30 命乞いをした奴を助けたことはあるのか?

爆発が収まり爆心地にいた、俺とエマの服はボロボロになっていた。俺の服はもう下半身しか残っていない。エマは髪の毛がチリチリになっており、上半身と下半身の服はほぼ無くなっていた。エマは隷属の首輪の強烈な精神的圧の為であろうか、それとも今の爆風の衝撃であろうか気絶していた。一瞬死んでしまったかと思ったが、口元に耳を近づけるとスースーと音が聞こえてきたので、死んではいないようだ。あの万癒の果実のおかげで、完璧の彼女の体は回復していた。俺の体も同様であるが。


爆発の余燼が大気中に漂っていた。俺たちは大丈夫であったが、他の奴らの被害状況はどうなのだろうか?死んではいないだろうが、さっきまで視認していた200メートル先の兵士団は誰もいなかった。爆風波でみな遠くに飛んでしまったのか。


そう思い、エマを地面に下ろした。周囲の地面を見渡しても、セバスの死体は見当たらない。葬ってやりたかったがな。本当に良くしてくれた。もし違う形でセバスと出会っていれば、俺のじいちゃんぐらいの歳だったから、この世界のじいちゃんのような存在になっていたと思う。信念に準じた、本当に稀な人を亡くした。


索敵をすると兵士団や貴族も生きているようだった。約500メートル以内には点在していた。それが俺の近くに寄ってきて、どんどん円状になり、俺とエマを包囲するような形になってくる。


ケンスは埃まみれになり、かなり後方に吹き飛ばされていた。モクモクと爆心地付近から煙が立ち上り、そこら辺りに余燼くすぶるように、火が燃え盛っていた。その様子を見ながらケンスは、ガンガンと地面を蹴っていた。


「ゴホゴホゴホ。◇■〇◎~=‘&◎#$●%&■〇◎~=‘&◎’◎+*‘⊡🔹△◁▼◯◎■〇◎~=‘&◎▩▭△◢=~¥@!!!」

(本当にしょうがない奴だ。まさか。隷属の首輪を取り除こうとする愚か者が存在するとは。本当に。残念だ。エマ令嬢がもう跡形もなく無くなってしまったかと思うと、あぁ・・・、本当に残念だ。本当に残念だ!!!!)


とケンスは癇癪を起して怒っていた。


「おーい。俺はここにいるぞー」


と俺は貴族や他の兵士たちにも魔力で声を送った。ビクッとした反応が返ってきた。


「《:¥》@$◎%&‘|~=◆▩▯◢◄∇◎◔$%&?#$%&IO!!!

(な、なんだと・・・?何故生き残っている・・・・?なぜ生きている・・・?あの爆発は、城一つ爆破するぐらいは容易な威力なのに・・・。しかも・・・・・あれは!!)


謎の人物の下には金髪の少女が横たわっていた。死んでいるのか?生きているのか?しかし、この謎の人物が生きているのなら、何かのスキルで自分たちを守り、エマも死んでいないのかもしれない。


「◄∇@■〇◎~=‘&◎#$●%&$◎%◎◔?!」

(貴様。万死に値する。エマ令嬢を誘拐し、それに飽き足らず、殺そうとするとは!何回殺しても気が済まない!ダーチ!ダーチはいるか?!)


「$%&!」(へい!)

ケンスのすぐ横にダーチは現れた。


「∇@=‘&◎#◎+*‘⊡🔹▩!」

(奴を殺して、エマ令嬢を奪還せよ!)


「$=#=$&$*+#=$●〇▽▲◇」

(いや、旦那。多分だが、ここは撤退の一手だと思いやすぜ)


「#&$$*#_?$‘?#>#‘$=$’&$#=$#IP%I#~#$*!!」

(何故だ?!お前には多額の金を払っているんだ!ここで役に立たなくて一体、どこで役に立つのだ?!!!ふざけるな!!!!)


「~?‘◎~=‘&◎#$●%&’◎+*‘⊡🔹▩▭&◎#◎+*‘⊡🔹$‘?#>#‘$=$’‘#{‘〇▲$?$+◇❖▧◥ ‘$?$#$●%&’◎+*‘⊡🔹▩▭&◎#◎+△=$*#‘?$△▲▽!」

(いや、俺への報奨金は、魔獣暴走までだ。あの謎の人物の捕縛までは入っていないぜ。奴はヤバい。俺の脳内の警報は先ほどから鳴りっぱなしなんだ。どう考えても、異常だろ?あの爆発の爆心地にいても死なないんだ。早く逃げましょう!)


「#{‘〇▲$?$+◇❖▧◥ ‘$?$#$●%&’◎+*‘⊡}!」

(バカ者!目の前にエマもいるのだ!逃げられるわけないだろ!)


「すまんが、エルフ語で色々と相談している最中に申し訳ないが、全員ここから逃がすわけにはいかないんだ。ここで全員死んでもらう。俺の力を見た者は一人として生かしてはおけないんだ」


気付けば、ケンスの真横に謎の男が立っていた。


「●◆▲〇#$%&>@*+=~!!!!??」

(き、貴様!いつの間に!いや、その顔、耳、身体的特徴!貴様はヒト族か!?)


ドス!!!!


蛙エルフの腹部に強烈な一撃を加えた。地面に屈して、まだ叫べる程度の余力を残させておいた。


「ぐぐぐぐ・・・・▲〇#+#=$●〇$%&>@*!!!!!」

(何をしている!!??こいつを捕えろ!!!)


ダーチはノブが現れた時点で、もう既に逃げ始めていた。


「いや、逃がさないって」


ダーチの真上に、ノブは現れて、ダーチの背後から延髄蹴りを食らわした。


グチャッ!!!


ダーチは必死で魔力で全身を覆っていたので、蹴りの衝撃で首がへし折れないように防いだだけであり、明らかに致命傷になっていた。もう死ぬ予感がする。


「あ・・・、ぁああぁぁぁ・・・・、ま・・・、まって・・・・ぐで!!!おれは・・・ただやどわでだだげ・・・・」


後ろから馬乗りになっていたノブは、ダーチの首に一撃を加えた。ダーチの首に手刀が通った穴が空いていた。ヒューヒューと喉から音がして、動脈が損傷したのか、血が間欠泉のように吹き出た。


「!!!!!」


兵士団の間で衝撃が走った。兵士たちのミッションは『エマの捕獲』だったが、今はこの奇妙なヒト族に注意が向き、ヒト族の討伐にシフトした。


(良かった。さっき、この蛙エルフを殺してしまっていたら、蜘蛛の子を散らすような勢いで、兵士たちが四方八方に逃げてしまっていただろう。一人でも生き延びると、その時に俺の情報が洩れるしな。俺の情報は、これからのエルフ国での俺の動きに対してマイナスでしかない。『相手に認識させずに、戦闘に入る』これが戦闘の極意だろ、じっちゃん!!)


一斉に100名規模の兵士たちが俺に襲い掛かってくる。周囲360度、どこを見ても兵士たちだ。全員を俺の所に集めて、群衆の後方から俺の状況を察知させずにやっていくか。


「やめてくれ!!殺さないでくれ!!」と俺は叫んだ。


その死の乞いの叫び声に逆呼応して、嗜虐的な笑みを浮かべながら、一人の兵士が上段からの斬撃の格好をして突っ込んできた。俺は、振り降ろされる剣を避け、剣を持っている手を掴み潰した。


グチャッ!!


「ヒッ」と叫ぶ前に喉を潰した。「お・・・お・・・おぉ・・・」


殺すのは後でもいい。今は、この規模の兵士団を殲滅もしくは無力化すればいい。


横から来た3名の兵士の胸や腹に手刀を浴びせ、貫く。「おえぇ!!」と叫んでいたが、しょうがない。俺も同様に「おえぇぇ!!!」と叫んで、お腹を押さえておいた。周囲としては、俺がやられているのか、どうなのかが判別がつかなくなるだろう。


前から4名、左から4名、そして後ろから2名の兵士が殺到する。一人ひとり丁寧に、首を落としていった。


「✕〇%&+*#$@+*◆¥!!!」(首を狙ってくるぞ!!!)


一斉に首辺りを守るように、自分たちの武器を構えて襲ってきた。どうやら首を狙っているから気を付けろ、との指示を出したんだろう。別に首だけを狙っているわけではないだが。


正面から来た3名の兵士の攻撃を掻い潜り、横から中段蹴り。全て接触部位は体から抉り取り、致命傷となる。一人は上半身と下半身が離れ、衝撃でもう2名の兵士は後方に吹っ飛び戦闘不能に陥った。巻き込まれた後ろの兵士たちも巻きぞいとなって、同様に大きく負傷していた。次は後方から来た兵士が2名いたので、同時に上段からの攻撃をしかけてきたため、その間に体が入るように半身になり避ける。一人には胸部への裏拳、もう一人には裏拳からの反動を利用して、腹部へのフックを食らわした。一撃一撃が強烈な衝撃であったので、体の部位がそれぞれ破裂していく。集まってくる兵士たちをゴミのように千切っては捨て、千切っては捨てていった。円状に俺を囲んでいた兵士たちがやっと今の状況の異常性に気付きハタと立ち止まった。


(さぁ、困った。襲ってこないと、全員の殲滅ができない)


俺の周りは、死体の兵士たちか蹲り、痛みで悶えている兵士たちで溢れていた。だいたい30%ぐらいの戦力が無くなれば、撤退の機運が高まっていく。撤退されては困る。なので全体の兵士たち、戦闘状況を掴ませないように立ち回っていたが、だんだんと死体の数が増えるにしたが、兵士たちが冷静に考え始めてしまった。だいたい今で50%ぐらいは減らしたか。あの蛙エルフ、何か号令は無いのか??!!


「%&’◎+*‘⊡🔹▩▭&◎#!!」

(まだか!早く仕留めんか!)


と思ったら、何かの指示をしてくれた。兵士たちが逃げることなく、こちらに向かって襲い掛かろうとしている雰囲気だ。どうやら、再び攻撃の檄を飛ばしたようだ。


(助かった・・・)


状況を間違いなく把握していない愚策だが、基本こういう軍隊組織のルールは上司の命令には服従義務があるのだ。もし義務を怠った場合は後に懲罰裁判が行われ、どっちみち殺される。この組織の規律の浸透具合がこの次の兵士の行動で分かる。どっちだ。


と心で思うと、次々に兵士たちが襲ってきた。


「おぉぉぉぉぉ!!!!!」


と周囲の兵士たちは一斉に襲ってきた。さすがに戦力の逐次投入はせずに、一斉に襲ってきたのが頭いい。しかし、それが俺以外であればの話だが。俺としては全員が襲ってきてくれることを望んでいたので、この兵士たちがしっかりと頭を使い攻撃をしてきたので、助かった。


その場で全員の斧や剣や槍などを俺は自分の体で受けた。


ガン!バキ!ドン!ドカ!!!!!


どれ一つとしてダメージを与えるものはなかった。驚愕の目をした兵士たちは、攻撃を仕掛けたことを後悔した。武器さえ当たれば何とかなると思ったのだろう。さっきから俺は、回避しながら攻撃していたからな。しかし、俺の防御力はあの巨大飛び魚でも、巨大鳩でも傷一つ付かないんだ。


お前ら如きにやられるか。


この状況はまたその後ろの兵士たちには見えていない。俺はその場で少し跳躍し、周囲をクルッと回って蹴りを繰り出し、全員の顔を抉っていった。両目を抉られたもの。鼻と口部分を抉られたもの。頭自体を抉られたもの。様々だが全員一様に戦闘不能になった。前に倒れる者もいれば、絶叫している者もいた。その円から飛び出し、一人ひとりを殴り倒していった。殴ればその死体は後方に吹き飛び、後続の兵士たちを無力化していく。周囲の10名程を殴り、後方へ飛ばしていくことで、これでだいたい残り30%ぐらいだろうか。後は、これぐらいでいいだろう。


「兵士全員に告ぐ!!!逃げれば殺す。武器を持っていれば殺す。歯向かってくるものは殺す。立っている者は殺す。投降の意思のある者だけを生かす。分かっているだろうが、俺はスキルで一瞬でどこでも移動できる力を持っている。触れる者は全て粉砕するスキルも持っている。まだ試したいならかかってこい!!!」


降伏勧告を行った。これほど兵士の数が減れば、俺の話に声を傾けるだろう。しかし周囲に兵士たちは雪崩のように崩壊し、ちりぢりに逃げ出した。全員が逃げれば生き残れると思ったのか。甘いな。


俺は、水魔法を直系30メートルほどの距離で展開し、生存する全ての兵士のくるぶし辺りまで水を張った。そして、その水分子の振動をゼロにした。絶対0度だ。兵士たちの足元が止まり凍傷が始まった。砕けない氷が突如、足元に現れたのだ。パニックが起こった。エルフ語で叫び声がそこら中から聞こえている。阿鼻叫喚の地獄絵図だ。中には無理やり動こうとして足首が砕け、氷の上に上体が落ちた者もいた。最悪なのはそこからまた凍傷が始まり、自分の体に氷が広がる様を見ながら絶命する者もいた。それでも水に浸かっていなかった者はまだ走って逃げ続けていた。そんな兵士が数名視認で来たので、そこに向かっていき、首を刎ねたり、胸あたりを貫いたり、胴体に横蹴りを食らわせ、胴体を切断していった。


足の動きが止まっても、もちろん体のほとんどは動けるので、その状態から抵抗をする者を順に体に穴を空けたら、残りの者たちは沈黙していった。死にながら立っている姿は、かなり異様だった。


「もう一度言う!逃げれば殺す。武器を持っていれば殺す。歯向かってくるものは殺す。立っている者は殺す。投降の意思のある者だけを生かす!!」


そう言うと、ほとんどの兵士は投降の意思を示し、武器を下ろしていった。まだ立っている者がほとんどだったので、兵士を縫っていき、どんどん体にどこかの部位に手刀を放ち、絶命させていった。


「投降している!!!命だけは助けてくれ!!!」


魔力を介して、そう叫ぶ兵士たちがどんどん多くなっていった。


「俺はさっき言った!!!立っている者も殺すと!!全員まだ立っているじゃないか!まだ抵抗の意思有りと見て、殺す!!」


「待て!!!座る!!座るから待ってくれ!!」


と言い募る兵士たちを、動きながら屠っていく。


だいたい残ったのは5名ぐらいか。皆、一様に打ち震えながら、泣いていた。


「た・・・頼む・・・こ・・・殺さないでくれ・・・」


その兵士エルフたちも腰を氷につけていることでだんだんと腰から凍っていくことに気付き、パニックを起こしていた。


「待って!!!待ってくれ!!!これでは凍って死ぬ!!死んでしまう!!」


「そうだ。俺は言っていなかったか?俺を見た者は全員殺す、と言っただろう」


「投降した者は生かすともの言った!」


「たしかに。しかし外道と交わした約束を守るほど、お人好しじゃないんだ。死ね」


「き・・・貴様!!!卑怯だ!!」


「お前らは、同じように投降した者たちを全員生かしていたのか?たぶん、違うよな。まぁ、因果応報ってやつだ。諦めろ」


怨嗟の念を吐きながら、兵士たちは凍っていく自分たちの体を見ながら、呻きながら絶命していった。


蛙エルフは氷魔法を逃れ、この戦場の端の方で蹲っていた。たぶん、死んだふりをしているんだろう。見逃されるか、忘れられているのを望むかのようにひっそりとしていた。俺は再び跳躍し蛙エルフの横に降り立った。


「なぁ、自分だけ助かるとは思ってないよな?」


驚いた表情をし蛙エルフは叫んだ。

「儂を誰だと思っている!!下賤の者め!!私はケンス・メ・マーカス子爵だ。私はこの領域を司る警察組織の幹部だ。この儂が音信不通になってみろ!警察組織、魔族たちが、ガルーシュ伯爵の関与を疑い、ガルーシュ伯爵が取り潰しになるぞ!それでもいいのか?!」


この蛙エルフは魔力で自分の意思を俺に伝えてかた。


理論構成が非常に良かったので結構冷静だなー、と素直に感心した。


「それは困るが、どうやって、お前の死亡とガルーシュ伯爵がつながるんだ?」


「当たり前だ。阿呆め!!!貴様が大虐殺を行った兵士たちと私は、ガルーシュ伯爵令嬢の捜索任務を担っていたのだ。そんな儂がいなくなれば、当然ガルーシュ伯爵が疑われるは必定。この国のエルフ全員、また魔族の目の敵となるぞ。しかし解決法を教えてやろう。儂を生かし、エマを奴隷として儂に献上しろ。そうすれば、捜査任務完了としガルーシュ伯爵はこの件には関係ないものとしてやる!どうだ?!お前はガルーシュ伯爵の手の者だろう!ガルーシュ伯爵領が取り潰しになってもいいのか!!!???」


(なるほど、一理あるな)


と少し考え、俺は発言した。

「しかし不思議だよな~。どうしてお前たちは森の中の捜索をせずに、このエルフ居住領域で捜索をしているんだろう?」


「??何が言いたい??」


「言ってやろうか。俺はお前たちの兵士と戦った。そして魔獣たちとも戦った。だから実感として分かるが、今の兵士たちがもしあの魔獣暴走に出くわしたら、全員全滅だな」


「??き、さま。何が言いたい!!!???」


「もし俺が魔族としてだ。お前に捜査を託した。しかし、お前は音信不通となる。魔族の連中はもちろん、お前の行方を探しに行く。お前は、事前にこの森の辺りを捜索している、と捜査場所を伝えているのだろう。その森に来てみたら、なんと森の中に多くの兵士の死体と魔獣の死体があるじゃないか。そうすれば、あら不思議。この『兵士の死体』と『魔獣の死体』の二つのかけ合わせから導き出せる答えは『魔獣と兵士の衝突』だな。俺ならそう結論するな。もう俺たちは2カ月近く森に潜伏していたんだ。時間は経っている。お前の話を聞いている限りだと、お前はかなり直情的な性格をしている。我慢もできない性格なんだろう。だからお前が自分を抑えきれず、部下たちに森の中を捜索しろ、と命令したところで、不思議ではないな」


「し・・・しかし!!!待て!貴様の論点には1つ大きな過ちがある。どうやって兵士の死体が森の中にあるのだ。この草原に厳然とあるではないか?!!!」


「まぁ、見てわかる通り俺は水魔法が得意だ。だから、このように氷を水に直して水の量を増やすと体は水に浮く。そして、それをサーと森の中に移動させると・・・」


と言って100体もある死体を膨大な水の中に浮かせ、森の中に運んでいった。


蛙エルフは、俺の巨大な水魔法の操作に絶句した。


(わ・・・儂は、なんという存在に戦いを挑んでしまったのか・・・)


「さぁ、これで状況証拠は作れた。後は、お前が黙っていれば、問題は解決すると思うが、いかがだろうか?」


「た、助けてくれ!!!!儂は絶対にこのことを口外せん!!神に誓う!魔族に誓う!エルフ全員に誓う!この儂の子爵邸には、多くの奴隷がいる。小さい女から妙齢の女まで、全て揃っている。お前に隷属の首輪の所有権を移す!今やる!すぐやる!!ほら!!!」


と言って、首に下げていたネックレスを俺に渡してきた。そのネックレスを【金属鑑定】すると、たしかに(隷属主人の首輪)と出てくる。


「是非!!!是非!!貴方様にはお分かりになられるのでしょう?さきほどの隷属の首輪を見破った貴方様になら、この首輪の正体がお分かりになるはずだ。私は本当のことしか言っておりません。そして私の子爵邸にお越し下されば、私が今まで集めた金銀財宝全てお渡しいたします。貴方様がヒト族のお方でしたら、ヒト族領への帰還も手配させていただきます!!何卒!何卒!ご慈悲を!!!」


「ヒト族領への帰還?可能なのか?」


「はい!!勿論でございます!!この森の中の山脈を越えましたらヒト族領でございます」


「どの山脈かは分かるのか?」


「いいえ・・・。いえ!分かります!それも詳しく後ほど・・・」


「なんか信用できないな。ちなみにお前は助けてくれと言われて助けた人が一人でもいるのか?いるなら助けてやってもいいな。いるか、そんな奴が」


「はい、私はエルフを殺したことはありますが、服従の意思を示したエルフは決して殺しておりません・・・」


そう言ったが、俺はこの男の首を手刀で落とした。


「殺さなかったとしても奴隷にしていたんだろ。一体、どの口が言っているんだ。なんで、そんな多くの奴隷をお前は持っているんだ。忌々しい」


そう呟き、大きくため息をついた。


周囲に生存する兵士はいないかを5キロに渡って索敵したが人の動きをしている者は一つも反応することはなかった。


俺は草原が風で靡く、その様を見ながら自然はそれでも自然なんだな、とガラになくセンチメンタルになり、エマの容態が心配になったので急いでそちらに向かっていた。

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