第3話 当然だ!異世界に行く覚悟ならずっと前から出来ている
僕の声に反応した闇金の二人がこちらを振り向く、タトゥーゴリラの迫力が半端じゃない。
「なんだクソガキ、ぶち殺されてえのか、ああっ」
ゴリラの咆哮のように叫ぶタトゥーゴリラ、おそらく本当に人を殺めているのだろう、恐ろしい迫力だ。
恐怖から自然に体が震えだす、それでも一歩前に出て僕は声を張り上げる。
「彼女嫌がってるじゃないですか、車には僕が代わりに乗りますので、彼女は許してあげてください」
それを聞いたタトゥーゴリラは完全に切れたようで「なめやがって」と怒鳴りこちらに向かってくる。
タトゥーゴリラの丸太のような腕から繰り出されるパンチが直撃すれば一発で異世界転生だろう、僕はあちらの世界で絶対に欲しい異能力を頭に思い浮かべながら笑みを浮かべる。
「やめて、お願い」
叫ぶ少女、だがそんなことで止まるタトゥーゴリラではない、僕はタトゥーゴリラに胸ぐらをつかまれ、宙吊り状態にされる。
「このまま、ぶっ殺してやるよ」
く、くるしい息ができない、タトゥーゴリラの両手を無意識に掴むがビクともしない、意識がだんだん遠くなり死が頭をよぎる。
最後が痛い感じじゃなくて良かったと思っていると、トカゲ男が「離してやれ」とタトゥーゴリラに命じる。
「でも、アニキ」
渋るタトゥーゴリラ。
「聞こえなかったのか、俺は
ピリッとした口調からトカゲ男の苛立ちが伝わってくる。
それを察したタトゥーゴリラは慌てて「すんません」と謝罪し僕を地面に放り投げる。
地面に放り投げられた僕は、ゴロゴロと転がり仰向けになる、酸欠で目がチカチカする。
くそっトカゲ男め、良い所で邪魔しやがって、あと少しで異世界に行けたのに。
そんな事を考えていたら、僕を心配した少女が駆けてきて介抱してくれた。
「大丈夫ですか、しっかりしてください」
心配する少女の顔がすぐ目の前に、ずっと俯き泣いていたから気付かなかったが、少女はメチャクチャ可愛かった。
「お嬢ちゃん、そこのヒーローに話しがあるんだが」
そう言いながら、歩み寄ってくるトカゲ男。
「お願い、もうヒドイことしないで」
そう叫び、トカゲ男から庇うように、僕を抱きしめる少女。
少女の柔らかい胸の感触が頬に伝わる、こんな時に不謹慎かもしれないが、とても良い香りがする。
「兄ちゃんは喧嘩が強いわけでもないのに、何しに出て来たんだ?」
トカゲ男が問いかけてくる。
信じられないだろうが、異世界転生を期待して僕は出て行ったのだ。
だがそれを正直に言える雰囲気ではない……。
子供を守る母親のように僕を強く抱きしめ「ああっ神様、助けてください」と必死に祈る少女。
僕は少女の頭を優しく撫でる。
「大丈夫、僕に任せて下さい」少女だけに聞こえる声でそう伝える。
僕はトカゲ男から彼女を守るように立ち上がり、叫ぶ。
「
トカゲ男は僕を見て、ニヤリと笑う。
「兄ちゃん、覚悟を決めた男の目をしてるね」
当然だ!異世界に行く覚悟ならずっと前から出来ている。
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