46 誕生日パーティ③ ~3人の魔族~
「エマ様!!!!」
暗転が消えて、会場の明かりがついた。貴族たちは周囲を見渡しながら状況の把握に努めた。その時にフィブラーとアルハは自分たちの主であるエマがいないことを瞬時に気付き周囲を注視し叫んだ。
「エマ様!!!!エマ様はどちらに!!??」
フィブラーとアルハがどれだけ叫んでもエマはいない。
それに気を取られていたのですぐには気付かなかったが、よく見たらノエルも周囲にはいない。
「アルハ?ノエルはどこにいる?」
「いえ、わかりません。フィブラーさんが、ノエルをエマ様のお傍に行かせて、エマ様の横にいるところまではわかりましたが、会場が暗転した後は二人とも消えてしまったかのような・・・?」
「誘拐だ!!!!」
フィブラーは、大声で叫び、主催者のビリクイカ伯爵に援助を求めた。
「ビリクイカ伯爵閣下、これは大事でございます!エマ様が誘拐されました!至急救援の手配をお願いいたします。」
「わかった!わが伯爵領でこのような事件が起こったのであれば、これは大事故である。衛兵士たちよ!エマ令嬢を探し出せ!もし誘拐であったならば、まだ遠くへはいっていまい!伯爵邸内を探せ!伯爵邸につながる道を全て封鎖しろ!犯人を逃がすな!」
「「「「はっ!!」」」」
と伯爵の私兵たちは、機敏に指示に従い捜索活動と封鎖包囲を始めていった。
フィブラ―は、アルハを伴い会場外に出ようとすると兵士詰め所より、ちょうどクリシュナ兵士団長が飛び出してきたところだった。
「フィブラー、何が起こった?!会場内がパニックになっているぞ!」
「エマ様とノエルが誘拐されました!今ビリクイカ伯爵閣下には捜索と道路封鎖をしてもらっています!」
「な・・・なに!!!???これはまずい!!!!エマ様には敵が多い!くそ!このままでは、エマ様のお命が!!!」
冷や汗を掻きながら、クリシュナ兵士団長は他の兵士に捜査に入らせてもらう許可と外で待機している兵士たちに街の捜索をするよう伝令を指示した。兵士団長本人はビリクイカ伯爵アイロに状況説明を申し入れに行くことにした。
◇
「さぁ、ここら辺まで来たら大丈夫か」
そう呟いてエマを攫った魔族の女は、周囲を確認した。移動途中でエマに睡眠草を嗅がせて意識を奪っておいたので、エマは後3時間かは熟睡している。魔族の女は賢魔第22位のユートン。瞬間移動を得意とし近接戦や中距離戦、遠距離戦でも、一瞬の移動により距離無視の攻撃や防御ができる。また今回のような索敵や隠密行動にも特化している賢魔であった。長髪の赤く、肌は黒ずんだ青色。瞳は魔族の特徴の赤色で身長が170センチと大柄の女だった。
集合地点には2人の女が待っていた。見た目からしてエルフではない者たちだ。赤髪の女、青髪の女、そして、白髪の女。皆大柄で、ほっそりとした女たちであった。薄い服装を着ており、皆ノースリーブのシャツにホットパンツという出で立ちだが、異様なのは腰辺りに短剣や棍棒そして一人は背中に棍を装着している点だ。このエルフの世界では、魔族か警察以外の武装は禁止されている。なので普段から武器を見ることはあまりない。武装をしている様子を見ると、魔族かエルフの警察の可能性がある。そして髪の色が金髪ではなく、また肌の色が青黒い様子を見ると、魔族であることが分かる。ノエルは人生で初めて魔族という存在を視覚に収めた。「あれが魔族なのか。なかなか強いだな」そう心で呟いた。エマを攫った魔族の女たちから約200メートルぐらいのところで、今ノエルは潜伏している。誘拐犯は直ぐにエマを殺すことはない、と判断して聴覚と視覚を強化して状況把握に徹することにしたのだ。
「ユートン、この女で間違いないのか?」
「ムラカ派の貴族を口論でコテンパンにして、魔族批判をしていたからこの女で間違いないわ、メイユ。この女がエマよ」
「じゃあ、さっさと、始めましょうか。リーファ。やってしまって」
「了解―♪」
リーファと呼ばれた白髪の女がエマの両肩に触れた。すると、リーファがエマの姿に変わった。
「リーファの変化のスキルは本当に凄いわね。本当にこのエマという女そっくりなっているわ」
「私は、エマ・ル・ガルーシュ。ガルーシュ伯爵次女。ガルーシュ伯爵領において外交担当をしております。お見知りおきを」
リーファは優雅にカーテシーをして、挨拶をした。
「いいね!たぶんいい感じだと思うわ」
「じゃあ、僕はこの画像送信魔法具で、エマの姿のリーファで、近くの村を殲滅しているところを撮ろうか。これでガルーシュ伯爵家を潰す事ができるね」
「ここの近くの村は見つかっているの?」
「あるわ。ここから西に5キロほどいったところに、少し大きめの村があったわ。そこにしましょうか」
「メイユは、エマ本人を連れてB地点で待機ね。終了次第、B地点で合流するわ」
「じゃあ、またね」
(まずい!散開する!)
そう思った俺は、一足飛びで彼女たちの目の前10メートルほどに着地した。
「うおおおおぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!」
俺は、叫びのスキルを使い三人の魔族の注意を引いた。これでこの3人はこの場に釘付けになる。
まさか突然、どこからともなく正体不明の人物が現れ、叫び声を上げているのに驚き俺の方向を見た。
「な、なに!!??こいつ!?めっちゃキモイんだけど」
「なんだこいつは?仮面を付けて、礼服を着ているぞ」
「仮装パーティから出てきた、変態貴族って感じ、じゃないかしら?」
めちゃくちゃ言ってくるな、と心の中で突っ込み、俺は3人の魔族を睨みつけた。
「どうも。そこのお嬢さん方。申し訳ないがそこの令嬢を俺に渡してくれないか?パーティから突然抜け出されて、会場が大騒ぎなんだ」
3人は警戒心を露わにして、それぞれが構えた。
ユートン「お前は何者だ?」
ノエル「いやその質問に答える奴は基本いないと思うな。俺の要求はそこの令嬢だ。返してくれたら苦しまずに殺してやる。返さないなら死にたいと思うまで嬲って殺してやる。どっちがいい?」
メイユ「君、なかなか頭のおかしい子だね。どっちにしろ殺すっていうところのイカレ具合が半端ないよ・・・。ん・・・。ちょっと待って・・・」
うーん、と唸り出すメイユ。あ!と何かに気付いたように、俺をギロリと見た。
「仮面を被った、150センチぐらいの少年の様なエルフ。そして、その執事の様な恰好・・・。その恰好で、さっきの会場との発言なら、会場にいたエルフだよね?ここまでユートンに尾行できていた実力と、エマ令嬢を取り返したいと要求を考えると・・・、君の事をたぶんわかるよ」
ノエル「ほぉ、俺も有名になったものだな。俺が誰だか分かるのか?」
メイユ「僕は情報担当にして発明家なのだ。そうだね~。エマ令嬢の護衛。最近、放った暗部も殺されているし、それ相応の実力を持ったガルーシュ伯領の小さな仮面のエルフ。ここまで情報が集まれば、該当者は1人しかいないよ。バカでも分かるよ。君は冒険者ニコじゃないかな?確か、冒険者ランクはCだったかな。身の程知らずだな~。エマの護衛だったらもうちょっと高ランクの冒険者を雇うべきだと、僕は思うけどな~。ガルーシュ伯も見立てが甘い」
なぜ、これほどの少ない情報で、冒険者のニコまで辿り着いたのか。ノブは軽率にも絶句してしまった。
ノエル「・・・」
メイユ「ご名答ね。あなたも甘いわね。自分の身元ぐらいしっかりと隠しておかないと、隠密護衛の意味がないよ。特徴があり過ぎるのよ。まぁ、ここら辺は経験値の差かな、ニコ君。なんで分かったか、って雰囲気だけど、僕たちはガルーシュ伯爵領に関しては、かなり綿密に調べているんだよ。おっと、あんまり言う話じゃなかったかな」
ニコ「なるほど、なかなかキレるお嬢さんだな」
リーファ「あなた、相当頭がイカれているわね。冒険者が魔族とやり合って良いと思っているの?バカの相手をやっている場合じゃないわ。まぁいいわ。あなたの相手は私たちじゃないの。メイユ、こいつの処置を任していいかしら?私とユートンは先に、村に行ってくるわ」
ユートン「じゃあ、私がエマ令嬢を運ぶわね。じゃあ行きま・・・?」
メイユは、エマ姿のリーファとユートンが、そう言って、なかなか出発せずにいるのを訝し気に思った。
メイユ「どうしたの?もう行ってもいいよ。このイカれたエルフはこっちで対処しておくから」
ユートン「違う。行けないの。おかしい。意識としては任務の遂行をしなきゃと思っているのに、体と感情がどうしても、このエルフを今、殺さないといけないと私に訴えてくるの」
リーファ「私もよ。この羽虫を殺さないと気が済まない気になってくるわ」
ニコはニヤッと笑い言い放った。
「そうなんだ。実は、俺がさっきやった雄叫びだがな、これは非常に使い勝手の良いスキルなんだ。叫びというスキルだが、これを発した時周囲はどうしても俺を殺したくなるんだ。タゲ取り、というだが、知っているか?」
ユートン「ベラベラベラベラとイラつくゴミだ!!!そんなに死にたいなら、殺してやるよ、ニコ!!!!」
ニコ「あぁ、殺してくれ。俺は基本壁役だから防御は結構できる方だぜ。早くしないと、お屋敷の連中がここに来て、お前たちを捕まえるかもしれないな。まぁその前にお前たちを殺してやるがな。なんとなくお前たちのしたいことは分かっている。エマに変装して村の殲滅だろ。胸糞悪い奴らだ」
リーファ「な!!??何故知っている?!」
ユートン「貴様、そこまで分かっているなら、もう殺すしかないな。自殺希望者。今ここで即殺す」
メイユ「ははははは!!!!いいじゃん!骨のあるやつが最近いないから退屈していたんだよ!僕の21位の順位もなかなか上がらないから、イライラしてたんだ。ニコ、お前はここで殺す」
ニコ「やれるものならな。」
ユートン「言ってろ!!!」
◇
私の名前はユートン。メイユとリーファを伴って、今回エマ・ル・ガルーシュを誘拐する任務を預かった。私は賢魔22位、メイユは21位、そしてリーファは20位だ。よく三人で任務に着くことが多い。「謀略の三悪女」なんて、魔族では言われている。迷惑な話だ。まぁ、それぐらいはっきり言って、私たちのスキルは凶悪だ。私の瞬間移動でどんな要人も誘拐できる。今までも何人も連れ去ってきた。そしてリーファは変化を使い、その要人になりすます。連れ去られたと思った要人が還ってきたが、まるで別人のような振る舞いをし、人々を惨殺していく。そしてメイユ。彼女は魔法具を作製する天才で、彼女が考案した画像送信魔法具により、惨殺をリアルタイムで画像送信をして証拠として周囲にその要人の異常行動を証明。物理的にも社会的に精神的にも要人関係者を抹殺していくのだ。
何人ものムラカ派、サニ派の貴族どもまたヒト族も含めて嵌めてきた。今回もいつもと同じような手口でガルーシュ伯家を謀殺しようと思ってきたが、ガルーシュ伯爵領地の冒険者のニコとかいうガキがエマの護衛をしており、私たちの邪魔をしようとする。こんなことは初めてだ。どうやって私たちのところまで来れたのか。またどうして私たちのやっていることが分かったのか。とにかく、こいつに知られているようであれば、この計画は破綻する。どうしてもこいつはここで殺さないといけない。助かるのはこいつが壁役であり逃げるつもりはないとのこと。他の連中が来るまでに殺せばいいとのことだ。簡単なことだ。
私は腰の短剣に魔力を乗せて、ニコを襲撃した。
魔力全開で突進をしてニコを突き刺しにしようと思ったが、突進を紙一重で躱されてしまった。
(こいつ、速い!)
まさか避けるとは思わず、そのままの勢いでこいつの後方へ飛んで行ってしまった。
その後エマ姿のリーファが背中に背負っていた長い棍を振り回しながら近接した。
ガン!!
ニコが防御の為に体の横で構えていた右腕を横払いした。その勢いで奴を横に1メートルほど飛ばした。そこにメイユは、正面から突っ込んでいき、1メートルほどの巨大な棍棒を一本ずつ両手に持っていたが、左手の棍棒を上から振り降ろしてニコの頭を直撃した。
「これは特別製よ!当たったら爆発するからね♪」
ド―――――――ン!!!!
地面にニコの頭が激突し、地面には蜘蛛の巣上に罅が広がった。
「あれ?もう死んだかな?」
周囲に焦げたような臭いが漂っていた。ニコはなんとか上体を起こして、仮面の具合を確認した。魔力で守っていたため、ダメージはない。ニコはまたメイユを見据えた。
「まだだな。魔族というのはこんなものか?」
「減らず口を!!」とメイユは振り上げていた棍棒を立ち上がったニコの側頭部を打ち付けた。また爆発が起こりニコを3メートルほど横に吹っ飛ばされた。
ゴロゴロと転がるニコに対して、私はニコの背中辺りに短剣が飛ばした。
ガン!!!!
短剣はニコの魔力防御の為に刺さることはなかったが、衝撃で前に突っ伏す形になった。
そこへ横腹をリーファの棍が高速で打ち込まれた。ゴン!!!と衝撃音が周囲に響いた。ニコは腕を折りたたみ横に構えて体と頭を守りながら、嵐のような私たちの連撃を耐え続けた。
上から棍棒が飛んできて頭を直撃。正面から喉を棍で突かれ短剣で腕を切り刻まれていく。
はっきり言ってニコの逃げ場もなければ勝機もない。反撃をする暇もないぐらい激しい攻撃がニコを襲っていた。
「さすが壁役だな。この連撃で立っている奴がいるなんてな」
私は正直、驚いていた。これほどの攻撃を受けきれる冒険者がガルーシュ伯領にいるとは。賢魔からの攻撃の一つひとつは、普通一撃必殺だ。一撃でも耐えていればそれだけでも驚嘆に値するが、こいつの場合は10分ほど私たちの無数の攻撃を受けながら時には避け、時には受け、時にはいなし、ずっと耐え続けている。何を狙う?おそらくそれほど、後詰めの奴らを信頼してるのか。時間を稼げれば生き残れると思っているのか。愚かな。
しかしその膠着状態も、もう終わりだ。こいつの回避パターンは読み切った。
私の短剣がスルっとわき腹に入り、グサッとニコの体を貫いた。ちょうど防御が薄くなっている場所に薄くなるタイミングで刺してやった。柔らかい肉の感触が手に伝わった。
(いいね!この感覚!)
「グハッ!!」
上体が折れて横からメイユの爆炎棍棒で顔面を殴られ、2メートルほど飛ばされ倒れていた。
「これほど私たちの猛攻撃に耐えられる奴がいるとはな。大した奴だ。ガルーシュ伯領の冒険者も大したものだな」
横を見るとエマ本人はまだ寝ている。能天気な奴だ。こんな状況下でも自分の事を死を賭して守ってくれる奴が死ぬのを知らずに寝ているとはな。笑けてくる。まぁ私が眠らしたんだが。起きてきた時の絶望の顔を見るのは、また心地よい。
「う・・・く・・・が・・・」
何かを唸っているニコのところに歩いていき、蹴とばして仰向けにさせた。血が流れていない。何かの魔法で治療したのか?もう一度、腹筋辺りを何度も刺した。柔らかい肉が裂ける感触が手に伝わってくる。十数回ぐらい刺し終わり、ニコも絶命していると思ったがまだ生きている。本当にタフな奴だ。
しかし不思議だ。仮面が全くダメージが無い。ヒビもいっていない。自分を守るより仮面を守っているのか?意味不明だ。
息をしているのを見たメイユは、仰向けに倒れているニコの胸部に、思い切り空中に跳ね上がり、爆炎棍棒を振り上げて叩き込んだ。「いっけーーーーー!!!!」
ド―――――――ン!!!!!
衝撃が周囲に伝播した。ニコの体が地面にめり込み地面が割れた。
不思議だな。まだ体の原型が留まっている。本来ならこれ程の攻撃を立て続けに受けているのだ。体は今の段階で爆散していてもおかしくない。
「う・・・う・・・エマ様・・・」
私はニコの胸部を思い切り踏みつけた。
「グハ!!」
「まだ意識があるのか?頑丈な体だな。驚異的だぞ。お前が守っているエマは安心しろ。今は眠っているだけだ。まぁリーファがエマの姿になり村を殲滅しているのを人々が見たら、ガルーシュ伯爵は滅亡だな」
「ど・・・どうやって・・・知らせ・・・るんだ。し・・・証拠はないぞ・・・ぐっ」
メイユは横から会話を聞いていて笑った。
「はははは!そんなことを知ってどうするんだ!!いいね!冥土の土産に聞かせてやろう!僕の開発した素晴らしい魔法具を!!!こいつだ。画像送信魔法具っていうんだ。すごいだろ?!映像をもう一方の魔法具に送ることができるんだ。こんな風にね!」
そう言うと、この今の戦闘を遥か上空から映像を撮っている映像が、3メートル四方の映像で空中に現れた。何かの魔道具で映像を空中に投影していた。
「今ここら辺り5キロぐらいの方面を上空か映像を撮っているんだ。だから、お前が今やっているような、時間稼ぎをしても当分は誰もこの場所には来ないよ。残念だったね」
「な・・・にっ!?」
メイユは嗜虐的笑顔をしてニコを見た。
「それそれそれそれ!!!それが見たかったんだ!!お前さっきから生意気にいきがっていたが、澄ました感じが癪に触ってたんだよ。やっと状況が分かったか!?お前は自分が思っている以上に絶対絶命なんだよ。救援は来ないよ!」
「く・・・お前らはいったい・・・何が・・・したいんだ・・・」
メイユは笑いながら言った。
「エルフ族はバカだからなー。エルフ族国を魔族がサポートしているなんて、夢見ているだろうが、そんなことはない。この国はもうすぐ滅亡する」
「お・・・おま・・・えたちがムラカ派をけしかけてサニ派を・・・滅ぼさせる・・・のか?」
「全然違うよ。お前達は何も分かっちゃいない。はははは。実はな、超高純度魔鉱石が見つかったんだ。それを求めて、僕たち魔族はエルフ族国を強襲したのさ」
「メイユ!!!言い過ぎだ!」
「かまやしないよ、ユートン。どうせこいつは死ぬ。僕はあのムラカ派の馬鹿さ加減とサニ派の必死さが滑稽でね。時にはこういうことを暴露して、こいつらの凍りついた表情を見るのが楽しみなんだ。まぁ固いこと言わないでよ」
「な・・・なんだ・・・ちょう・・・こうじゅん・・・ど?」
「超高純度魔鉱石だ。教えてあげようか?この大陸を破壊し尽くすぐらいの量の魔力がこもった魔鉱石のことなんだ。凄くない?一度は小さいのが見つかったんだけど、前の戦役の時は、サニ派に掠め取られちゃったんだ。残念だったよね~。その小さな魔鉱石の為に、魔族は後退せざるをえなかったらしい。あの威力は強烈だったらしいよ。この200年間必ず同じものが見つかると信じて探していたんだけど、それがやっと見つかったんだよ!それも以前のよりも、はるかに大きいことが期待されるんだ!これが見つかることを求めていたんだ。あれがあれば、もうエルフ族を維持する必要はないんだ。皆殺しだね」
「そ、そんな・・・もの・・・のために・・・お前・・らは・・・」
「まぁそういうことでね、この大陸は魔族がもらってあげるよ。エルフ族の悲哀もない。ヒト族の悲嘆もない。あの忌々しい獣族も全員獣化さして家畜にしてやるさ。全て無に帰す。そしてこの世界は魔族が支配する。ちょうど君たちが望んでいた世界じゃないかな?もう戦争はない。安らかに眠ってね」
「そ、それは・・・ど、どこに・・・あるんだ?ま・・・まさか・・・ガルー・・・」
「お!まさか、分かるの?頭いいね~。そうだよ、ガルーシュ伯爵領にあるんだ!名前はウォルタという一都市の近くらしいけど・・・」
「メイユ!!もういい!いい加減にしろ!冷や汗が出てくる。お前の発言は、国家機密事項だ。これ以上言うな!」
「わかったわかった。ユートンも固いことで。まぁ、そういうことだよ、ニコ君。もうこの国での魔族の用事は終わったんだ。エマ君を使って、ガルーシュ伯爵領を潰すからね。もうこれぐらいでいいだろ?僕的には君がまだ生きているのが、不思議なぐらいなんだけど。この爆炎棍棒の出力を最大にして、と。さぁ、あの世で魔族の繁栄を見届けてくれたまえ。死んじゃえーーー!!!」
爆炎棍棒が最大火力で爆発し、一体が砂塵で舞い飛んだ。
「ゴホゴホゴホ!!メイユ、やり過ぎだ。もう死体も残らないんじゃないのか?私もろとも吹き飛ばすつもりか?!」
ユートンは、メイユを窘めた。
「ゴホゴホゴホ!!もー、私の服が汚れたんじゃないの?洗うの面倒なのよ」
リーファはエマの姿のまま、埃をパンパンと叩きながら落としていった。
「ごめんごめん。あいつ凄い頑強でしょ?しかとしぶとくずっと話してくるの。なかなか爆散させられないから、ちょっと高出力で叩いちゃった。ユートンは避けると思ったから強襲したんだ。実際大丈夫だったでしょ?じゃあ、行こうか」
「たく、メイユは・・・」とユートンは恨めしくメイユを見た。
そう言いながら、3人はそれぞれの方向へ移動していこうとした。
その時、3人を呼び止める声が後方から聞こえてきた。
「ちょっと待てよ。まだ終わってねーよ」
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