第27話 戻ってきた異世界
今度の転移は多少の眩暈を覚えたが意識を失うことはなかった。どうやら
(転移門に意識を向けると機能が何となくだが-分かるな。これも
イメージとしては頭の中に門の機能が書かれた本があり、その内容を読んでいるような感じだ。
残念ながら書かれている内容はごく一部だけで抜けている個所も多いから分かる範囲は限定的だが。
「それでも分かることがあるだけ助かるな」
転移門はただ異世界に転移できるだけの門ではなく、その中に色々な機能が組み込まれているようだ。
例えば転移門は門を潜って転移した生命体を異世界に適応させることができる。その詳細についてはまだ分からないがそういう機能があるらしい。
恐らくこの機能がなかったら俺が魔物を倒しても真言を得ることはできなかっただろう。
それどころかまともに呼吸することすら出来ずに死んでいたかもしれない。
こういった複雑な機能があるので転移門は稼働するのに少なくない真力を必要としており、普段は龍脈と呼ばれる大地の中に存在する力の流れからその為のエネルギーを得ているようだ。
「……思っていた以上に日数が掛かりそうだな」
連れて帰る予定の人数は俺以外に三人。
その為の真力を貯めるのに掛かる日数は一週間くらいだろうことが分かる。
大して多くもない俺の真力を注ぎ込んでその日数は変わりそうもないのでこの期間を縮めるのは無理そうだ。
まあそもそもこんな安全を確保されていない森の中で真力を消費する気もないのだが。
「よし、とりあえずハリネ村に戻るか」
元々あの遺跡に何日か張り込む予定だったので数日は戻って来ないかもしれないと村長達には伝えてあるからそこまで心配はされていないだろう。
だがそれでもその期間が長くなるのはあまりよくない。特に日本人の彼女達は置いてかれたと思うかもしれないし。
懐からある道具を取り出す。これはリュディガーからもらった物だ。
「元の世界に転移しても
問題なく作動していることを確認してホッと息を吐く。これがなくても帰れるとは思うのだが、やはり道標があるのとないのとでは労力が大違いだし。
これは『共鳴』の魔石が組み込まれた異世界特有の特殊な道具、通称は真器だ。
異世界では倒した魔物から真言の力を有した魔石や魔晶と呼ばれる鉱石のような物が取れることがあり、それを特殊な方法で加工して使えるようにしたものをまとめて真器と呼んでいる。
例を挙げると『
これは分かり易く言えばエネルギーが真力に変わったチャッカ〇ンで異世界では色々な場所に火をつけるのに使われている。
そして俺が持つこのコンパスのような真器には『共鳴』の魔石が組み込まれており、対となる魔石の方角を常に正確に指し示すという機能を有していた。
距離が近ければ近いほどその精度は高くなるが、どれだけ距離が離れてもその効果がなくなることはないのでこうして道標的な使い方ができるのだ。
(雨が降ってきそうだし少し急ぐか)
日本では快晴だったのだが、こっちはあまり天気が良くない。
のんびりしていたら雨の中ぬかるんで泥だらけになりながらゴブリン共が居る森の中を抜けなければならなくならなそうだ。
その状況でも負ける気はしないが、好ましい状況ではないのでさっさと行くとしよう。
俺は手にした真器が指し示す方向へと真力によって強化されたことで軽くなった身体で駆けて行った。
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