37 新たなメンバー

サリア姫は驚きの表情の勇者パーティを見て、説明を続けた。


「この国において現在、攻撃・防御・回復ができる自己完結型の少人数ユニットは、この勇者パーティしかありません。また攻撃力、防御力、索敵能力、回復能力にしても今の勇者パーティはこの国内においても断トツの力があると兵士団より聞いております。この乾坤一擲の勝負を春日様の勇者パーティの皆様に託したいと思っておりますが、いかがでしょうか?」


春日は喜色満面の笑みで、サリア姫の要請を快諾した。

「もちろんだ!!世界の覇者になれる、この奇跡のような機会を俺はずっと待ち望んできたんだ。喜んで引き受けよう!」


三原は警戒感を露わにしながら、春日を窘めた。

「待って!そんな簡単な話じゃないはずよ。分からない事があまりに多過ぎるわ!まずその超高純度魔鉱石があるのかないのか。これも不明確との話だわ!またあったとしてどう運ぶのか。世界を変えるような魔力の塊よ。そんな危なっかしいものを触ったり、運んだりする方法があるの?それに確保する上で、何か取得方法において懸念点はないのか。その魔鉱石がある奈落は、どこにあるのか?どうやってその奈落の底まで到達するのか。またその奈落の底に到着できたとして、どうやってその最下層にまで降りるのか。まずはエルフ領土へは基本行けないはずが、隠蔽魔法技術で行けるようになっているという話だけど、そんな簡単じゃないはずよ。有史で交易がなかったぐらいなのだから。実際どうなっているのか。今の説明だけでは、分からない事だらけなのよ。そんな簡単にOKは出さないで!!!」


三原は顔を赤くして一気に反論を捲し立てた。


春日は肩を竦め、ため息を吐いた。

「美幸。虎穴に入らずんば虎子を得ずだ。この戦争自体がリスクの塊のようなものだ。リスクに対する危機感は今更だ。リスクヘッジはする。しかし時代を変える手段はいつも命懸けさ。美幸の話は聞く。しかし最後に決めるのは俺だ」


三原は春日をキッと睨んで言った。

「そうね。ここにいる時点でもう博打の様な選択だもんね。それは理解しているわ。けどもこの話。もし虎の穴に入って竜でも出てきたりしたらどうするのよ?私たちで対処はできるの?」


サリア姫は二人のやり取りを聞きながら、ボソッと答えた。

「竜はいる可能性は高いです」


「「「「「えっ?」」」」」

5人は驚きながらサリア姫の次の言葉を待った。


「竜がいるとは断言できませんがダンジョンの最下層は魔素の濃度が最も高いのです。その濃度によって魔物の凶暴性は更に増していきます。その凶悪な力の奔流に耐えうる種は限られています。竜種か巨大種かです。もちろん他にもいるかもしれませんが、最終的に力を蓄えられる器を持つ魔物は少ないようです。なので竜種はいる可能性は実は非常に高いのです。300年前は最下層には竜種がいたようです。様々な竜がいたようで火竜、土竜、水竜、雷竜、光竜、闇竜など全ての属性の竜がいたようで、まさに春日様のような全属性に耐性がある方にとっては最適の敵であると思います」


春日は歓喜で小躍りをするように声を弾ませた。

「ほら、俺の力が最も適した敵がいるのがこの奈落の底なんだよ。俺こそが世界の覇者になるべく生まれたようなものだ。やっとこのような機会が巡ってきたな」


サリア姫は少し思案気に5人のメンバーを見ながら話を続けた。

「この隠蔽魔法を埋め込んだタリスマンでございますが、それが現在王国には8つ保有しております。魔法陣をタリスマンに固定させるには、非常に高度な魔法技術を使いますので大量生産はできないのです。それが交易ができるほど人の往来ができない理由の一つでございます。またエルフ領へ行くのはそもそも命懸けでございます。力の無い者がルートを通ると途中で襲われる魔物の餌となるでしょう。今の勇者様方なら大丈夫かとは思いますが。今回全てのタリスマンを勇者パーティにお渡しいたします。現在勇者第一パーティが5名おられると思います。1名は諜報部隊員に案内役として派遣いたします。そして2名をこちらから選定し新たに第一パーティへ招待したいと思います」


皆は少し不安気にサリア姫の説明を聞いていた。危険な道、タリスマン、そして新たなメンバー2名の紹介。


春日だけはワクワクしながら聞いていたが、他のメンバーはただ不安でしかなかった。


(誰を呼んだんだ?)


サリア姫「そろそろ着かれることかと思いますが・・・」


コンコン


ドアへのノックが個室に響いた。


「お連れ様がお見えになりました。ご案内してもよろしいでしょうか?」


サリア姫は明るい声で「どうぞ」と答えた。


ドアが開き、2人の人物が個室に入ってきた。


三原「あ、あなたたちは?!」

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