現代破壊神狂想曲

川野遥

Chapter1 破壊神、国家を創る

第1話 破壊神と僕

 それは平和な木曜日の夕方、のはずだった。



 僕は昨日発売されたばかりの、天見優依あまみ ゆいの新曲『永遠の歴史』を聴きながら、ニュースを見ている。



 前曲『未来はいつでも無限大』は明るいポップ調だったが、『永遠の歴史』は勇壮さを感じさせる曲調にパワフルな歌声が特徴的だ。



 ニュースでもこの新曲の話がされているが、発売開始と同時にアップされたユーチャーブでは8時間で全世界11億回の再生がなされているらしい。


 ユーチャーブの再生回数の世界記録は2年前には120億回だったが、『未来はいつでも無限大』が怒涛の勢いで抜いていき、現在4000億回だという。この『永遠の歴史』はユーチャーブ史上初めての兆の再生回数に行くのではないかという話題になっている。


 相変わらず、すごい。天見優依は。


 ただ、さっきからこのニュースばかりなのも辟易だ。


 野球でも見ようかとリモコンを持った途端、それは突然やってきた。




「キャアアアアアアッ!」


 絹を裂くような悲鳴が部屋に、家に、区内に、都内に、国内に、世界に響き渡った。


 僕は立ち上がり、悲鳴が出た部屋へと駆けこむ。


「どうしたの!? 魔央」


 部屋に飛び込んだ僕はまず目がグルグル回っている許婚の姿を見た。


 彼女が「あわわ」と言いながら指さしているもの、それは……

 

 人類のDNAに刻まれた怨敵……Gだ。

 しかも二匹いる。


「僕が何とかするから!」


 そう叫んだものの、僕は殺虫剤か? 新聞紙か? と迷ってしまった。


 これが致命的だった。


「私、Gがダメなんですう!」


 Gに怯える彼女は、僕の助けを待ってくれなかった。



 憎きGをもっとも確実に殺す方法。それは酸素を奪うことである。ごくわずかな例外を除いて、酸素がなければ生きていけない。Gも、だ。


 だから、彼女は宇宙中にあるすべての酸素を完全に抹消した。


 酸素のない世界は憎きGを殺したが、それよりも早く周囲の人間をことごとく窒息死させ、生物を駆逐し、恒星活動をも消失させた。


 地球は、世界は、滅亡した。




『世界を救いますか?』

『▶はい   いいえ』

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