第10話絶望の歌は突然に
2日前、ルルナル法皇国に隕石が落ちた。
その隕石は、ルルナルを文字通り地図から消し飛ばした。
それは国の最後としてはあまりにも呆気のない事だった。
私が何かしたのでは無いか?と疑うものも居るのだろう。
──────しかし今回は私は全く関係がないのだ
そもそも私はルルナルの事など正直どうでもよかった。
けれど、どうにも気がかりなことがあったが故にあの兵隊を送ったり、地質を解析したり、街の中に観察用のブイを設置していたのだが……
ちなみに私が気がかりだと思ったのは、何故かルルナルだけ転生者や転移者が消えているということだ。
事実、街には誰一人として異世界からの存在がいなかった。
そして今回の隕石は、間違いなくルルナルの国の中から引き起こされた魔法によるものだ。
つまり自爆という事になる。
私は確かめるため、ルルナル跡地に赴くことにした。
もちろん王子や騎士団長には連絡を入れてあるので問題は無いのだが
めんどくさいことだけはしないでくれと釘を刺されてしまった。
全く、私を誰だと思っているのやら……まぁ確かに素性を明かしてはいないが
──────「なるほどこれはひどい」
私はルルナル跡地を見てまずその言葉が出てきた。
焦土と化したその大地には呪いの混ざった炎が延々と燃え広がっていた。
大聖堂だけはかろうじてその姿を保っている、しかしそれ以外の場所はほとんどが呪われた瘴気と残火のくすぶる黒煙しかなかった。
まるで本当に神罰がくだったかのような惨劇に私は少しだけ哀れみを覚えた
「?あぁ……なるほど、そう来たか」
調べていた私の前に得体の知れない化け物が現れた。
もちろん、それを化け物と呼んでいいのかははっきりいって分からない。
私は手を合わせたあと手の前で十字を切る『
その祝詞により、その化け物はゆっくりと塵になっていく
その様子を見ながら……改めてこの世界にはヒーローは居ないのだな……と実感した。
いたら私の前に現れているはずなのだから
……と、遠くの方で何やら銃声のようなものが聞こえたため、そちらにゆっくりと歩いていく
そこには
──────「くそ……消えやがれよ!……頼むからさあ、なぁ!……昨日まで元気だったじゃないか……なぁ?!……あたしは……あんたらを殺すことは……出来ないんだよ!」
その声はかなりの悲痛なものを纏っていた
見るとシスターのような姿の女が2丁の拳銃を片手に化け物を焼き殺していた。
「大変そうですね、手伝いましょうか?」
──────「っ?!誰だ、あんたあぶねえぞ、早く逃げろ!……」
どうやら私の姿が観光客とかの類に見えたようで焦りながらこちらに彼女は走りよる
「──────あぁ、ご心配なく『
私はかつて戦った巨人の王の剣を左手に顕現させ、振るう。
世界樹を焼き、世界すら焼き尽くした不滅の劫火を纏いし剣は私の後ろから集まっていた化け物を一網打尽に消し炭に変える
……せめて苦しむ暇すら忘れるぐらいの熱で果ててくれ
それが私からのルルナルの化け物に対する私からの最後の言葉だ
「……ありがとうな……あ、アタシはネロ……ここルルナルのシスターだった……んだ」
「ふむ、ネロ……懐かしい名前だ。……あいつに力を貸したのは……おっと、そうだ……私の名はオスカーという。まあしがないアルメリアの王子に使える転移者だ」
「……あんた転移者なのか?……それにしてもアルメリアの……あぁ、あんたがあの噂に聞く男か」
?私がなにか噂にでもなっているというのだろうか
と、後ろの方でガチャガチャという音がして扉が開く
「ネロおねーちゃん!ここに居たんだね?!」
ネロにそっくりなその子は、おそらくだが彼女の妹なのだろう
「──────なんで……あんた生きて……るの?!……」
「?おねーちゃん意味がわかんない。あ、でもね大丈夫。みんなはいずれひとつになるのだから怖がる必要は無いのよ?」
「……あんた何者!……あたしの、あたしの妹はあの隕石で死んだんだ!……じゃああんたは誰だ!」
私はその2人のやり取りをココアを飲みながら椅子に座って聞いていた
まあ私が推測するとあれは既に死んだのだろう。
死んだが、しかし……まぁあれか、魂の呪縛魔法?だったかそんな感じのを受けているのだろう。
魂が縛られるというのは言い換えれば自分であり他人。他人の意思で動く自分の体と脳──────それは果たして本当に本人といるのだろうか?
──────そもそもこの国に来た時に既にほぼ確信していたことがいまさっきやっと現実へと変わった……と言うべきか
おそらくだが、地下にある悪魔の巣食う空間と上にあった国の位置が変更されているのだろう。
全く、あまりにも乱雑な話だ。
そもそも耐性のついていないただの人間風情が悪魔の国へと行けば、それはすなわち肉体は死に魂は悪魔によって縛られてしまう。
「おや?まだ2人も生き残りがいたのですか……全く部下の報告はあてになりませんね」
そんな声が後ろから聞こえた時、私のルルナルでの戦いが幕を開けた
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