世界の真実

闇雲ねね

世界の真実

 鳩について少し調べてみたのだが、都会で暮らす鳩には天敵がほとんどいない。本来は天敵であるはずのタカやワシ、ヘビなどはそもそも都会におらず、都会に暮らしているカラスや猫は、他の餌が豊富に見つかるためわざわざ鳩を襲う必要がない。

 鳩は警戒心が薄い動物だ。そうであるのに鳩にとって暮らしやすい環境にのうのうと居着き、繁殖を進めている。何かに怯えることもなく、人間が撒いた餌により、食うにも困らない。恋人も職も立て続けに失って踏んだり蹴ったりな私とは大違いだ。そのうえ野鳥として法でも守られ、平和の象徴と称されてもいる。

 思うに、我々は鳩を甘やかしすぎている。鳩は馬鹿なふりをして、着々とこの世界を征服していっているのではないか。このままでは地球は鳩のものになる。熊だのAIだのハルマゲドンだのに怯えている場合ではない。我々が真に怯えるべきは鳩なのだ。

 はとぽっぽの童謡など、子どもに朗らかに唄わせているが、油断した教育は人類を殺す。我々の目に普段映る鳩の姿が鳩の全てではない。狂気性を秘めながら、それを表に出さず粛々と暮らす人間はいくらでもいる。鳩に限ってはそんなはずがないと何故言える?したたかにヒエラルキーの頂に上り詰めつつある鳩が。

 私など見切り品の惣菜を日々必死に漁り、政府に見放されたように暮らしているというのに!

 なあ、そこのおまえ。聞いてるか。おまえだよおまえ。これを読んでいるおまえ。おまえも鳩を甘やかしているだろう?なあ??甘やかしているよな?!!おい!!!!

 というわけで、私は意を決して立ち上がったのである。箪笥から豆鉄砲を手に取り、居間を出て玄関に向かい、靴を履いた。我々は鳩を駆逐しなければならない。鳩による侵略はもはや佳境だ。力でねじ伏せるより他ない。鳩に人間の力を知らしめてやる。人間様にひれ伏すがいい。

 程なく最初の鳩に出会った。貴様が駆逐作戦の一羽目の標的となるのだ。狙いを定め、私は迷いなく豆鉄砲を放った。

 ぽーーーー!!!!

 鳩はまさしく豆鉄砲を食らった顔をした。

 その瞬間。

 鳩の目がまばゆく光り、一瞬の隙もなく私は鳩の大群に取り囲まれていた。逃げ場を失い、鳩たちに容赦なく捕食されていた。多数の鋭い牙により骨の髄までも食われ尽くして、私の身体は跡形もなくなってしまった。

 ぽっぽっぽ、鳩ぽっぽ。豆が欲しいかそらやるぞ。みんなで仲良く食べにこい。

 童謡のとおり仲良く食べられてしまった私は、身体をこの世から消された。どうにかこうにか亡霊としては居残り、ここには寄稿できたものの、いやはや疲れました。


 鳩は人間を食える生物です。気をつけてください。鳩は道化を演じているけれど、鳩は本当に怖い。決して食われないでください。世の失踪者の大半は鳩によって消されている。その世界の真実を人々に周知させるまで、私は死ねない。もとい、死んでしまっているけれど、魂だけはまだ死ねない。死んでたまるか。。


 狂っくーぅ。狂っくーぅ。

 ああもううるさいうるさい!あなたも鳩駆逐作戦にご参加ください!ご参加ください!死んでも殺す!死んでも殺す!

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