3

 朝になって、良二は目を覚ました。だが、目を覚ました所はまるで鉱山のトンネルのような所だ。昨日は大変だった。寝ていたら、2人の男がやってきて、家から連れ去った。お前を鍛え直すとか言ってた。まさか、こんな事になるとは。きっと、両親が呼んだんだろう。今すぐ逃げ出して、ぶっ殺してやる! だが、良二は思った。ここは一体どこだろう。全くわからない。男に殴られて、気を失った。そして、気づいたときには、トンネルのような所だ。


「うっ、ここはどこ?」

「ここ? ここはアリ塚だよ」


 話しかけたのは、アリだ。まさか、アリがしゃべるなんて。どうかしたんだろうか? まさか、夢を見ているんだろうか?


「どうして僕がここに?」


 良二はまだ呆然としている。アリ塚に連れ去られたとは。まさか、アリに変えられたんだろうか? だったら、早く人間に戻りたいな。


「今日からお前はアリだ! 働け! さもないと女王様が怒るぞ!」

「そんな・・・」


 良二は驚いた。俺はアリに変えられてしまった。昨日まで、オンラインゲームをして楽しい日々を送っていたのに。今日からアリとして生きるなんて。早く人間に戻って、オンラインゲームがしたい。自分にはオンラインゲームしかない。


「ぐずぐず言ってないで、働けよ!」


 横にいるアリは、厳しい口調だ。まるで鬼軍曹のようだ。良二は少しひるんだ。


「働くより、遊ぶのが大事だろ!」


 だが、良二はすぐに抵抗した。だが、アリは全く聞こうとせず、良二を殴った。


「何を言っているんだ! 働け、このニート!」


 アリは良二を蹴った。良二は転んだ。良二は呆然としている。まさか、こんなに厳しい場所があるとは。オンラインゲームよりずっと厳しい世界だ。


「いって! 何をするんだ!」

「バカ言ってんじゃねーよ!」


 また別のアリが良二を殴った。だが、周りのアリはその様子を全く見ていない。良二を全く気にしていないようだ。


「あいたっ!」

「お前みたいなニートに、世間の厳しさを教えてやる!」

「そんな・・・」


 良二はアリをじっと見つめている。自分はニートだから、ここに連れていかれたんだ。早く抜け出さないと。だけど、どうやったら人間に戻れるんだろう。早く元の生活に戻りたい。


「突っ立ってばっかしてないで、働け!」


 突然、アリが良二を蹴った。かなり怒っている。このアリに従わないと、大変な事になるかもしれない。


「は、はい・・・」


 良二はその男についていく事にした。だが、本当はそんな事をしたくない。早く家に帰りたい。だが、このままでは帰れない。アリのままで帰ったら、みんな驚くし、全く気付かないだろうから。人間に戻ってから帰りたい。そのためには働かなくては。


 2匹のアリは外に出た。木があんなに大きく見える。見た事のない光景だ。アリの視点から見ると、世界はこうなのかな? 全く新しい世界のように見える。


 しばらく歩いていると、虫が倒れている。全く動かない。死んでいるんだろうか?


「ほら、この死体を運べよ!」

「えっ、こんなに大きいの?」


 良二は驚いた。まさか、こんなの運べなんて。無理すぎる。本当にできるんだろうか?


「ああ。お前ならできる。運べ!」

「は、はい・・・」


 良二は持ち上げた。予想とは裏腹に、簡単に持ち上げられる。これがアリの力だろうか? あまり気にしていなかったけど、こんなに力持ちだとは。


「気を付けて進めよ!」

「はい・・・」


 良二は運び始めた。だが、重くてなかなか進まない。最初は大丈夫かもしれないと思ったが、やはり重い。


「く、苦しい・・・」

「そんな事言ってないで頑張れ!」


 後ろで持っているアリは怒っている。ニートだった良二は根性がない。もっと働くための根性が必要だ。泣ければ、社会で生きていけないだろう。


「わかりました・・・」


 良二は辛いながらも、協力しながらアリ塚に運んでいく。これが仕事のつらさだろうか? 親が当たり前のようにしている事が、こんなに大変だとは。自分だったら耐えられないだろうな。早く元の生活に戻りたい。


 良二は苦しみながらも、アリ塚に戻ってきた。大広間には、多くのアリがいる。


「よし、よく頑張った」

「あ、ありがとうございます・・・」


 良二はほっとした。やっと戻ってこれた。だけど、もうこんな事、やりたくないな。


「嬉しいだろう」

「うーん・・・」


 だが、良二は戸惑っている。ただ、つらいだけの事だ。どうしてそれが嬉しいと言えるんだろう。その理由が全くわからない。


「だから、仕事ってやりがいがあるんだぞ」

「でも、遊びたい・・・。ゲームがしたい・・・」


 すると、アリはまたもや良二を蹴った。ゲームがしたいって言うだけで蹴られるなんて。ひどすぎる世の中だ。誰にでも楽しみは大事なのに。どうしてそれを妨害するんだろう。


「甘ったれんじゃねぇ!」

「す、すいません・・・」


 良二は呆然としている。何にも抵抗する事ができない。


「怒られたくなかったら、ここで仕事をしろ!」

「は、はい・・・」


 良二は結局、彼らに従う事になった。いつまでこんな日々が続くんだろう。このままアリのままで死ぬんだろうか?


「ここにいる奴の中には、お前みたいな人間だった奴もいるんだ。お前みたいなニートだった奴がな」

「そんな・・・、人間に戻りたい」


 良二は驚いた。このアリ塚には、自分同様にアリにされたニートが多くいるとは。ここはニートを更生するための施設のようだ。


「ほら、ぐずぐず言ってないで、仕事を続けろ!」

「は、はい・・・」


 良二は再びアリ塚を出て、仕事を始めた。いつまでこんな生活をしなければならないんだろう。

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