第4話 それ全額僕が立て替えます
「おいゴリ、この兄ちゃんも一緒に連れて行くから拘束の準備しろ」
トカゲ男がタトゥーゴリラに命じる。
それにしてもタトゥーゴリラの奴デフォルト呼びがゴリとか、そのまんまだな。
タトゥーゴリラが車から手錠を持って走ってくる。
「おいクソガキ、命拾いしたとか思ってないだろうな、お前は必ず東京湾に沈めてやるから覚悟しとけよ」
タトゥーゴリラが手錠をかけながら、僕にだけ聞こえる声で呟く。
普通の人なら震えあがる所だと思うが、僕からすれば異世界転生のチャンスをありがとうございますといった所だ。
「お前なに笑ってんだ、イカれてんのか?」
いかんいかん無意識の内に笑っていたようだ、注意せねば。
タトゥーゴリラに腕を掴まれ
運転席にタトゥーゴリラ、2列目助手席の後ろに僕、運転席の後ろに少女、3列目にトカゲ男が乗り込む。
「アニキ、風呂屋に直行でいいっすか?」
車を走らせながらタトゥーゴリラがトカゲ男に問いかける。
「ああ、それでいい」
トカゲ男はタバコを吸いながら答える、暫くすると車内にタバコの匂いが充満する。
少女はタバコの匂いが苦手なのだろう、先ほどからゴホゴホと咳込んでいる。
「それにしても姉ちゃん、風呂屋の仕事を銭湯の仕事と勘違いとか傑作だな、俺たち闇金の言う風呂屋は風俗に決まってるだろ」
タトゥーゴリラがそう言いながら大笑いする。
少女の方を見ると耳まで真っ赤にしてプルプルしている、ウサギみたいで可愛い。
「今まで色んな女を風呂屋に沈めてきたが、こんなにスレてない女は初めてだ、きっと店でも人気が出るだろうよ」
タバコの煙を吐きながらトカゲ男が呟く。
「姉ちゃんが働きだしたら俺も通わせてもらうわ、そん時はたっぷりサービスしてくれよ」
デリカシーの欠片もないなタトゥーゴリラ、僕がチート能力を手に入れたら、お前には必ず地獄を見せてやる、覚悟しておけ。
少女は俯きポロポロと大粒の涙を零している、親の作った借金返済のために、何の罪もない少女が風俗堕ちするなんて、絶対に駄目だ。
「あの、発言してもいいですか?」
僕がそう言うと食い気味に「おめえは黙ってろクソガキ、ぶっ殺すぞ」とタトゥーゴリラが怒鳴る。
口を開けばぶっ殺すぞ、ぶっ殺すぞと頭の中までゴリラだなタトゥーゴリラ。
「いいぞ兄ちゃん、言ってみろ」
後部座席から笑いながらトカゲ男が呟く。
「アニキ~こんなクソガキの言う事なんて、聞く必要ないっすよ」
「いや、この兄ちゃんが何を言うのか聞いてみたい、お前が黙ってろ」
「……ハイ」
ざまあみろタトゥーゴリラ、脳筋ゴリラは黙ってろ。
「彼女の借金は総額でいくらあるんですか?」
タバコの煙を吐き出しながら「1200万だ」とトカゲ男が答える。
「それ全額僕が立て替えますので、彼女を風俗に連れて行くのはやめてもらえませんか」
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