≪暖炉の聖女≫VS≪冥府の花嫁≫
「旭がこっちにいそうな気がしたから待っていただけよ」
「何で僕が聞こうと思ったことが分かるんだよ…」
≪
「…音無さん、私は劣等生の旭君の成績を上げてあげないといけないの。分かるよね?このままじゃ留年なの」
河合s「佳純」…佳純先生はいつになく厳しく生徒に当たっていた。佳純先生は誰に対しても優しいということで有名だ。それが詩に対しては敵意に似た感情を向けていた。
「ええ。なので、私が彼女として旭を助けますのでお構いなく」
「ちょっ!」
詩が僕の腕を佳純先生とは反対側から抱えてきた。朝に味わった胸の感触が腕全体に伝わってくる。
「っ!そんなわけにはいかないよ!旭君を責任持って優等生にするのは私だよ!」
「あぐっ!」
今度は佳純先生に逆側に引っ張られる。勢いあまって佳純先生の大人な胸の中に飛び込んでしまった。僕が逃れようとしても、佳純先生は僕を抱え込んだ。
「も~旭君ったら。私のことが好きだからって胸に飛び込んでくるなんてダメだよ~?そんないけない生徒には家に帰ってお仕置きだよ?」
「離しなさい!無駄な贅肉を使って誘惑なんて卑怯よ!」
詩が珍しく取り乱していた。そして、勝ち誇ったように佳純先生は詩に宣言した。
「残念だったね~。年季しか入っていない幼馴染じゃあ大人の色香には勝てないんだよぉ?旭君の初ほっぺチューだってさっきさせてもらったし、実質新婚も同然じゃないかな?」
詩に対してマウントを取る佳純先生は普段の様子からかけ離れていた。誰に対しても優しいという顔は剥がれ落ちて、独占欲強めの危ない大人の女性の顔をしていた。
「ほっぺにチューなら毎日のようにしてるわよ」
「「え?」」
詩はきょとんとした様子で爆弾を投げてきた。僕と佳純先生の声が重なる。佳純先生が一瞬力を緩めたところで僕は拘束から抜け出した。ただ、それでも気になるのは詩の言動だ。
「え?え…?どういうこと?」
僕の疑問をそのまま佳純先生が代弁した。
「どういうことも何も、家が隣だから鍵を開けて侵入して、同衾して、ほっぺにチューして帰っていただけよ?」
照れながら僕の方を見てくるが、内容が戦慄させられるものだった。そういえばほっぺが濡れるような感覚を味わったことがある。
(ていうか起きろよ僕!)
自分に呆れてしまう。けれど、それと同時に僕は寝ている間にとんでもないことをされているんじゃないかと詩を見る。
「私が無節操な女だと思う?まだ処女よ」
「それで安心するわけがないよ…」
責めるように詩が僕に言ってくるけど、それだけのことをしているということを自覚してほしい。
「ズルい…」
隣からだらんとしている佳純先生の姿があった。僕と詩は佳純先生の方を見る。
「ようやく≪
「佳純先生…?」
「あっ、でも、私のキスで音無詩のキスは上書きされたもんね!となれば、私が旭君にマーキングしたも同然と言えるかな。最新の女は私。初めてを奪われたのは癪だけど、今の一番は私だよね?」
「え…と」
佳純先生が発狂したかと思うと今度は聖女のような微笑みを向けられる。僕に質問を投げられても僕としては何もできない。
「旭」
「ん?」
詩に反対から袖を引っ張られる。
「好きよ。旭」
「はい!?」
「愛してる」
「え?ちょ?」
いきなり詩から愛のメッセージが送られてくる。僕はドキドキしながら、一言一言を受け取るが、顔が赤くなるのは防げない。悔しいことに詩は美少女だ。しかもとびきりのだ。
ヤンデレだからといって照れない男なんていないだろう。しかし、
「≪
佳純先生が怒号を上げる。学校中に響きそうな声が廊下に響き渡った。職員室から教師が出てくるが、
「あっ、すいません。ちょっと感情が高ぶってしまって~」
「そうか…」
体育教師が僕を見て、察した見たいな顔をしていた。そして、僕らのもとに来た。というより僕を見ているようだった。
(見当違いも甚だしいので勘弁してほしいんだけど…)
「山井な…佳純に迷惑をかけて恥ずかしいと思わないのか?」
「いや、あの」
「言い訳なんてするんじゃねぇ!お前のせいでどれだけの人間が迷惑を被ってるか分からねぇのか!?」
恫理由も聞かずにキレられた。恫喝にも似た声音に僕は一瞬だけ恐怖した。けれど、
「お前のために言ってるんだ。佳純に代わって俺が指導してやる」
佳純先生にアピールしようとしているだけにしか見えない。僕のことなど、どうでもいいのだろう。そういう態度を見ると、途端に冷めていった。
「熊高先生」
「おう、このダメなやつは俺が「邪魔です」え?」
熊高先生は驚いていたが、佳純先生は笑顔のままだった。
「旭くんは私の生徒です。余計なことをしないでもらえませんか?」
「ぐっ、だが」
「私の大切な生徒を勝手に問題児扱いして、怒鳴りつけるような人に頼ることなんて何もありません。ていうか名前呼びも許可してません。セクハラで訴えますよ?」
「ッ」
詩に対するものとは全く別物の怒りだった。心底軽蔑しているようなその視線を受けた熊高先生は、
「覚えとけよ…?」
顔を真っ赤にして捨て台詞を吐いた。さして逃げていった。廊下にはまた三人しかいなくなった。
「…やるじゃない」
詩が佳純先生を褒めてる。
「ふん。≪
「そうね…」
佳純先生と詩が向き合っているが、僕は何度も聞き逃した言葉がようやく耳に残って反芻していた。
(僕のことを≪
ここ最近の詩、愛梨の行動からもしかするとと思ったけど、また信者を見つけてしまったのかもしれない。すると、
「流石に≪
≪
(え?重度の信者じゃないの?)
≪
なぜだかは分からないけど、詩には確信があるらしい。
「それとも淫行教師の≪
「…ちっ、≪
詩は当たり前のように佳純先生の正体を見破っていた。
すると、正面で向き合っていた佳純先生が僕の方に向き直り、西洋の騎士のように跪いた。
「改めて≪
三人目の≪
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