第2話 同盟のワケ

 北欧の地下組織ジャーブルソンと世界魔道士協会がタッグを組んだ。



 30歳までDTとSJだった者が覚醒してなる魔道士。明らかに問題のある集団達と、これまた問題児ではあるけれど科学技術の粋を活かした天才達が数多くいるジャーブルソン。


 この両者の接点は何なのだろうか?



『まさにそこよ。魔道士は非モテの集団よ』

「いや、決めつけたら可哀相だよ」


 会長と副会長を見ていると、もう少し慎みというものを持とうよと言いたくなるが、過去にはもう少し普通の魔道士もいたよ。全員変人ではあるけれども。


『非モテが最終的に目指す世界はどういうものかしら?』

「非モテが最終的に目指す世界?」


 モテまくる世界?


『それは彼らにとって実現不可能な世界よ』

「だからそこまで言ったら、可哀相だよ。でも、そうじゃないなら何?」

『男も女もない世界よ。そうすれば、モテる、モテないという概念が存在しなくなるわ』

「……」


 極論に走り過ぎだ。




『そこでジャーブルソンよ。彼らは体外受精や遺伝子操作を徹底的に極めているわ』

「もしかして……」

『そうよ。ジャーブルソンが性別の無い世界を実現し、モテる、モテないという概念を取っ払うのよ』


 うわぁ……。



 性別を取っ払う。


 つまり、性機能をなくすということだ。


 例えば、性犯罪者に対して二度と同じことを起こさないように男性機能を奪い取る、というようなことは議論されている。


 ジャーブルソンと世界魔道士協会は、これを全員に対して行ってしまうつもりらしい。


 性別がない、ということは女性からも女性機能を奪い取るのだろう。



 そんなことをすれば、どうやって子供を残すのかとなるけれど、遺伝子を操作すれば、同性同士で受精卵を作ることも訳がない。


 極論すれば、自分一人で子供を残すことも可能になる。



『つまり、世界からは男女不平等も性犯罪もなくなるというわけよ。戦争を起こすのは大体が男性ホルモンの影響だから、それも取り除けば戦争もなくなるわ』

「いや、それはそうだけど……」


 さすがにジャーブルソン。滅茶苦茶なことをしれっとやってのけようとする。


 そこに世界魔道士協会の邪な野望が加わり、事が大きくなりそうだ。



『悠ちゃん』

「何、千瑛ちゃん?」

『その世界、結構アリだと思わないかしら?』

「思わないよ!」

『でも、その世界なら優依ちゃんも子供を残せるのよ。遺伝も関係ないし、あぬ弟間の背徳感も皆無に、二人の子供を作れるわ』

「何で相手が僕なのさ」

『優依ちゃんが好きなのは悠ちゃんだけだもの』

「ま、まぁ……」


 これはまずい。


 ジャーブルソンと世界魔道士協会の考えは、意外と多くの人に受け入れられるかもしれない。


 でも、さすがにこれは問題だ。問題だろう。問題かもしれない。



 まずい。段々自信がなくなってきた。


「大丈夫ですよ、悠さん。明日になれば味方が来てくれます」


 魔央が何故か宣言した。よくよく見ると、彼女はタロットカードで何か占っていたようだ。


 明日になれば味方?


 どういうことなんだろう? 僕には全く分からない。


 そんなこんなの話をしつつ、飛行機は東京へと近づいていた。

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