5 スキル解放

「承知いたしました。では、こちらの水晶に手を置いて下さい。この水晶が勇者様の潜在能力を引き出します。」


春日はおもむろに手を水晶に置いた。置いてすぐに、春日の体が光り、魔力の奔流が体から水晶に吸い込まれていった。


「うおおおぉぉぉぉ!!!」


「お、おい。大丈夫か!?」

「春日君!」

「一体何が起こっているんだ?」

「怖いよ~」


テーブルに座っている生徒たち、また順番を待つ生徒たちが心配そうに春日を見ていた。春日の体の中に、水晶から発せられた魔力が流れ込んでいった。そして、突如として、魔力の流れが止まった。


水晶が光り、文字が浮かび上がっていた。


僕たちには読めない時であるが、フードを着た魔法師らしき女が近づいて


「勇者」と一言。


周囲の兵士たちからは驚愕の声が響いた。

「おぉーー!!!!今までこんな称号が出たことがない!何なんだ、これは!!??」

「凄い!!勇者とは、聞いたことがない!」

「勇者??!!本当だ!どんなスキルを保有しているのか!?」


勇者

ー火属性攻撃・耐性

ー水属性攻撃・耐性

ー木属性攻撃・耐性

ー風属性攻撃・耐性

ー金属性攻撃・耐性

ー雷属性攻撃・耐性

ー聖属性攻撃・耐性

ー闇属性攻撃・耐性

ー物理攻撃耐性

ー魔法攻撃耐性

ー物理攻撃50倍

ー魔法攻撃50倍

ー魔力∞


「???!!!」


「全ての属性の攻撃と耐性、全ての種類の攻撃と耐性を持っている!!また、魔力が無限にあることを示している。こんなスキルありなのか!?」

「ま、まさに勇者の名前に相応しい、他のスキルの中でも群を抜いている力を有している。」

「これは、今までの称号の中でもSSランクに分類してもいいと思われます。」


魔法師たちが、興奮してこの内容を王と王女に報告をし、彼らも同様に喜色を顔に浮かばせ、「これで、人の世も救われたな。」「さすがです、勇者様。」とそれぞれが安堵の吐息をもらしていた。


その王と王女、魔法師たちの評価を聞いていた生徒たちも、よく分からないながらも騒然としていった。


「な、何かよくわからんが、凄いのか?」

「さ、さすが、春日。凄いやつだとは思っていたが、やはり、あいつの力はずば抜けていたんだな。」

「春日くんすごい!!さすが!!」

「素敵!!私、一生春日君に付いていくわ!!!」


困惑の声と、黄色い声援を背に受けて、また多くの称賛の声が、そこここで聞かれ、広間は騒然とした。そして魔法師たちの評価を聞いて、春日は打ち震えていた。


(や、やはり俺は、世界を背負うような、重要な責任を持つ人間として生まれてきたのか。周囲とは違うとは思っていたが、断トツの力を持って生まれてきていたのか。力を持つ者には、それに伴う責任があるという。俺にはこの世界を救う使命があるのだろう。元の世界にいては、このような潜在能力は、引き出されることはなかった。やはり、俺はここにいるべくしているのだろう。)


春日は、水晶から離れると、直ぐに生徒たちに囲まれていた。


「凄いじゃない!!これから何ができるのかしら?!」

「春日、お前、もう人間辞めてるな!どんな奴なんだよ!」

「春日君、一生付いていくわ。」

「ちょっと、あなたになんて付いて来られたら、春日君が迷惑でしょ。」

「あなたこそ、どっか行ってよ。あなたは関係ないでしょ。」


様々な声が飛び交う中、菅原が一歩前に出た。


「さぁ、どんどん行こうぜ。俺にはどんな力が備わっているんだ。やってくれ!」


魔法師たちは、他の水晶を用意し、菅原の前に用意をした。


「皆様一人ひとりに水晶が用意されておりますので、どうぞそれぞれに手をかざしていただきたいと思います。」


「さぁ、俺にはどんな力があるんだ。見せてみろ!」


水晶から魔力の奔流が、菅原の体内に流れ込み、水晶が光り、そこにははっきりと文字が見えてきた。魔法師たちは覗き込むと、息を呑んだ。


暴威の王

ー物理防御無効化

ー魔法防御無効化

ー攻撃力100倍

ー防御力100倍

ー身体能力100倍


「!!!!????」


魔法師たちは、唖然とした口が塞がらなかった。


「こ、これも、SS級ランクと位置づけてよろしいでしょうか?」

「あ。。。あぁ。これも未発見の称号のようだ。こんな力があるスキルに出会うとは、本日は奇跡のような日だ!!!!」


「菅原さん、あなたのスキルは、脅威的ですね。」

「す、すごい力なんですね!」

「おぉぉ・・・、どんな力になるのか・・・。」


生徒たちや魔法師たちはそれぞれが、菅原の驚異的なスキルを見て、ただただ言葉にならない言葉を呟いた。


菅原は、周囲に言っているようで、自分に言い聞かせるように言った。

「結局、攻撃力を100倍としたところで、俺自身の力が弱ければ意味がないからな。ここからまた、鍛錬の日々になるな。」


周囲はその言葉を聞いて、驚愕していた。もう既に自分の次のやるべきことを明確にして先に進んでいるのだ。「空恐ろしいな。」との声がどこからともなく聞こえていた。


菅原が力強く床を踏みしめると、靴が破け、床に亀裂が走った。


「力があるといってもいいが、これでは考えものだな。気を抜いて、力を出すと城を壊しちまうな。」


「すげぇぇぇぇ!!!!何なんだ、あの二人は!?」

「もう、魔族が可哀想になってくる力だな。」

「菅原君、格好いい。。。」


「さぁ、他の勇者様もどうぞ、前へお越しください。それぞれの水晶に手をお当て下さい。」


生徒たちの目の前には、5つの水晶が並べられ、魔法師たちがそれぞれの勇者の『スキル解放』の記録を取る態勢を整えていった。


「じゃあ、私もやってもいいのかな。。。?」


三原は、おもむろに一歩前に出て、水晶に手をかざした。


聖女の癒し

ー回復魔法SSランク

ー聖属性攻撃・耐性

ー魔力100倍

ー魔法攻撃・耐性

ーカリスマ性

ー扇動力

ー団結力


「なんか、スキルの名前が怖いね。」


「これは、凄い!聖女の癒しは以前も出たことがあるスキルですが、SSランクのスキルになります。聖女の癒しのスキル保持者がいれば、一国が立ち上げられると言われるほど、強力な力を持っています。これほどのスキルが出てくる勇者様がおられるとは、あなたたちは一体、何者なのでしょうか?」


魔法師たちや王、王女たちは、笑みを浮かべながら、スキル解放を見守っていた。


それからぞくぞくと他の生徒たちも、水晶でのスキル解放が行われていった。


「狩人の牙」(Sランク)

ー弓矢攻撃・耐性

ー走力10倍

ー器用さ10倍

ー必中攻撃

ー防御貫通率100


「賢者」(Sランク)

ー魔法攻撃・耐性

ー火属性攻撃・耐性

ー水属性攻撃・耐性

ー木属性攻撃・耐性

ー風属性攻撃・耐性

ー金属性攻撃・耐性

ー雷属性攻撃・耐性

ー聖属性攻撃・耐性

ー闇属性攻撃・耐性

ー回復魔法A

ー魔力50倍


「黒魔法師」(Aランク)

ー魔法攻撃・耐性

ー火属性魔法

ー水属性魔法

ー雷属性魔法


「白魔法師」(Aランク)

ー魔法攻撃・耐性

ー回復魔法

ー補助魔法

ー支援魔法

ー風属性魔法

ー聖属性魔法


「侍」(Bランク)

ー斬撃攻撃

ー明鏡止水

ー不退の心

ー物理防御無効化


「時魔法師」(Bランク)

ー時魔法・耐性


「逆賊のナイフ」(Bランク)

ー隠密

ー聴覚10倍

ー嗅覚10倍

ー記憶10倍

ー走力10倍

ー跳躍力10倍


「獣の頂」(Bランク)

ー獣化

ー獣従属

ー威圧

ー魔力変容

ー直感


「Aランクでも一人でもいれば、良いと記録では書かれていますが、今回の勇者様は、元々潜在能力の高い方々ばかりなのでしょう。本当にこの度の勇者様方は、人類の希望となるような方々なのでしょう。希望の光です!!」


興奮した面持ちの魔法師たちは、力のあるスキルを持つ称号が出る度、周囲に笑顔で話しかけるのだった。王様と王女様も、ご満悦の様子で、眼を細めて事態の推移を見守っていた。


一人ひとりと終わる中で、とうとう僕の番になった。先ほど言われているSSランク、Sランク、などが出る中で、最後が僕になったということで、全員の注目が僕に注がれる。


「どうぞ、最後の勇者様もこちらにおいでください。ささ、ここに手をかざしてください。」


僕はドキドキしながら、水晶に手をかざした。魔力の奔流が自分の奥底に流れ込むのを感じる。自分の奥底を見ることができ、その魔力が純化していくのを感じる。光が眩しすぎるので、目を閉じていたが、その光も止んだ。恐る恐る目を開けてみると、そこには、もちろん自分の知らない言葉で書かれている文字があった。隣の魔法師の表情を盗み見てみると、驚愕の表情をして言った。


「こ、これは。。。」


「何だったんですか?僕のスキルは?」


「。。。」


「教えてください。何と書いてあるんですか?」


魔法師は、注目する全ての生徒と王、王女たちに厳かに伝えた。


「この勇者の方の称号は植物鑑定。スキルも同様に植物鑑定。植物の成分が分かる、となっています。これは、昔一度出たことがあるスキルですが、残念ながら、その勇者様は、戦闘の支援や補助ができず、前衛にも後衛にもなりえず、王国としては、使いきれなかった為、市井の中で暮らしてもらったと記憶しております。。。。たしか、ランクは。。。Gランクとさせていただいておりました。」


(はぁ?!Gランクのスキル?そんな・・・)


「ハハハハハ!!!!!!!!!!!!元キチ、それは無いだろう!!!!???どうやったら、そんなゴミスキルで、この世界で生きていこうというんだ!牙とか頂とか王とか、色んな有能な奴らはいるが、もう何か分からんな!お前、この世界でも面白い奴だな!!」


「元橋くん、勇者と名乗るには、ある程度の力が必要だと思うよ。これから魔族と戦う上で、最低限度の力がないと、無駄に命を散らしてしまうかもしれない。君のこれからの過ごし方は、よく考えた方がいいだろうな。」


(あいつ、やっぱりモブだよな。)

(存在感がないと思っていたんだ。やばいよな。)

(植物の成分を知る力は、いらんよな。)

(うけるーーー!!!笑)


「大丈夫だよ。私が、元橋君を守るよ。一緒に戦うことはないかも・・・。だけど。けども、人に向き不向きがあるからね。」


「ハハハハハ!!!!美幸!!!それは、元キチに言うには酷な話だぜ!!!結局、それは、元キチは使い物にならないって言っているようなものだ!残念だったな、元キチ!」


菅原は楽しいそうな声と表情で、僕のスキルをこきおとしていった。僕は半ギレで菅原を見据えて言った。


「あぁ、僕はせいせいさ。君たちは戦闘に出て、僕は市井に下る。まさに願ったり叶ったりさ。さて、どっちの方が、死亡リスクは高いのかな?僕はそれを心配するね。せいぜい魔族との戦闘で、殺されないことを祈っているよ。僕は君たちの守ってくれる王国で、のうのうと生き永らえさせてもらうとするよ。」


「おい、元キチ。てめぇ、何て言った??」


「大変申し訳ありません、勇者様。実は、『スキル解放』には、多くの魔力を要しておりまして、戦闘系の勇者の方でないのは、十分承知しておりますが、勇者様全員には、戦闘への参加をお願いしております。」


「そんな!!!???僕には、戦えないでしょ!!??話を聞いている分には、僕には攻撃力が上がったようなスキルはないし、隠密をして相手を探るようなこともできないし、何もできないじゃないでしょうか?そんな僕が何か、現在、人族の国防ラインを押し込んでいる魔族との戦いに、何かの役に立つとは、僕は到底思えない!!絶対に拒否いたします!」


「まぁ、言っていることは至極まっとうな事であるが。」


王様が話の間に入り、皆に宣言をしてくれた。


「もちろん、有能なスキルを得たからといって、戦闘に入るようなことはないのです。御心配は要りません。まずは、レベルを高め、スキルを高め、体を鍛え、戦闘能力を上げ、この世界の事を理解し、どうするかは、皆様次第であることを、最初にも明言いたしましたが、これからも明言いたします。この世界に、ヒト族の滅亡の危機などという、こちらの勝手な事情だけで、皆様の全ての人生を狂わしてしまったことを、心の底から謝罪するとともに、ご理解を願えればと思います。」


それを受けて、春日は僕に向かって言った。


「そうだ。王様は、このように真摯な態度で、最初から今まで接してくれている。それを、君は、拒絶の態度を示し、一切相手の話を考慮しない態度は、僕はいかがなものかと思うがな。世界平和の為に自分のできることを、よくよく考えてみたまえ!同じ人として恥ずかしくのない、行動を取ることを、僕は願っているよ。」


「格好いい!!」

「さすが、春日、冷静にして、人の思いに寄り添う言動はさすがだな。」

「クラスの頭だな。」

「元橋くんはちょっと自分勝手すぎるよね。」

「もっと考えた方がいいかな。」


散々な言われようをされている。拉致されたことは、目的が正しければ正当化されるのか?僕はそうは思わない。けれども、みんなの考え方が、それを受け入れるような方向になっているのに、僕は不思議に思いだした。


「大丈夫だよ。元橋君。私はいつも、元橋君の味方だよ。何ができるか、一緒に考えていこう。」


「美幸さん、そんな奴を気にかける事はないさ。さぁ、僕たちはまずは、何ができるのか、何をすべきなのかを模索していこう。他の人たちにかまけている暇はないかもしれない。さぁ、頑張ろう!」


王様や王女様に連れられて、皆は別の部屋へと促されていった。僕も同じように後ろから進んでいった。そこは、大きな円型闘技場ような場所であった。中心あたりまで、皆が集まった時に、王女は振り返り皆に提案をした。


「勇者様方、もしよろしければ、ここで今の力を試しに使っていただければと思いますが、いかがでしょうか?」


王女はそのように提案をしたが、誰も彼も、どのように自分たちの力をつかえばいいかは想像がつかず、困惑したように周囲と目線を合わせるばかりだった。王女は続けて言った。


「基本、皆様のスキルは、皆様の本然的に備わっている技能であります。その技能を強制的に強力な魔力で引き出しただけに過ぎません。どうぞ、心の赴くまま、体が、意識が導くままに、その力を感じていただければと思います。」


春日は、自分の内にある、火属性攻撃を探ってみた。何を探るか全く見当も付かなかったが、自分の中の火を想像してみた。確かに俺の奥底に、全てを焼き付きしたいほどの炎があるように感じる。その止め度も尽きない力が確かにある。


「わかる、わかるぞ!確かに俺の中に炎がある。名を欲しているように思う。これがいいか?!この世界の具現化したいか?!出てこい!ファイアウォール!!!」


春日の前に大きな火の壁が現れた。全て焼き尽くすかのような紅蓮の炎であった。


「こ、これは本当に、俺がこれを出現させたのか?」


「はい、勇者様、その通りです。見事な炎の壁です。ファイアウォールとは、火の壁という意味でしょうか?」


「そうです。ただイメージと名前をそれに課しただけで、このように出てくるとは思いもしませんでした。」


「スキル解放からこれほどの威力の炎が出せるとは、本当に素晴らしいです。魔法師の皆さん、一度、全力でこの火が消すために、水属性の魔法を打ってみてくれ。」


「「「はっ!!」」」


魔法師たちは、魔力を溜め、詠唱を始めた。


「水を司る精霊よ、我に力を与えたまえ」


詠唱が終わると、3人いた魔法師たちの手には、等身大ほどの水の塊が浮かんでいた。


「「「いけ!!!!!」」」


3人は、それぞれの水の塊を放ち、春日の炎の壁に衝突した。


バシャっ!!!!!!


水は炎の壁にぶつかったが、何事もなかったように、そこに壁はあるばかりだった。


「す、すごい。今、放ったのは、中級レベルの水の魔球でしたが、全く歯が立ちません。」


「やはり、このファイアウォールはそんなに凄いのですか?」


春日は自分の作り出した炎を、満足げに見入っていた。


「じゃあ、俺もやってみるか。」


菅原は、自分の能力を試してみたいと、生徒たちの集団から一歩踏み出すのだったが。


「待て、菅原。お前の力の片鱗はさっきの部屋でもう既に見た。お前の全力をこの場所で放ってしまったら、この城自体が潰れる。やるなら、城の外でやったほうがいい。」


と、春日は菅原を止めた。


「まぁ、確かにな。俺も少しこの場所が脆弱に見えるから、少し心配だったんだ。力がありすぎるのも考えものだなっと!!!」


そう言って、シャドーボクシングのように空中でジャブを打つのだった。その打ったジャブの風圧で、壁に直系1メートルの大きさが陥没し、そこから蜘蛛の巣上に5メートルほどの亀裂が生じていた。


「これで攻撃力20倍だが、まだまだこんなものじゃないだろうな、俺の力は。」


「き、規格外だ。」

「あ、ありえない。」

「まさに、暴威の王。。。」


周囲の兵士や魔法師たちが恐れ慄きながら、菅原の、人類では成し得ない、身体能力の高さにただただ呆然としていた。


「じゃあ、私もやってみたいかな。」


三原美幸は、一歩集団より外に踏み出し、皆から安全な距離を取って、自分の内にある力を探っていった。


(これね。この聖属性といわれる力がこのことなのね。お願い、でてきてもらっていいかな。名前も付けてあげるね。)


「ホーリー」


地面から突如、光の柱が出現し、周囲を光で満たしていく。


「な、なんだこの光は。」

「前が見えない。」

「どこからだ。三原さんか!?」


光が徐々に消えていき、その光の中心となっていた場所には、直系5メートルほどの穴が抉れてできていた。


「これが、私の聖属性の力。す、すごい。」


「美幸、凄いね。回復魔法もできるんだろうし、攻撃魔法もできるんだから、後衛からの支援ができるんだろうね。これから一緒に戦っていけると考えると、本当に心強い力を持っているね。頼もしいよ。」


「そ、そうね。私もヒト族の為に、頑張らなくちゃと思うの。」

「三原さん、凄いね。私も一緒に頑張るわ」


三原に話しかけてきたのは、三原と教室でよく一緒にいる女子3人組の1人だった。


身長は低めだが、女性としての身体的な魅力を持っている、赤石そらは一部の男子生徒からは学園のアイドルとして扱われていた存在だ。


赤石そらのスキルは『詩歌の姫君』(Sランク)だった。


「赤石さんは、どんなスキルがあったの?」

「えぇー、何か良く分からないけど、歌で人を励ましたりする感じらしいよ。」


「ご説明させていただきます。」


横に仕えていたとても顔の整った、屈強な男の兵士が、赤石に近づき、説明を始めた。


「赤石様の力は、以下の様になります。」


詩歌の姫君(SSランク)

ー味方の士気の向上

ー味方の攻撃力向上

ー味方の防御力向上

ー味方の魔力向上

ー味方の身体能力向上

ー味方の感情を煽る

ー味方の感情を収める

ー声量増大・貫通


「赤石様は詩と歌によって、周囲の力を何倍にも増幅するスキルをお持ちです。つまり、これは、軍隊の総合力を何万倍にできる、奇跡のスキルなのであります。しかし、もちろん、護衛が常に必要でありますので、私がこのような護衛をさせていただいております。」


「ありがとうね。本当に助かるよ。私の力は、みんなの為にあるようなものだから、私自身は、自分の身を守る術がないものね。頼りにしていますね。」


何か、このイケメン兵士の顔が赤いのは、何かの勘違いなのだろうか・・・と思わなくもない三原だった。


「じゃあ、一回、私の歌を聞いてもらっていいかな~?みんなのやる気を鼓舞する歌がいいかな~?」


それぞれの場所で、みなが自分たちのスキルを確認するために、自分たちが自分たちの内と対話している中で、赤石は、その美声で歌を歌い始めた。


あぁ、限りなき この天空の中で

野原を駆け回り 地上を眼下に見る

あぁ、君よ 大いなる使命を持つ君よ

どんな困難があろうとも 自分の信じて

前へ 前へ 前へ 走り切れ


この歌声は、闘技場全体を包み込んでいった。


生徒たちと兵士たち、魔法師たち、そして王、王女もこの歌声を聴き、心に何か大きな力が彷彿とするのを感じるのだった。


「なんだ。何故か、やる気に満ち溢れてくのを感じる!」

「自分が何でもできる、って信じられる。これは凄い!!」

「この歌声、赤石さんか!!??凄い、彼女の歌声を聴いていると、元気になる」


そこかしこで、雄たけびのような声が木霊していく。

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