悪役令嬢と『私が主人公!!!』
天上天下唯我独尊。悪役令嬢金髪メイドと攻略対象の一人っぽいクール系王子様は、一つのさびれた村にやってきていた。
「さびれた村だね。」
「言うんじゃねぇよ王子様がよ。」
メイドは王子をどついた。
家は木造。
農業と酪農が主。
顔にやんちゃな傷をつけた子供が走り回る。
どこにでもある〈異世界の田舎〉という感じの村だった。
「うぇーい!パンツ見ー!!」
子供の一人がメイドのスカートをめくりあげた。
メイドは静かに子供を見つめた。
見続けた。
ただ、見続けた。
「あ…ひっ……ごめんなさい………踏んでください…。」
少年の性癖は壊れた。
「そういえば君は元男のはずなのに、あれしないんだね。えーっと、「スカートがすーすーして落ち着かない」という。」
「それ、誰が言ってた?」
「メイド長。」
「あの人はマジでほんと…」
どこでそういう知識を仕入れたんだと、メイドは頭を抱えた。
ちなみにメイド長のそういう情報源は、あの青髪のメイドである。
/side C
「ちょいとまちな、そこのメイド。」
「はい、なんでしょう?」
商店のおばさんに呼び止められた。
「金髪…目つき…あんた、クララって知ってるかい?」
「クララはお…私ですが。」
「ふむ…ちょっと違う気がするが……まぁいいか。」
おばさんは奥に呼びかけた。
「シンシア!!!お前が探してた子だよ!!!!」
二階から
「っせーなババァ!!今ルート構築の妄想で忙しいんじゃ!!」
と少女らしくない少女の声が響いた。個性的な娘さんである。そういうことにする。
「親に対してなんだいその口は!?」
おばさんは奥に入った。
しばらく怒号と破壊音と爆音が響いた。
「いや~待たせたね!おら挨拶!!」
「……ジンシアでず…ぐす……主人公です……。」
しばらくして、茶髪をポニーテールにした同年代ほどの少女…シンシア?さんは猫みたいに首を掴まれた状態で連れてこられた。超泣いている。
「ま~た変なこと言ってこの子は…。じゃ、しばらくよろしくねぇ。」
店員のおばさんは、シンシアさんを置いて店に引っ込んでしまった。
「……。」
ロロは人見知りが発動して話しかけられない。というか話すつもりもないモードだ。
泣いてる子の相手って大変だからね、わかるけどね。
「あの~…」
「あ゛のっ!!!!」
うわビビった。
「グララざんでずよねっ!?」
ぐららさんではない。
「はい、一応クララですけど。」
「ぅぅぅぅっっはぁ~~~~!!!!あいだかったですぅ~~~~!!!!ファンです!!!」
勢いよく抱きしめられた。うわぁ。涙とかで服がびちゃってした。
「クララ、知り合いか?」
王子が怪訝な目を向けてきた。
「知らんよ。マジで。」
「!!」
シンシアさんは急に距離を取って、俺を睨みつけてきた。
「あなた、偽物ね!!」
何のだよ。
あぁある意味偽物か。【俺】は【クララ】じゃないし。
そういうことか?
「いい??〈クララ・ファヴロイト〉様はね、〈宝石の花嫁〉の悪役令嬢…主人公のライバルキャラにして、焔の如く強気で!無茶苦茶で!でも男気があって!美しくて!!そんでもって恋のライバルの主人公のピンチに颯爽と現れたり!!結果的に思い人が主人公と結ばれるときも泣きながらも最高の賛辞を送る最高の悪役令嬢なのよ!!!!!ゲーム内キャラランキング2位!!その年の乙女ゲーキャラランキングでも5位を獲得した素晴らしいキャラクターなのよ!!」
何だこの女。
何だこの女。
でもこいつは聞き逃せないこと言った。
ゲームだと。乙女ゲーだと。
そんな単語は今までの旅にはなかった。そういう店もなかった。
それに俺に対する【悪役令嬢】という単語は、俺か王子が教えた奴からしか出なかった単語だ。
こいつは 何か知っている。
「だからあなたみたいな気高くない口調だったりそんななよっとしたロロ王子とかいう隠し攻略キャ…ロロ王子ぃ!?ロロ王子とクララ令嬢カプ!??!?推しカプをこんな段階で!?!?でもにせも…」
「頼むシンシアさん!!!教えてくれ!!色々!!!!!!」
「うっひゃあ近いィ偽物でも顔がいい!!!?」
大丈夫か、この子が情報源で。
─────────〈宝石の花嫁〉
血筋の隔世遺伝かなにかで【力】が目覚めた田舎者の主人公が、どこかの学園で王族や貴族とともに、時に悲しく、時に楽しく、ラブコメしたり青春したり血を流し涙を流し。そんなありがちなお話。
そんな感じで前に進んでいくなんでもありの恋愛シミュレーションゲーム。らしい。
RPGの面も強く、かと思えば一面ボスをひたすら殴り続けて貯金をカンストさせる裏技があったり、いきなりアクションしだしたり、そのくせにシナリオは最高だったり。…まぁ平たく言うとコンシューマの分際で大人気ゲームだったのよ。らしい。
別にいいだろコンシューマ。
そんでそのゲームの【主人公】がシンシアさんらしい。で、転生者らしい。
こんなんでも元は女性らしい。
そんでそのゲームの【悪役令嬢】のクララ・ファヴロイトの大ファンらしい。
ゲームのクララは、兎に角かっこよくて男前で乳がでかかったらしい。
「はぁ~~偽物でもロリクララたそのふとももまくら最高かよ~~…なんでもありとか言っときながらクララルート無かったのマジ許せねぇよ…。」
そんなこんなの話を聞きながら、俺はシンシアさんに膝枕をする羽目になっていた。こうしないと話してくれなかったんです。
「……。」
ロロが怪訝な目を向けてくる。むしろ助けてほしいんですけどねこっちは。
でも動いてくれません。人見知りだからな。
…でもはっきりした。
クララ・ファヴロイトは方向性はどうあれ【悪役令嬢】だったんだ。
…なんでそんなことに転生した瞬間気づいたのか、なんであんなにパニくったのか、未だにわからないけど。
「あぁ~~…で、なんであんたらこんな所にいるのよ?主人公先に殺っとこう的な?」
「ちがう。俺、転生者。このからだ悪役令嬢。死ぬのやだ。超ビビる。逃げる。王子につかまる。旅に連行される。その後かくかくしかじか。」
「なんでそんな片言よ、でも大体わかった…あんた中身男だったのね。そりゃ令嬢の気品みたいなのがないわけだわ。」
うるさいなぁこいつ。聞くこと聞いたし帰ろうかな。
「今「聞くこと聞いたしこいつ面倒だから帰ろう」とか思ったでしょ。」
「主人公の能力って心を読むとかあるの?」
「ちがうわよ、あんた顔に出すぎ。分かりやすすぎ。」
てか心読む主人公とか、恋愛ゲームのしがいがないじゃない。と、続けて呟いた。
「さて、あんたの質問には答えたし、こんどはこっちの用事に付き合ってもらうわよ。」
~~~
「【力】が出ない。」
「はぁ。そうすか。」
「そうすかじゃないわよ!わたしは醤油派よ!!」
しょうもないギャグだった。
「今の14歳のうちに【力】が発現しないと、原作通りに話が進まないのよ。学園から特別待遇で呼ばれないし。シンシアは16で学園に入学するの。だから早く!あなたは【力】使えるんでしょう!ぷりーずへるぷみー!!」
「えぇえ…。」
んなこと言われても、俺そのゲーム知らねぇっての…。
俺だってあの〈日記帳〉がなければ自分の【力】なんて分からなかった。
「シンシアの【力】がなんなのかとか、分かんないのか?」
「そこなのよね~。始める前にプレイヤーに質問が来てね?その時の応答で【力】が変わるのよ。」
「んだってそんな面倒な…。」
「すべての質問に最速で答えたら【風】と【速さを与える】完全なスピードタイプだったり、正義感にあふれた選択をしたら【光】か【炎】で【癒しを与える】みたいなヒーラーか騎士な感じだったり。あとは一時間以上放置したら【鋼】と【重さを与える】なんてのもあったわね。」
「ほ~ん。」
そこまで作りこんだゲームだったのか。むかつくけど感心だ。
「私は主人公!ヒロイン!だから他の人に手伝ってもらうのは当然!!悪役令嬢でも転生者でも王子でも例外じゃないっ!!がんがん手伝ってもらうわよ!!」
くそわがままかよ。
王子様はひとりで査察に行ってしまいました。あとで殴ろうかな。
「震えよ!!」
「……。」
「溺れよ!!」
「……」
「速さを!!」
「…」
「重くなれ!!」
「うわ~きゅうにおもくてうごけない~きっとそうだ~」
「ふ・ざ・け・な・い!!」
夕方まで続いた。
「うちの娘がごめんねぇ。今晩は泊まってっていいからね?」
「いえ、ありがとうございます。」
「クララ様はありがとうございますとか言わない!!」
礼ぐらいいいだろが別に。
~~~
「っだぁ~めだ。分からん。無理。明日はお前も手伝え。」
ベッドに身体を投げ出す。
「いやだ。僕は査察だ。」
ロロは強気に否定した。ああいうぐいぐいくるタイプは苦手なのか?
「そんなこと言って、俺いなきゃろくに会話できねぇだろ。」
「会話しなくても、村を見ればわかるものさ。」
「お前ねぇ…」
今回の報告書は雑になりそうだなぁ…
「…そこまでして、彼女を助ける必要はあるか?」
「んぇ?」
「今君は、国を飛び出して、僕と旅をして。本来の【悪役令嬢】の道から遠くを歩いている。今更彼女と同じ学園に入って、彼女が言ってたような悪役令嬢ごっこをするつもりはないんだろう?」
「んまぁそうだな。」
「既に〈ゲーム〉とやらの運命とは別の道を歩いているのに、〈ゲーム〉の道をたどろうとしている彼女の手伝いをする必要はあるかい?」
「んでも、質問には答えてもらったからなぁ。」
「君が完全に【悪役令嬢】になるかもしれないんだぞ。」
ロロの目は、いつになく真剣だった。
「国を飛び出してまで【悪役令嬢】を避けた君が、そんな危険なことをする必要はないんじゃないか。」
そうだな。…そうだよ。
「明日にでもここを出よう。最低限の査察は終わった。」
でも、だけど。
「俺はシンシアの頼みに応える。」
「っ…。」
「俺は【クララ】の運命を既に歪めちまってる。そのしわよせがここに来てるってんなら、俺はそれを背負うまでだ。これ以上、他人の運命は曲げられない。」
曲げるわけには、いかない。
「死ぬかもしれないんだろう!?【悪役令嬢】は!!」
「だーいじょうぶだって。昼の話聞いてたろ?クララは同じ悪役令嬢でも、そんな悪い未来はたどってなかったみたいだし。むしろ稀にみるいいライバルキャラに近いっていうか。」
「いいのか…君は。他人の物語のために、【自分】の運命が犠牲になっても。」
「…。」
俺は 笑うことにした。
「あくまで「もし」の話だろ?【悪役令嬢】が別で幸せになるかもしれないし。てかお前がさっき言ったように、俺らは旅してるんだぜ?とっくに運命は変わってるっての。」
「…僕と君は、友達だ。無理はしない。遠慮もしない。約束だろ。」
「あぁ、約束だ、覚えてるよ。」
さ、もう寝ようぜ。
~~~
「さ~!!これから今日の訓練よ!と思ったのだけど…。」
シンシアは俺の隣を見た。眠そうな王子様がいます。はい。しっかり連れてきましたとも。
「それは。」
「ロロだが。」
「…僕は必要ないだろう。」
凄い苦そうな顔をしてる。
「…いえ、必要ね。」
「なに?」
おぉ、進展があったか?
「ゲーム内では、主人公と攻略対象の仲が深まることで、【力】が強化されるイベントがあるのよ。」
「それが何で。」
「攻略対象…の一人である、あなたと関われば、もしかしたら【力】が発現するかもしれないのよ。」
ロロを指さす。まぁそうなるわな。
恋愛RPGといえばコミュニケーションでの力の開放、定番だ。
「だから…デートよ!」
「いやだ」
「三人で!!!!!」
「は?」
は?
~~~
街。
「いや~やっぱ映えるわよね~クララ様。コーディネートしてみたかったのよ~!!」
「あの…だな…?こういうひらひらしたのは…」
「シンシア殿、こっちはどうだろう。」
「あ~くっそ、陰キャ王子のくせにこういうの選ぶのがうまい口かよ最高か~?てわけで次こっちねほら着替える!!」
「おいちょやめて」
「大体戦闘用だか何だか知らないけど、メイド服しか持ってないなんて偽物であってもクララ様にそれは許されないわ!!おら!着替えろ!!」
「うえぇ」
「ん~!!ここのパフェ食べたかったのよ~!王子様が金出してくれるっていうんだから、買わなきゃ損よね!」
「言ってないが」
「えっ。まぁ俺の財布から出すか、すいませ~ん」
「いい、僕が出す。」
「推しカプがよぉ…たとえ偽物でも最高か…?」
「君のせいだが」
ひとしきり遊び歩いて。
俺達は道端のベンチで休憩していた
「はぁ~堪能堪能!ロロ王子とクララ様の推しカプ見ながらデートとか最高祭りだわ!!」
「女子の買い物って…こんな疲れるのかよ…」
ロロは一緒に行動するのに疲れたのか、飲み物を買いに離れている。
「なぁ。これってデートなんだろ?」
「ん~?」
「あの王子様と二人きりじゃ駄目なのかよ。」
「はー?あんた子供か~?女子同士でもデートはするもんよ?」
うりうりと指でぐりぐりしてくる。
「それに!あんたの服選んでる時の王子の顔見た?ありゃ絶対……ぐへへ…!」
主人公とは思えねぇ笑い声と顔をしていた。
そして俺とあいつはそういう関係じゃねぇ。
「つーかあんたもあんたよぉ!メイドだか何だか知らないけど遠慮しすぎー!服ぐらいねだったって罰当たんないわよ!!」
「でもなぁ…俺、この世界に来てから…出会いは最悪だったけど、あいつに助けられっぱなしなんだぜ?そんなんで…下手して見捨てられたりしたら…」
それにわがままの言い過ぎで破滅する悪役ルートになんてなったら…恐いなんてもんじゃない。
「ちがう…」
「シンシアさん?」
「ちっがーーーーーーう!!!!!」
シンシアさんはベンチの上に立ち上がると、大声で叫んだ。
滅茶苦茶人の注目を集めているので、マジでやめてほしい。
「【悪役令嬢クララ様】はね!そんな他人の一喜一憂にビビり散らかすクソモブじゃないのよ!!時に傲慢!時に豪快!時に豪傑!天上天下唯我独尊!!!ただのわがまま娘とは比べもんにならないぐらいカッコイイ令嬢なのよ!!」
それは昨日聞いたよ…。なんて俺の目も気にせず演説を続ける。
「だから!!偽物の分際で!クララ様の姿してる分際で!!そんな怯えた目で生きてんじゃないわよーーーーーッ!」
「うわわ揺らすな揺らすな揺らすな!!!!てかそれお前のわがままだろが!」
「そうよ!」
「そうよてお前…。」
こいつの方が悪役令嬢向いてないか?
俺が引っ張られていた服を直している間に、シンシアさんもベンチに座りなおす。
「あんた、王子との旅は楽しい?」
そりゃ…旅は憧れだからな…?
「楽しいけど。」
「あの陰キャ王子も楽しそうだったわ。主人公のアタシでも、【悪役令嬢クララ様】とでもなく、あんたと過ごしてて。」
「…うん?」
「だから。わたしからあんたに命令!!思い出づくりしたげなさい!!」
そういって、ビシッと指さしてきた。
思い出づくり。
「どーせあんた、クララ様に身体返した後のこととか考えてなかったでしょ?」
…そういえばそうだった。
俺の存在理由は間違いで、だからどうにか【クララ】に身体を返すことしか考えていなかった。それがいま生きている意味だから。
でもあいつは【俺】と友達になった。そして俺は気づかなかったけど、今の二人旅とかをあいつは、ロロは楽しんでくれている。
…【クララ】に戻ったら、ロロのこの先はどうなる?他の誰かとも同じような旅ができる?きっとあいつは強いから、一人でも歩いて行けるかもしれない。
でも、隣に誰かいてくれるだろうか?
…。
「あーまた考え込んでる!そーじゃないでしょ。」
シンシアさんはベンチから立つと、目の前で大きく腕を広げて、くるくる回る。
映画のワンシーンのように、スカートが広がる。
そしてこちらを向いて、ぴたりと止まった。
「旅したならわたしより分かってるでしょ?ここは異世界!不思議!魔法!超能力!へんな生き物!あとその他!前の世界じゃ見られないものがたくさん見られるの!!」
「せっかく転生しちゃったんだから!!堅苦しく考えないで、全力で楽しんじゃえばいいのよ!【悪役令嬢】みたいにわがままに、王子様まで振り回しちゃってね!!」
「そんな【友達】との最高の思い出があれば、たとえ離れ離れになっても、陰キャ王子はきっと前を向けるでしょ!?」
太陽みたいにまぶしくて、人の悩みを無視した感情論に近くて。
だけど温かくて強くて、無茶苦茶を通すその姿は
「…主人公かよ。」
「生憎とね。文句あるかしら?」
「いえ…仰せのままに、主人公様…。」
「あんたはメイドとしても悪役令嬢としても、20点ってとこね。」
「っしゃおらーーー!!何クララ様の顔で辛気臭い顔しとんじゃーーー!!!化粧品もアクセサリーもまだまだ買い足りないわよ!!あんたの欲しいのも買ってもらえってのよ!!行くぞオラー!!」
「んぎゅ、わかった。」
いつか。でも。
だったら今は楽しむ、か。
「飲み物買ってきたよー。」
ロロが遠くから走ってきた。
「遅いわよ!!パシリ王子!!!!」
「とても主人公とは思えねぇセリフ…。」
さっきまでの威厳はどこへやらと笑いながら、俺はロロの方へ走る。
そこに 馬が突っ込んでくるなんて
思わねぇだろ。
振り上げた蹄が、俺達に 落ちる。
時が 止まったようだった。
/
時が、止まった。
ぶっ壊れた馬車も。
暴れ馬も。
それに乗ってたおじさんも。
偽物クララも。
陰キャ王子も。
周りの人たちの、すべてが。止まっていた。
今、私の目の前には、みっつの板があった。
[クララをたすける]と
[王子様をたすける]と
〔たいへん!あなたのともだちにきけんがせまってるよ!
どっちをたすけたら!?〕
と書かれた、メッセージウィンドウなんて呼ばれてる板だ。
へぇ~、なるほど。
ゲームだったらこういう時、助けた方のルートに行くもんだよね~。
クララ様ルートなんて原作になかったし、見てみたいよね~。
でもでも、隠し攻略キャラの王子様も興味深いよね~。
う~ん、悩んじゃう♪
舐めるなよ、
私は
知るかボケ。
「私は!!」
私の時は
「人気投票第1位!!!男気が強すぎる乙女ゲー主人公!!シンシア!!!!!」
私のわがままは
「選択肢なんぞ糞な縛りで!!!最強の私が!!!」
私だけの選択は 縛らせない
「
そんで、全部救う。それが主人公ってもんでしょ?
あーあ、こりゃ全治一か月だわ。
/
「あの…マジで色々ありがとうございました…なん、ですけど…それ大丈夫なのか?」
「は、私は主人公だからね。危機で力に覚醒とか最高じゃない?」
「そうじゃなくてその・・・」
翌日、ここを旅立つ時。シンシアさんは見送りに来てくれた。包帯ぐるぐる巻きの松葉杖状態で。
「【時を操る力】っか~~!!よく考えたらフルコンプのためにセーブロード繰り返しまくってたからな~!!いやマジで気づかんかった!!」
「体ァ!ズタボロなんですけど!!」
「時止めた状態で滅茶苦茶動いたらこうなるとか予想できんて~!いいでしょあんたら助けられたし!一個だけど【力】にも目覚められたし!!君たちに〈主人公の手伝い出来て偉いで賞〉を授与する!」
「僕も勉強になった、ありがとう。」
「いいね陰キャ王子!なんのことかわかんないけど!」
「はは。」
ロロは呆れ顔だ。でもなんだか少し嬉しそうだった。
「シンシア~~!!あんた家の手伝いは~~!!!!」
遠くからお店のおばさんの声が聞こえる。
「こんなズタボロの愛娘に仕事させるとか鬼かババァ!!」
「【力】に目覚めるまで家の手伝いしないとかふかしこいてた馬鹿が何言ってんだい!!だいたい治療魔法こっそり勉強してんの知ってんだよ!!!!」
「やっべクソババァ家探ししてやがった!じゃ私は逃げるから、あんたらも死ぬんじゃないわよ!あと、あんたもしっかり【
「ああ、ありがとー!」
シンシアさんは松葉杖を放り投げて走って行ってしまった。
「嵐のような人だったね。」
「というか、嵐だろ。」
俺達も、村を離れた。
~~~
「何を書いているんだい?」
「日記帳。もし【クララ】に戻った時に、手助けになるようにってな。」
「へぇ。」
「あとはまぁ…、思い出づくり的な?見返して楽しむのもいいだろ。」
「なるほど、…僕が撮った写真ものせようか。」
「えっあるのか!?いいね。」
「ふふ、ところで【悪役令嬢】しなさいって、どういうことだい?」
「さぁね~。あーでもそうだな…今はこのくらいで…うん。」
「今日は~…どこかで魚料理を食べに行きたい…とか?」
「いいね。」
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