20 森からの脱出②

朝に出て行って、昼頃前には洞窟に戻ってこれた。太陽が中天にかかっている頃だ。二人は忠実に大量の枝と草と小石を集めて、それぞれを洞窟の前に積み上げておいてくれている。


「ただいまー。昼食にしようー」


「しっかりといっぱい集めておいたわよ。これらはどう使うのかしら?」

「枝は焚火代わりと串用だ。草は俺の鑑定で食べられるものかどうかを選別していく。小石は釜戸を作るから、うまい具合に組もうか。少し大きい平べったい石を持ってくるから、これを板にして肉と草を焼こう」


「楽しみー♪」

「さすが、ここで1年間もお住まいになっているのもよく理解できますね」


俺は早速、石を組み上げて自然の釜戸を作り上げて、その中に細い枝を十何本取り出して、組んでいった。そして何本か枝を鷲掴みして魔力を込めてバキバキにして粉砕していった。何本も同様に粉砕して、木粉を作っていきら組んだ枝の中に盛っていく。そして手をその中に突っ込み、小さく心で念じて火を起こした。


木粉に火が燃え移り、火力が増していった。火は枝に移り、大きな焚き火になっていった。


「えっ?どうやったの?」

「火魔法も使えるのですか?」

「まぁな。内緒な」


口の前に人差し指を一本立てて、「しー」と言った。


釜戸を覆い被さるように平たい石を乗せ、切り分けたダチョウの肉を全て取り出して、串で刺して、その平たい石の上に3枚ほど並べていった。


他のダチョウの肉を天日干しして、肉が乾燥したら、火を起こして燻製にしよう。その燻製用に釜戸を3基作った。


肉が焼けたようで、串を使って石に引っ付いている部分はそのままに、肉を引きちぎり、裏返して、裏面を焼いていった。塩をかけて少し待つ。


その間に草を植物鑑定して、食用の草を選別して、取り出していく。2人に他に皿になるような石を探すように伝え、食事の準備を整えていった。そして、何個か万癒の実を取り出して、それを添えながら食べるように指示した。


「これは何?」


「近くで取ってきた果物だ。炭水化物を摂らないと、活力が増えないからな。とても美味しいから食べてくれ。俺はこれを『桃』と呼んでいる。」


「まさか、こんな死の森の最奥でこんな風に食事ができるとは。本当に凄いことですね」


「正直、凄いことなんて全くない。全部適当にやっているだけだ。味は保証しないからな。生きること以外に優先事項はない」


「とても美味しいわ!このダチョウの肉は、柔らかくて美味しいわよ」

「はい、しっかりと食べられます。私たちがこの1ヶ月間、逃亡生活の中で食べていた保存食に比べれば、天と地の差です」

「まぁ、空腹は最高の調味料とよく言われるからな。思う存分食べてくれ。あと、他のダチョウの肉は、干し肉にしていこうと思うから、今乾燥させている」


どんどん焼いていき、昼食を終わらせる。


「さて、今からしたいのはお互いの戦力の確認だな。お互いにできることを一人ひとり話していこう。まずは俺から話そう。


俺のスキルは、『植物鑑定』『水魔法』『火魔法』『軽量化』『重量化』『硬質化』『索敵』。戦闘術も学んでいたから、対人戦が得意だ。この1年間で対魔獣戦闘も結構得意になったかな。それと、ここでの生活のおかげで、力もスピード、スタミナ、魔力も格段に上がっているから、並の兵士以上には戦力になると思う。


持ち物としては、この果物を持っている。回復の実だ。これを食べれば色んな傷が治る効能を持っている。これをドライフルーツにして、持っていこうと思う。それと、毒草も百何十個程持っていこうと思う。麻痺させたりするものもあれば、筋力を落とすものもあれば、結構凶悪なものもある。安心して欲しいのは、全て乾燥化させていくから外部には影響はない。これを食べれさせると確実に普通の人なら一瞬で殺せる」


「いやいやいや、あなたの力は確実に並の兵士以上というレベルではないわ。それに、そんなに多くのスキルがあるなんて凄いわね。さすがヒト族の勇者ね。話によるとスキル解放なしの身体能力で冒険者Cランクと聞くし、スキル解放後の戦闘能力は、冒険者Aランクと聞くわ。あなたのような人を不要とするなんて、ファーダムの王族の目は節穴ね。本当に。それに、かなりな強力な道具を持っていくのね。回復の実も助かるわ」

「そんな毒草もあるのですね。ここはやはり危険度A区域ですな」


「今のあんたたちの返答を聞いていても、色々聞きたいことも多くあるが、とにかく、あんたたちのできることを話してもらおうか」


「では、次は私から。私のスキルは、戦姫(ランクA)と呼ばれているわ」


エマは自分の戦姫(A)のスキルを説明した。


戦姫(A)

攻撃力30倍

防御力30倍

魔力30倍

統率力

突破力

交渉力


(さすがだな。とても好戦的なスキルになっている。また外交としても活躍しているのは、この交渉力があるからだろう。この突破力も物理的突発力もあるだろうが、議論でも当てはまるのだろうか。


エマはかなり好戦的で、戦闘になるとどんどんパーティのメンバーの前に出て戦うことを好む。本人曰く「戦では、将軍こそが一番先頭に立って立たなければならない」というのがモットーであるらしい。兵士に勇気を出せと号令するよりも、行動を持って示した方が兵士をより勇気づけられるからだ。もちろん、その場合は将軍が死んでしまえば、戦は負けることになるので、非常にリスキーなやり方ではある。だからこその戦法なんだろう。兵士も必死になからざるを得ない。勇敢な嬢さんだこと)


「私もセバスもこの『魔除けのお守り』を持っているわ。これで魔獣からの襲撃はかなり回避できてきたわ」


「それは助かるな。できる限りこの森に滞在時間を短くする事で、生存率は上がるからな。魔獣との戦闘はできるだけ避けて脱出したいしな」


そして、エマが話終わったのを確認して老紳士が口を開いた。


「では、次はわたくしめが説明させていただいます。以前にもお伝えいたしましたが、私の称号は大地者(ランクB)でございます」


セバス曰く、以下が大地者(B)のスキルだそうだ。


大地者(B)

状況把握(陸上のみ)

体力増加(陸上のみ)

速力増加(陸上のみ)

魔力増加(陸上のみ)

攻撃力増加(陸上のみ)

防御力増加(陸上のみ)

無音移動(陸上のみ)


(陸上ではかなり有能な性能を発揮するな。地上に体のどこかがくっ付いていないと発動しないのが難点だが、この世界で海に出ることもほとんどないから、ランクBだろうと有能であることには変わりないな)


そう思っていると、セバスは更に説明を加えた。


「陸上となっておりますが、屋敷などでは土に足がくっ付いていないと効果は発揮しないのでございます。これが最大の弱点になります。土の上限定。今のこの森にいる状況ですと、申し分のないスキルでございますが」


そして、セバスは今までの人生遍歴を語ってくれた。


話を聞いていると、かなりの遍歴の持ち主だった。村の村長をした時期があったが、その村は戦争中に全滅。村長の前は兵士として従軍。数多の戦闘を経験した後、諜報員や威力偵察部隊員として活躍した。暗殺業で生計を立てた時期もあり、現在は執事としてガルーシュ伯爵の元で、エマ専属の護衛兼執事として働いている。本名をセバスチャン•ロ•ヴァルアという。ロは男爵位を持っていることを示す。軍での功績を認められ、退役する時に叙爵したらしい。その時に家族名も授与された。それで村を一つ任され、村長に就任した。しかし、戦争の中で村人全て、そして本人の家族をも失ってしまい、今更ここから自分の『家』を立ち上げるつもりはないので、男爵位のことはあまり気にしていない。


村が消滅した後の今は、ガルーシュ伯爵家の興隆に使命を見出しているとのこと。何でも、ガルーシュ伯爵当主アルベルトがセバスが村長の時、一番苦しい時に助けてくれたようでその時の恩義に報いる為に執事として働いているとのこと。


さすが並の人ではないと思ったが、戦歴、職歴、遍歴がえげつない。まぁ今回の一連の襲撃の中でも、最後まで護衛対象を守り生き残っているわけだから、超がつくほど有能な人だ。死ぬまで(最終は俺が助けたが)護衛対象を守り抜いたんだから、この人の意志は金剛石の如く固い。まさに信念に殉じれる人だ。


戦闘技術は戦争を何度も体験しているので槍、剣、斧、弓矢ができ諜報部員として短剣、長針、糸、なんかも獲物として使えるらしい。罠なんかも得意らしい。けども料理はからっきしダメらしい。なぜ?!


それから3人で一緒に魔物を狩ったりして戦闘の連携を確認した。


そうこうしている間に1週間が経った。

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