2023年10月12日

 少年は幼馴染の少女を探している。彼女は軍事クーデターの中で生まれたレジスタンスで軍事戦略家の手伝いをしているのだが、先の交戦で行方不明になっていた。崩れたコンクリートと瓦礫の中を歩いているうち、少年は半壊した研究所にたどりつく。機材は撤去されるか壊されるかしており、壁際のキャビネットは全て引っ搔き回されてひっくり返っている。床には水浸しになってから乾いたようなしなびた書類が散らばっている。中央の大きな四角いデスクの上にも同じような書類が乱雑に積まれており、デスクの表面が見えないほどだった。デスクの端にタイムカードが詰め込まれた箱が置かれている。少年はタイムカードだけ濡れた形跡がないことに気が付き、中をあさってみる。するとタイムカードにまぎれて手紙が一つ挟まれているのを見つける。少女からの手紙だと直観して封を開ける。手紙は少年に宛てて書かれており、とりあえず無事であること、追われる身なので身を潜めていること、近々新たな戦術兵器で軍に攻撃を仕掛けることなどが書かれている。奥にまだ空間があるので足を踏み入れてみると、水の入っていない巨大なプールが広がっている。プールは薄い黄色のタイル張りでところどころに緑や茶の藻が付着している。空間の壁三面はガラスでできていたようだが、今は割れて残骸が散らばっている。少年は少女の元に向かうことを決める。

 少女はレジスタンスの仲間と協力して研究所を制圧し、新たな戦術兵器の材料となるクジラの奪取に成功する。研究者の女の指導のもと、仲間たちとともにクジラの死体をプールから引き上げて解体を始める。兵器化のためにクジラの中身を空にしようとするが白い臓器をいくら引きずり出しても終わりが見えない。取り出した臓器は手押し車でどんどん運び出し、流れ出た体液はモップで掃除していく。誰もが戦いが終わった後のことを夢見て前向きに邁進している。少女はその空気感を好んでいるので戦いが終わるのが少し寂しい気もするが、同時に新たな兵器が敵にもたらす大破壊を間近で見られることに胸が高まっていた。

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