第5話 この若さで1200万をポンと用意出来る職業って何?
車内が一瞬、静まり返る。
「おいクソガキ、働いて返しますとか眠たいこと言いだすんじゃねえだろうな、闇金なめてるとぶっ殺すぞ」
黙ってろと言われた1分後に後ろを振り向き怒鳴りだすタトゥーゴリラ、本物のゴリラより頭悪いんじゃないかコイツ、前見て運転しろよ馬鹿ゴリラ。
そう思っていると、何かが物凄い速さで飛んでいく。
ゴツンという鈍い音の後「ぎゃっ」とタトゥーゴリラが呻き声をあげる。
タトゥーゴリラに当たったのは、トカゲ男の投げたメタルのジッポライターだった。
「俺は黙ってろと言ったはずだ、
底冷えするような冷たい声、ヒシヒシとトカゲ男の怒りが伝わってくる。
その空気を察したタトゥーゴリラは「すんませんアニキ、本当にすんません、すんません」と何度も頭を下げてトカゲ男に謝罪を繰り返す。
いい気味だタトゥーゴリラ、少女に失礼な事を言った罰だ。
あとからジッポを拾って、忘れずトカゲ男に返しておこう。
「話を戻す、お嬢ちゃんの借金1200万円を兄ちゃんが肩代わりするということでいいのか?」
「ハイ、お願いします」
「条件がある、今日中に
現金か……当然だが1200万を現金では持っていない、銀行でおろすにしても今日中には難しい可能性がある、一応聞いてみるか。
「一応聞きますが、あなたの銀行口座にネットバンキングで振り込むのでは駄目ですか?」
「駄目だ、こちらの都合で悪いが俺は銀行口座を持っていない」
暴力団対策法か、あっち側の人は銀行口座を作ることが出来ないと、聞いたことがある。
時計を見る、時計の針は14時ちょうどを指している、ギリギリだ……間に合うかは賭けだな。
「ここから一番近いサクラサク銀行は、どこの支店になりますか?」
スモークを貼った
「ここからなら、浅草支店だな」とトカゲ男が答える。
「分かりました、一本電話をかけてもいいですか?」
「かまわない」
「ありがとうございます」
ポケットのスマホを取ろうとするが、手錠をかけられているせいで、うまく取れない。
もたもたしていると、後ろからカギがフワリと飛んでくる。
「お嬢ちゃん、そのカギで兄ちゃんの手錠を外してやりな」
「は、はい」
僕とトカゲ男のやり取りを祈るように見守っていた少女が、慌ててカギを拾い僕の手錠を外してくれる。
手錠を外したあと、僕の手をぎゅっと強く握りしめ「ありがとうございます、ありがとうございます」と泣き崩れる少女。
「いいんですよ、大丈夫です」少女の手を握りかえしてあげる。
「このご恩は一生忘れません、お金は何年かかっても必ずお返しします」瞳から大粒の涙をポロポロと流し、嗚咽をあげながら感謝する少女。
本当に良い子だな、この子だけは絶対に助けたい、異世界に行くのはその後でいい。
「急がないと銀行が閉まってしまいますよ」と笑顔で少女に伝える。
「はっ、ごめんなさい、ごめんなさい」と真っ赤になりながら、慌てて手を放す少女。
異世界に行ったらこの子みたいな可愛い子をメイドさんにしたいなと不謹慎なことを考えながら、急ぎサクラサク銀行の担当に電話を掛ける。
◇◇◇◇◇
電話を掛けてるのは銀行の担当か、個人でメガバンクの担当が付いているという事は、資産が1000万以上あるという事だ、この兄ちゃん一体何もんだ。
この若さで1200万をポンと用意できる職業、政治家、医者、弁護士、どれもピンとこないな……。
◇◇◇◇◇
「伊藤さんのお願いなので何とかしたいんですが、これからだと時間的にちょっと……明日では駄目ですか?」
渋る銀行担当者、仕方がない奥の手をだそう。
「そこをなんとか、この間ススメてくださった投資信託、契約しようと思っているんですが……」
「なんとかします」
即答だった。
「ありがとうございます、これから浅草支店に向かいますので現金の用意お願いします」
電話を切る。
「なんとかなりました、すいません急ぎで浅草支店に向かってもらえますか」とトカゲ男にお願いする。
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