敗北の意味とは
結局俺はその後築いたリードを食い潰し、
「優勝はスプリントでメルクスを下したベルナール! ツール・ド・フランドルの歴史上初めての、黒人の勝利です!」
フランス語、オランダ語、イタリア語、スペイン語、最後に英語で繰り返されるアナウンスが、弔いの鐘のように俺の脳を揺らす。
「な、東郷? だから言ったろ。勝負所まで脚を温存しておけば、こんな無残な負けはなかったんだよ」
チームの中では俺以外に唯一完走した三浦が、得意げにヘラヘラ笑って肩を叩いてきた。確かに
だが。
「2位は負け犬リストの筆頭」
それが自転車ロードレースの鉄の掟。レースで何をするでもなく、ただ走っただけで得た
そしてその掟は俺にも跳ね返ってくる。
序盤から先頭に加わり続け、
「自転車の女神は勝者と敗者を等しく
シーズン納めのメジャー・レース、ジロ・デル・ロンバルディアではそんな言葉が伝えられている。
そんなのは嘘だ。敗者を称える、どんな言葉も
今日、俺は死んだ。チャンスをつかめなかった。
これでまた当分は格式の低いレースでもがき続ける日々が続く。底辺での戦いに目を向けてくれる物好きな
あるいはこんなチームでは、そこでさえ満足な結果を残せない可能性だって、大いに考えられる。
「君はまだ若い」
そう言って慰めてくれる人はいるかもしれない。だが俺にしてみれば、ひとつ負けるごとに、残された時間は少し、また少し、確実に削り取られていく。自分が成長途上でいられるうちに、果たしてあとどれだけこんなチャンスが巡ってくるか。あるいは夢を果たせぬまま、俺の選手寿命は尽きてしまうのではないか。
先の見えない明日が、またやってくる。
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