第9話 MAO王国成立
運命の日を迎えた。
昼過ぎに大使館の車がまた迎えに来た。
三人で乗り込んで、そのまま国連本部へと向かう。
「それじゃ、悠さん。頑張ってきてください」
「悠ちゃん、頑張ってね」
二人から励ましを受けて、中に入る。
えっ、どうせなら、魔央も連れていけばいいのに?
それも考えたのだけど、見た目はともかく破壊神だからね。それにテレビに映ったりすると、後々厄介なことになるかもしれない。
だから、中に入るのは僕だけだ。
まあ、それはそれで今後、ターゲットが僕になるかもしれないのだけど。
午後2時、総会が始まった。
挨拶やら議事進行についての説明があった後、アメリカ代表が演説を始める。
「世界がMAO王国を認めるべき理由は二つあります。一つ目として人類が克服しなければならない破壊神の化身マオ・クロヤミの存在を、ある特定の国家が使ってはならないこと。従って、マオ・クロヤミのことだけを扱う新国家を作るべきだということ」
一斉に「異議なし」という声が飛ぶ。
「二つ目の理由として、マオ・クロヤミを狙う組織の存在です。ここにいる皆さんの中にそのような愚かしい考えを抱いているものがいるとは思いませんが、テロリストや違法組織の中にそうしたことを考えるものがいるのも事実です。そのような相手に対しては世界が協力して立ち向かうべきだと思います」
あー、なるほど。
これは自衛隊とかその辺りを動かすことについての日本の面倒くささを不安視しているんだろう。
違法組織が入ってきて、何も動きませんなんていうのはまずいし、といって、外国の軍やら特殊部隊が日本でおおっぴらに活動するのも問題がある。
だから、そういう時に僕や魔央が呼び寄せられるようにするため、独立させようというわけだ。
これは将来、どうなるかなぁ。
日本の代表も似たような話をして、次は僕の番だ。
「えー、皆様、MAO王国のためにお集まりいただきましてありがとうございます。代表のトキカタ・ユウです」
拍手が起こった。
「先ほど、アメリカと日本の方が申し述べた通り、今、世界はクロヤミ・マオという脅威を迎えております。彼女が『この世界はいらない』と考えた時、この世界は一瞬で破壊されることになります」
どよめきが起こった。
予想以上にヤバイ奴だ。そういう考えが広がったことが雰囲気として伝わってくる。
「しかし、私達、人類は必ずこの危機を乗り越えられます。ここにいる多くの皆様の英知と努力を結集させ、乗り越えるのです!」
大きな拍手が沸き起こった。
「私もMAO王国の一員として、必ずやこの世界を前進させていくことを約束します! Yes,yuu can! Yes,we can! Make the earth great more!」
一応、演説の専門家二人のキャッチフレーズも入れて顔を立てておこう。
一瞬置いて、僕は万雷の拍手に包まれた。全ての国家代表が立ち上がっている。
傍聴席で拍手を送る中には、満足げに微笑んでいるジョーク・ブイデン、ミッキー・タロットにジャンク・ミハマの姿もあった。
採決の結果、予定通り全ての参加国が賛成し、MAO王国は成立した。
それは、世界存続のための出発点であり、世界滅亡を目論む連中との戦いの始まりでもあり、そういうものを超えたドタバタ劇場の始まりでもあった。
『第一章・破壊神、国家を創る』・完
『第二章・北欧の地下組織・再臨』へと続く
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