track #33 - Return②
今アタシは事務所
向かいには社長の
ルカがまでが事務所にいるのは、アタシが辞めると言い出したからだ。
アタシが夢見たメジャーシーンは想像とは違った。違ったというより、想像以上に毒されていた。
アタシは音楽業界にも自分にも絶望した。
戦う気も失せた。
この先もこの業界の慣習に抗えば、
アタシは問題児として問題を起こしても誰に迷惑のかからないところで活動しようと決断した。
カニエもサクラもアタシの決断に何も言えずただ悩ましい顔で黙っていた。
「
ルカがアタシのキモチを代弁するように言い放った。
「まぁ、スターにとってアタシはそれだけの存在でしかなかったんだよ、しかたないよ」
アタシは他人事のように笑った。
小野瀬の件で傷ついていないわけではないが、傷は浅かったようだ。
納得のいかないルカは
「
と、アタシを引き留めてくれた。
「才能をこんなことで終わりにするなんてもったいない、
と、カニエにも勧められた。
サクラはチカラになれなくてごめんと何度も謝っていた。
「サクラさん、西クン、お世話になりました。
アタシは
炎上や批判がトラウマになってしまったのだろうか、自分で歌うことにもう興味がなくなってしまったアタシは、オファーくれて興味の沸いたミュージシャンにだけ楽曲を提供していくという仕事に変えた。
毎週生放送していたレギュラーラジオ番組も今期で降板した。
SNSはすべて削除した。
たくさんの同情を集めたサオリは何事もなかったかのように順調に活動を続けている。
これなら、日本にいる必要性するら感じなくなってニューヨークに戻ることにした。
アタシが炎上していたことも、批判の的だったことも、スターとデートしていたことも、知らない街に行きたかった。
ニューヨークは生まれ育った街でパパがいる。
アタシはママを恋人にまかせて、故郷に戻った。
きっと日本でアタシのできることはやったし、もうやれることはない。
◆Season 2に続きます。(11月公開予定)
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