≪知恵の鉄女≫3
「私の旭と随分楽しそうねぇ、≪
「詩?」
僕の後ろで大人しくしていた詩が≪
「…一応、≪
≪
(というか敬語のシェーラ先輩はマジで品行方正だな…)
さっきまでの残念な下ネタ美人なんかではない。服をちゃんと着ていれば模範生だ。
「≪
「してないです。というかさっきから僕への敬意と侮蔑が入り混じって喋り方が可笑しいんですけど…」
「目の前の≪
「なるほど…」
≪
「≪
「≪
≪
「シェーラ先輩の言うことはもっともだったし、AKARIとは違うよ。≪
「そう…」
AKARIとシェーラ先輩は二人とも僕の信者である点、そして、≪
「それに≪
「っ!」
「…」
僕は≪
(詩が僕をジトーっと見てくるのは何なの?)
僕が詩の意図を読み取ろうとしていると、
「…興がそがれたわ。また後で
「台無しだよ」
下ネタを吐きながら颯爽と教室に戻ろうとするシェーラ先輩にツッコミをいれた。
「私も教室に戻るわ。空前絶後の超絶おバカさん」
「僕、詩に何かした?」
詩がちょっと怒りながら行ってしまった。
「ってかこんなことをしてる場合じゃない!授業が始まっちゃう!」
僕は急いで教室に向かった。
━━━
━━
━
「ねぇねぇ山井君━━━」
「…」
「それでね~━━━」
「…」
「聞いてる?」
「…」
陽キャ軍団も解散し、一人一人が散り散りになっていた。ただ、宮下さんを見ているということは未練はたらたらなのだろう。僕としては酷いことをしてきた人間たちなので、せいぜい反省してほしい。
問題はAKARIだ。こいつが休み時間ごとに僕に絡んでくるのだ。トイレに逃げても、男子トイレの前でずっとニコニコ待っているのだ。怖すぎるが、反応すると、相手を喜ばせてしまうから無視している。
ただ、話の内容がどんどん酷くなるのだ。
「私たち、付き合ってから丁度、三年目だよね?」
嘘告白されてからまだ一か月も経ってません。
「昨日の夜、激しかったね。私、今もクタクタだよ」
まだ童貞です。
「昨日、病院に言ったら陽性だったの…」
だから童貞です。
「名前は何にする?」
「だから童貞だって言ってるだろうが!?」
僕はあまりにも酷い思い込みについにツッコミをいれてしまった。宮下さんは眼をぱちくりさせたかと思うと、パアっと笑顔になった。
「やっと反応してくれたね!」
「ざけんな!宮下さんのせいで僕が童貞だってバレたじゃないか!」
「ねぇねぇ、二人目も作らない?」
「話を聞けよ!」
≪
佳純先生に来てもらうしかないかもしれない。そう思っていたとき、女神が来た。
「失礼します…って何事かしら?」
(シェーラ先輩!?)
朝のことが思い出されたが、この人の表の姿は風紀委員長だ。宮下さんを引き剥してもらえるかもしれない。
「すげぇ綺麗…」
「あの容姿で成績もトップなんだから凄いよな…」
「お近づきになりたいけど、ツンツンしててとっつきづらそう」
「そんな人がうちの教室に何の用なんだろう?」
ヒソヒソ言っているのはすべて聞こえた。何の用でここに来たのかは分からないけどとにかく助けてもらおう。
「シェーラ「三条先輩、うちの教室に何か用ですか?」」
(おい!)
僕が行くよりも先に、野球部の川村君が話しかけにいった。とてもニコニコしている。サッカー部の平野君と藤野君も行こうとしていたらしいけど、一歩先をいかれたらしい。仲間に舌打ちしている時点で陽キャってつながりが薄いんだと再確認させられた。
「≪
「あっ、そうですか…」
三人から「またお前か」という視線を受ける。そして、シェーラ先輩は三人から僕に視線を移して、顔が余計に強張った。上履きなのに、ヒールのように足音を鳴らしながら僕の方に向かってくる。
「こんにちは」
「どうもです…」
朝のこともあるが、また何かやらかしてしまったのかと僕も表情が強張る。何を言われるのかと思っていると、
「≪
「シェーラ先輩!?」
僕の眼の前で土下座をしてきたのだ。教室中が喧騒に包まれた。
「≪
「…」
鼻息荒く土下座をするシェーラ先輩の奇行がクラスメイト達が見ていた。しかし、
「あいつマジか…」
「何をしたんだよ」
「シェーラ先輩を淫乱にするってあいつ本当に何者だよ…」
氷の女王のようなクールなシェーラ先輩を下ネタ大好きの変態に変えた『鬼畜ロリ王』たる僕に戦慄の表情が向けられていた。
僕は学校生活が徐々に詰んでいくのを感じて、空を仰いだ。
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