第55話 蛙沼騒動の後のこと
三つの転移門のゲートマスターとなって俺は――現実世界での休暇を挟みながら――異世界ではそれからしばらくの間は冒険者として活動をして過ごしていた。
その際に蛙沼以外でも近隣のゴブリンの数が多いという噂が出ている場所にも向かったりもした。
だが噂自体が間違っていたり、あるいは異常繁殖の原因が転移門によるものではなかったりと、残念ながら新たな転移門の発見に至らなかった次第である。
(やっぱりこのエリアの転移門は全て押さえたってことなんだんだろうな)
謎の声がエリア1249だかの転移門がゲートマスターの管理下に入ったと言っていた通り、そのエリアの外に行かなければ新たな転移門は見つからないだろう。
(まあその確証が得られたからこの確認作業も意味がない訳ではないしな)
なによりゴブリンの存在が問題となっている地域でゴブリン退治をすればするほど、伯爵家から少なくない報酬金が貰えるのが大きい。
雷電蛙という亜種との戦いで銅の短剣は失われてしまったし、そうでなくとも魔物との戦いには強い武器や身を守る防具が必要不可欠なことはその戦いで嫌というほど身を染みた。
それもあって俺はそれらの報酬金などを使ってウルケルに新しい装備を見繕ってもらっている。
なお、その素材の一部には雷電蛙が使われていた。
第四階梯の真言である『雷電』は、消費真力1でもかなりの威力を発揮したのだ。
それ自体は敵に対する強力な攻撃手段が増えたということなので嬉しい限りである。
ただ消費真力が2以上になると威力があり過ぎて、発動者である俺にも反動というか発生した電撃の余波が襲ってくるのだ。
真力が最大の状態ならそれでも多少痺れるくらいで済むのだが、『雷電』を発動する際には真力を消費する。
つまり『雷電』使えば使うほどに肉体の強度は下がるのだ。
それもあって下手に真力の低い状態で高威力を出すと、敵を攻撃する前に俺がタダでは済まなくなる可能性すらあり得る。
それを防ぐために耐電性が高い雷電蛙の皮などを防具に使用することにした訳だ。
勿論別の方法もあった。
例えば防具ではなく『耐電』の真言を得るとかである。
ただその時点で8つの真言を手に入れていることもあって、残りの枠も少なくなってきている現状でそれは賢明ではない。
雷電蛙ですらブロンズ級の魔物であり、それ以上の敵を倒すためにはより一層威力の高い攻撃手段が必要なのは以前の戦闘経験からも明らかなのだ。
だから俺としては真言ではそちらを強化したいと考えた次第である。
(ゴブリンの真言が足を引っ張ってるせいで一流の冒険者にはなれないだろうけど、それは分かっていたことだから仕方がない。それでもスチール、出来ればシルバー級の敵くらいまでは倒せるようになっておきたいな)
そのくらいのクラスの魔物を安定して倒せるようになれば収入に困ることはまずないそうだし。
何をするにしてもより多くの収入を得る手段は幾らあっても困らないだろう。
そういった考えの元、それまで保留していたリュディガーから新たな真言を手に入れるという話も実行に移している。
つまり今の俺はその新たな一つも合わせると全部で九つの真言を得ている形だ。
(一般的な限界の十個まではあと一つか)
そこから更に真言を手に入れるためには上のランクの強力な魔物や亜種などの討伐が必要になるそうだ。
だから一旦はそこで頭打ちとなるはず。
もしかしたら転移門の機能を活用できれば亜種を生み出して倒すことで、その限界を超えられる可能性もあるかもしれないが、あくまで可能性の話だしそれを当てにし過ぎる訳にもいかないだろうし。
「だとすると金を稼いでより強い装備を揃えるのが鉄板かな」
頭打ちになった他の冒険者もそうすることが多いそうだし、一先ずは俺も先人たちに倣って努力に励むとしよう。
ちなみに雷電蛙はブロンズ級の魔物だが、滅多に現れることのない魔物だったこともあってかなりの高値で取引された。
なんと防具に使用した皮などの分を差し引いても大銀貨十八枚ほどの収入になったのである。
なお素材の中で一番の値段が付いたのは魔石だった。
運が良かったのか魔石は壊れることなくかなり状態が良いまま取り出すことができたのも値段が吊り上がった理由らしい。
更に魔石に込められた真言が『凝縮』という放出系の真言を溜めて放てるようになる第三階梯ものではなく、それこそ俺が手に入れた第四階梯の『雷電』などであったなら更に数倍以上の値段だったかもしれないとのこと。
(階梯の高い真言が込められた魔石は利用価値も高く、それ故に値段も高くなりやすいか)
魔物から採れる素材の中で一番値段が高くなり易いのが魔石だということは聞いていたが、改めてそのことを実感させられる出来事だった。
そんなこんなで大金を手に入れたけどその多くを新たな装備を仕立てるのに使ったり、リュディガーと新たな真言を得るために迷宮と呼ばれる魔境とはまた違った魔物の生息地に向かったり、その合間に仲良くなった先輩冒険者であるゴラム達と時間が合えば飲んだりしながら割と異世界での生活を楽しく過ごしていた時だった。
遂に日本でも、異世界に人員を派遣することが正式に決定したのは。
しかもそれに選ばれたのは俺が管理する転移門である。
どういう理由で俺が選ばれたのかは教えてもらえなかったが、仕事として振られた以上はやるしかないだろう。
ゲートマスターになった時からこういうことになる可能性があると話されていたのだから。
そんな感じで、俺は現実世界で派遣されることとなった人達との顔合わせをすることになるのだった。
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