王子様と、ゲーセン
僕と友人にしてメイドにして転生者のクララは、「しょっぴんぐもーる(仮)」の中の、「げーせん」というところで、兄様の次のショーまで時間まで暇をつぶしていた。
「せっ!はっ!」
「まだまっ…!あ、やっちまった。」
「二回戦は僕の勝ちだな」
僕らは「えあほっけー」なるものをやっていた。
「やっぱゲーセンつっても汗かくよなぁ。今度はあの連打するやつとかどうだ?」
クララは液晶画面のついた「げーむ」を指さす。
「僕はああゆうのは駄目だ」
力を入れすぎると電気が出てくるかもしれないから、壊しかねない。
「むしろそれ使えばランキング一位とかいけるかもだぜ?」
「戦う以上、小手先までは使うけど、許されないレベルの卑怯な手段はとりたくない。」
「真面目か。」
クララはけらけらと笑う。
「おい、あっちのランキングすげーぞ!!」
「また〈ローウ様〉が現れたのね!!」
一部のゲーム媒体の近くで人だかりができていた。
「ほー?俺らも見に行ってみようぜ」
「やだ。」
僕は力強く否定した。
「お、おお?」
「人だかりに集まるだなんて王族のやることじゃないしそもそも低俗だ。それに兄様との待ち合わせもあるし、僕は人と関わるのは──」
「話すのは俺がやっから。んじゃ行くぞ~」
「ちょ、待ちたまえ、まだ話は…」
無理やり引っ張られた。
「すいませ~んちょっと~」
─メイドさん?
─こんな所に?
─でも喋り方…
「ほら、変な注目を浴びたじゃないか…」
「そっちのゲームでなんかあったんですか~?」
スルーされた。
だが話しかけられた人はハイテンションで話し始めた。
「見ろよこれ!!〈ローウ様〉だよ!ここのゲーセンにも現れたんだ!!」
「お~?」
「…?」
液晶画面のランキングを人の隙間から見上げる。
一番上には、99999と並んだ文字と、そこにいる者達が〈ローウ様〉と呼んでいるであろう文字が並んでいた。
「はえ~カンスト。すげーな。」
「〈ローウ様〉はあらゆる場所で、あらゆるゲームで名を連ね、この数字をたたき出しているんだ!すごいだろう!!」
「そして誰も見たことがないの!!」
「へぇ~なるほど。」
「カンストだから運営の仕業かと思ったけど、それもないんだ、一度でいいから見てみたいものだな。案外美少女かもしれないぞ。」
「そこはイケメンショタでしょ」
─やんやかんや。
「はぁ、〈ローウ様〉ねぇ。俺もこのゲーム挑戦してみるか。」
「クララ?」
「案外届くかもしれないぜ?」
そうしてクララは───そのダンスゲームを始めた。
「3000!」
ランキング圏外
「6520!」
ランキング圏外
「5730…!」
ランキング圏外
「9500……」
ランキング圏外
「っだ~めだクソだりぃ!やってられっか!!てかメイド服!!!」
画面には〈13520〉の数字が。
「でも、ランキングには入ったじゃないか。あとこれ炭酸。」
投げて渡す。
「仮で入れられた数字の上塗りみたいなもんだし、それでも最下位だけどな。」
クララはぶつくさ言いながら、ランキングの名前のパネルを操作し始める。
─いたずらでローウ様とやらの真似したろ。
と。
「お?」
「あ?」
「…あ??」
どうかしたのだろうか。
〈KURARA〉と入力したクララが振り返る。なんとなく名前が違う気がしたけど。
「くっくっく…はっはっは。はーーーーーっはっ!!」
「うるさい!!」
「あすいません!」
注目されたくなくて怒鳴ってしまった。
「…んでも分かったぜ、こればかりは探偵になった気分だ。」
そしてクララは何を血迷ったのか
「ロロ、全力で踊れ。」
僕に、このゲームを押し付けてきたのだ。
ステップ。
ターン。
ジャンプ。
前後左右に跳び、回り、一切の無駄なく動く。
「映えるもんだねぇ。」
「習い事は・・・ひととおり・・・ねっ!!」
見逃しはあったかもしれない。
遅れたかもしれない。
ただ、今はクララの珍しい頼みごとに、全力を尽くす。
そして、曲が終わる。
皆に見られていた。
─おぉ、うまいな
─あれがローウ様だったり?
─結構外してたよ?
───正直恥ずかしくて動けない。
と
「ロロ!!」
クララが手を引っ張ってくれた。
そのまま駆けだした。人垣から離れていく。
「…あ、ランキング…名前……。」
「それは後でわかる…!」
やがて、大きい液晶画面だけが見えるほど遠く離れて。
数秒たち、その画面には
〈99999〉
そして次に表示された、ランキング画面には。
「──俺はこの字、ゲーセンでは見たことなかったけどな。」
〈ローウ様〉…いや〈Lo〉と書かれた、プレイヤーネームがあった。
「エラー?」
「そ。」
どうやら、電気製品が何かしらの不具合を起こすと、ああなるらしかった。
「おおかた電気が得意な魔法使いが、見つけちゃったんだろうな。で、色んな奴が真似した。」
「…誇りはないのか。」
「それ言ったらおしめぇよ。逆に誇るやつもいるだろうけど。」
結局楽しんだもの勝ちだ、と、クララは炭酸の缶をごみ箱に捨てる。
「…僕は、同じようなことを」
「俺がやれっつったから不可抗力!おら次のゲームやんぞ!!」
・・・。
「クララ……。」
「お?」
「そろそろ昼を食べないか。」
腹の虫が鳴る。
「・・・そうだな!」
まだまだショーまで、時間はあった。
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