第2話 破壊神と僕②


 僕が「はい」を選ぶと、一瞬置いて、世界は元の姿に戻った。



魔央まお、部屋から出て!」



 僕は彼女を部屋から追い出すと、素早く新聞紙を丸めてGを続けて叩き潰し、速やかに掃除機を取り出して吸いこんだ。


 これで世界は大丈夫だろう。


 ただ、同じことが二度と起こらないよう、業者を呼んで徹底的にGを追い出す必要がありそうだ。



『世界を救える回数はあと四回です』


 Gの駆逐業者を探している僕の脳内に、謎のメッセージが届いた。




 僕の名前は時方悠ときかた ゆう


 都内に住む、普通の大学一年生……。



 だと思っていた。


 半年前までは。



 大学入学とともに、僕の生活は百八十度変わってしまった。


 許婚が出来て、謎に満ちた少女達と出会い、とんでもない連中との関わり合いも増えてしまった。



 その原因……の大半は、僕の許婚・黒冥魔央くろやみ まおの存在にある。



 彼女は、世界が何百年かぶりに迎えた純粋破壊神の化身だ。


 彼女がちょっとでも「こんな世界はない方がいい」、「こんな世界では生きていけない」と思えば、世界はその場で滅亡する。


 防ぐ手立てはない。


 アメリカが全力になろうとも、世界中の科学者が叡智えいちを振り絞っても関係ない。とにかく世界は滅ぶ。



 世界はゼロサムで出来ている。


 有か無か。存在するか滅亡しているか。


 それを証明するのが魔央と言っていいだろう。



 それはあんまりではないか。



 ということで、救世主というと語弊ごへいがあるけれど、一応彼女のカウンターとなる存在として、僕がいる。



 と言っても、何で僕にそんな力があるのか、それがどういう力なのかは誰にも分からない。ただ、彼女と同じ日に生まれた僕にカウンターたる者の力があるらしい。


 だから、彼女が世界を破壊した後、それを元に戻すことができる。


 戻すだけだけどね。おまけに回数には限界があるようだ。



 世界を良くするとかそういう力はない。


 正直、冴えない力だとも思うけど、実際に世界が滅んでしまうと重要な力になる。




 こうした、世界に対するゼロサムを持つ僕達に、世界をどうにかしたい面々や組織が近づいてきている。


 魔央と許婚になって二か月。


 ここまで二つほどの組織と一悶着を起こしてきた。


 今は小康状態だけど、今後どうなるかは分からない。




 G駆除の業者手配が完了し、伸びをしていると魔央の声がした。


「悠さん、明日は何時に羽田でしたっけ?」

「11時でしょ」


 と答えてから、念のため僕はメールボックスを確認する。


 日本国首相・石田富士男いしだ ふじおからのメールが中にあった。「明日10時には成田の国際線ターミナルについているようにお願いします」と記載されている。


「ごめん、10時で成田だった」


 羽田と成田、おまけに1時間も間違ったら大変だ。

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