第8話 ニューヨーク観光
かくして、為になったかならなかったのか分からないけど、演説のトレーニングをして、スーツとドレスを確認して、僕達は今日の宿泊施設へと移動することになる。
日本大使館の宿舎でも良いのに、と思ったけれど、せっかくだからニューヨーク観光もしようという優依の計らいだ。
ということで、市内を大使館車で移動しているけれど、交通量が少ない。
「ニューヨークって結構危険な場所もあるって聞いたけれど、こうやって見ると普通だね」
「数日前から人通りが少なくて安全になったみたいだよー。多分、
優依がにっこりと笑って言う。
「山田さん……」
そうか、山田さんが動いたのか。
堅固の七使徒で、七使徒の中でも屈指のヤバイ人格の持ち主である。
彼女が動いたということは、ニューヨークが安全になったということと符号する。
どうやって?
ここでは深く追及しない方がいいと思う。
世の中には知らない方が良いことが沢山あるからだ。
ニューヨークは安全になった。
僕達もハッピーだし、95パーセントの市民もハッピーだろう。
それでいいじゃないか。
日本大使館はニューヨークのメインどころ・マンハッタンにあるから、少し行けばエンパイアステートビル、ロックフェラーセンター、タロットタワーと著名なビルが見える。
それらを見た後、僕達は東へと向かった。向かう先はロングアイランドのハンプトンズらしい。
「五つ星ホテルでもいいかなぁと思ったけど、ホテルは人が多くて落ち着かないでしょ。だからゴゴちゃんの別荘を借りることにしたの」
優依はにこにこ説明している。
ニューヨークの東側にあるハンプトンズにはビーチがあり、有名人の別荘も多いらしい。あれが映画監督の誰それ、こっちは世界的実業家の誰それと一々説明してくれる。
そんな中で僕達が目指すのはマドモアゼル・ゴゴの別荘だ。
マドモアゼル・ゴゴとは昨年末にコラボソングを歌ったことがあるそうで、とても仲良しらしい。二人で一緒にピースサインをしている写真も見せてもらった。
うーむ、さすが世界的アイドル。
右にそんな優依がいて、左には世界的破壊神がいる。
改めて、すごい環境だ。
『幸せな気分に浸っているところに申し訳ないのだけど……』
おっと、千瑛ちゃんが携帯に憑依してきた。
『世界魔道士協会が声明を出したわ。明日のMAO王国成立後、記者会見を開くって』
「記者会見?」
あまり知られていないだけで、世界でも屈指にヤバイ集団である世界魔道士協会がわざわざ記者会見を開いて発表することとなると、ロクでもないことなのは間違いない。
特に、MAO王国の成立後とまで言っているとなると、ほぼ僕達に喧嘩を売ってくると見て間違いないだろう。
いや、だからどうすると言われても、どうすることもないのだけど。
思わぬ出来事があったけれど、その後も僕達は観光を楽しみ、こちら時間の夕方にはハンプトンズにあるレディー・ゴゴの別荘についた。
「Hi Yui!」
と出迎えてきたのは、マドモアゼル・ゴゴ……ではなく、そのマネージャーの女性だった。
「ミラちゃーん!」
優依は僕に抱き着くときと同じような感覚で気軽にスキンシップしている。このあたりはアメリカならでは、だろうか。
その夕方、僕達は浜辺でバーベキューを楽しみ、夜もカラオケを歌ったりして過ごした。
非常に楽しい時間だったけれど、明日は果たしてどうなるのだろうか?
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