってあげることで、関係が良くなるかもしれないわ」


アスク「それはいいね!でも、私って彼に何かできることがあるかしら?私なんてそんなにライトのために良い事とか言えないわ。こう君って本当に何でも知っているし頭もいいし・・・」


ユハ「いっぱいあるわよ。まずは彼に尋ねてみて、どうすれば彼をサポートできるか聞いてみるのが良いわ。彼の愚痴や悩みを真剣に聞いてあげることで、彼があなたに対してもっと心を開いてくれると思うわよ。まぁ、男は基本口下手だしプライドも変に高いから、話を聞いてあげるだけでも十分なのよ」


アスク「そうね、ありがとう。じゃあ聞いてみようかな。なんか、2人っきりになると私の話ばかりしているような感じなんだよね」


ユハ「もちろんアスクが自分の話をすることも大切よ。けども今アスクが感じている、わだかまりの感情を伝えることはとても大切よ。けどもそういう事を伝える時は、言葉遣いやトーンに気をつけるのがポイント。穏やかに相手を攻撃しないように気をつけて、自分の気持ちを伝えることが重要ね」


アスク「なるほど、感情を伝えるけど攻撃的にならないように気をつけるのね。ありがとう、いいアドバイスしてくれて」


ユハ「どういたしまして。愛情深い関係を築くためには、お互いに理解し合うことが大切だからね。頑張って良い方向に進むといいわね。案外、そういう所でパーティが瓦解することもよくある事なのよ。私が組んでいたパーティメンバーでもよくあったわ。私じゃないけど」


スリー「えぇー、ユハさんでもそんなことあったんだ!?」


スカイ「いがいー」


アスク「それは気になる!どんな人だったの?教えて!」


ユハ「だから、私じゃなくて、私のパーティメンバーの話。まぁ昔の話よ。ちょっと長くなるけど、こんな感じだったかしら。



かつて、私には何でも話し合える仲間がいたわ。男3人と女2人の仲間だったわ。心から信頼し合えていた。私たちは5人組で部隊の仕事でもプライベートでも常に一緒にいたの。強い友情で結ばれていたわ。あの頃は、未来を一緒に夢見ていたように思えた。


けども、その絆はある出来事があって崩壊してしまったの。私たちの中の女の子が、パーティ内の一人の男の子と恋に落ちてしまった。最初は何も問題なかったわ。愛は美しいものだし、私たちは彼らの幸福を願っていた。


けど、問題はそれが複雑に絡まり合った感情を生んでいたことだったわ。恋人同士の友達は、徐々に他のメンバーとの交流を減らし、二人の世界に閉じこもってしまった。私たちのグループは少しずつ分断されていったわ。


仕事は一緒だし、最初は気にせずにいたけど、ある程度時間が経つと思わぬ問題が起こったの。二人の関係が悪化し、二人の間で争いごとが絶えなくなったわ。私たち他の三人はどちらにも味方しないように努力したけど、中立を保つことが難しくなっていった。


ある日、仕事中に二人の争いが爆発し、任務は失敗。私たちのグループの雰囲気は最悪だったわ。まさか私情が任務の妨げになるなんて。とんだお笑い話よ。


友情は破綻した。二人の関係が完全に終わり、彼らは別れることを決断した。それをきっかけに、グループ内の緊張が最高潮に達し、私たちはお互いを避けるようになったわ。


しかし、それだけでは終わらなかった。分裂の過程で、私たちの中でのお互いの信頼感が失われ、過去の楽しかった思い出が全て不安と対立に取って代わったの。それぞれが自分の立場を擁護し、感情の爆発を抑えることができなかったわ。


結局、私たちのグループは崩壊し、以前のように一緒に過ごすことはできなくなったわ。それぞれが新たな部署に移動したり、違うパーティに入ったりして、新しい環境で生活を始めた。古い友情は破綻し、私たちはそれぞれの道を歩むことになった。


私は、愛情と友情が複雑に結びつく場合、バランスを取ることが難しいと思ったわ。感情は強力で、時には予測不可能な方向に進むこともある。


けども、コミュニケーションと妥協がなければ、大切な関係が壊れる可能性があることも理解した。私たちはそれぞれの未来を歩むことになったけど、この出来事から得た教訓は一生忘れることはないでしょうけどね。なんか長くなったわね。ごめんね」


スリー「なんか、ユハさんも色々と苦労していたのね」


スカイ「その苦労は辛そうだねー」


アスク「それって、本当はユハさんの話だったりして?笑」


ユハ「違います。さて、私の話はおしまい。じゃあ、次はスカイの話をしましょうか。スカイはどうなの?」


スリー「前のファーダムではアイドルだったもんね」


アスク「スカイのファンクラブがそこら中にあったわ。スカイのグッズも売上好調だったわね」


スカイ「みんな、優しくて好きだよー」


ユハ「まぁスカイは今のままでいいかな。もし、この人がいいと思ったら、私たちに一言言ってね。見てあげるから」


スリー「本当、そうだね」


アスク「スカイに合う人かどうかは、私たちがしっかりと見定めてあげるよ」


スカイ「ありがとー、みんな」


ユハ「よしスカイはOKだね。じゃあ、次は、スリーの出会いの話をしましょうか。たぶん、スリーには好きな人がもういるんじゃないかしら?」


アスク「えぇ!!!そうなの?」


スカイ「誰?誰?」


スリー「え!!??なんでそう思うの?」


ユハ「そうね〜。時々、1人でいるときに、沈んだ感じをしているのが、昔の恋煩いをしていた私の友達に、とても似ていたからかしら」


スリー「ユハさんには敵わないな・・・。実は、そうなの・・・。私の中にずっと特別な人の存在があるの」


アスク「本当に?それって誰のこと?詳しく聞かせてよ」


スカイ「えぇー、めっちゃ意外!誰?」


スリー「実は、伸城君のことなんだ。なんか、今更感はすごいあるんだけど、昔からずっと幼馴染でいたし、距離が近過ぎて、当時は何も感じなかったけど、今は、彼のことを思い出すだけで、胸が痛くなるの」


スカイ「スリーも・・・、けど、あ・・・。でも・・・。伸城君って・・・」


アスク「転移魔法陣で飛ばされて、もう何年もたっているわね」


スリー「わかっているわ。けども、私はこの世界で、自分自身に生きないといけないって、心の底から分かったの。いつ死んでもおかしくない世界だわ。だからこそ私は私の気持ちに正直になる。私は彼がまだ生きていると信じているの。たとえ、それが1%の確率だとしても」


アスク「それは本当に凄い事だけど・・・。でも現実を受け入れることも大切だよ。もし彼が亡くなっていたら・・・」


ユハ「希望を持つことって大切だと思う。スリー、その気持ちは尊重されるべきよ」


スリー「ありがとうございます、ユハさん。私もそう思うの。彼のことを信じていることが、私を強くしてくれるの。それに、もしこの気持ちが報われなかったとしても、彼に対する思い出や感謝は変わらないから」


アスク「スリーにそんな隠れた強さがあったとわ。それは素晴らしい考え方だね。私もいつでもスリーの支えになるよ」


スカイ「わ、わたしも支えるよ・・・わたしもね・・・」


ユハ「そうね。あまり私も公に彼のことを応援する立場にはないけども、スリーを応援するわ」


スリー「ありがとう、本当に。あぁーー、伸城君のことを話せて、気持ちが軽くなった気がするわ。特にユハさんの立場では、伸城君は捕まえなければならない容疑者だもんね。なんかずっと言えなくて、ちょっと辛かったんだ」


ユハ「いえ、大丈夫よ。仕事は仕事。プライベートはプライベート。私は個人としてはスリーを応援するわ。元橋様の件も、何かの行き違いかもしれないしね。どこかで生きていればいいのだけど」


アスク「なんだー。私はてっきり、ウィングとくっつくものだと思っていたけどな。ウィングはあれでもイケメンだし、強いしかなりの優良株だと思うよ」


スカイ「ウィングはね~(苦笑)」

スリー「ん〜。実はウィングから結構積極的なアプローチを受けているの」


アスク「あー、さっきも、一緒に買い物って言っていたしね」


スカイ「ウィングはね~(苦笑)」


スリー「ウィングも良い人なんだけど、自分が何でも知っているかのような態度で、いつも自分の話ばかりするの。私の意見や感情には全然興味を持たないし、ただ自分のことばかりを押し付けてくるし」


アスク「それは、ちょっとダメだね。最初の1年間はずっと一緒にいたよね?どう対処していたの?」


スカイ「ちなみにウィングは私には何もないけど、ちょっとタッチが多いかなー(苦笑)」


スリー「私は最初は適当に相手していたんだけど、だんだん耐えられなくなってきたの。でも、どう断っていいかわからないし、彼を怒らせたくないし」


アスク「難しい状況ね。でも自分の気持ちを大切にし、自分を守ることが大切だよ。彼の態度が受け入れられないなら、きちんと伝えるべきだと思うけどな。スカイには何もないんだったら問題ないけど・・・。スリーがウィングの事がもし嫌だったら、はっきり言ってあげるのがいいと思うよ」


ユハ「そうね、自分を大切にした方がいいわね。自分が不快に思う状況を改善することは大事なことと思うわ。特に、この生き死にが身近にある世界ではね。そういう感情は後に尾を引くからね」


スリー「ありがとう、そう言ってくれて嬉しいわ。次、ウィングがまた近づいてきたら、自分の気持ちをしっかり伝えてみるわ。彼とは同じパーティとしても仲良くはしたいと思うけど、男女として一緒になる、というのは考えられないわ。そうお互いが認識すれば、パーティとしてより良い関係になれるよね」


スカイ「みんなと話すとなんか楽しいね♪」


4人のガールズトークは、カフェでデザートを食べながら、ダンジョン攻略の必要品を買うのを忘れて、延々と続いていくのだった。

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