2023/11/20の投稿・椿象との思い出(中学生編)
こんにちは。カメリアです。
一カ月前くらいの先輩の預言通り、こんなもんじゃない寒さになってまいりましたね。
朝起きるのも辛くて辛くてたまらない冬が始まりました。
この時期になると、ついおせっかいな心配をしてしまうのが道行く女子中高生たちです。
こんなに寒いのにミニスカートと素足にソックスで、とにかく寒そう。
ご自身で、絶対にタイツは履かない、ミニスカ素足で過ごすんだという強い意志のもと、過ごしているなら話は別ですが、校則でタイツを禁止されているなんてこともあり得るのが不憫でならないわけです。
かく言う私の数十年前に通っていた中学校の校則も、真冬もタイツ禁止はもちろんのこと、さらにセーターも学校指定の薄いもののみ着用可という俗に言うブラック校則で、極寒地獄を耐え抜いた経験があります。
紺色の学校のマークが入った薄手のセーターは、私の冬の戦友でもあり、外的から守ってくれた鎧でもありました。
あれは、もう教室にストーブが出ていた中二の真冬の折。
換気のため、休憩時間には必ず窓を開けさせられたのだが、その際、部屋の暖かい空気に誘われるのか、椿象が侵入してきて授業中に騒然となることも多かったです。
ある日の古典の授業中、眠気に抗いつつ先生の話を聞いていた私の目の前に、奴は現れた。どこからともなく飛んできて、私の前の席の多田くんの背中にとまりました。こっそりと休憩時間の換気の際、教室に侵入してきていたのでしょう。
私は思わず悲鳴を上げそうになり、咄嗟に両手で口を覆いました。なぜなら、古典の先生は厳しくて有名な先生だったからです。
数日前も、椿象に声を上げた三山さんが叱責され、黒板の前に立たされ
「授業を妨げてすみませんでした」
と謝らされていました。今なら何かしら問題になりそうですが、当時はそんな横暴な教師も多かったように思います。閑話休題。
そんなこんなで悲鳴を上げることも、誰かに助けを求めることもできない状況で、ふと、椿象と目が合った気がしました。いや、どこが目なのかはよくわかってないですが、バチっとこちらを捉えられたような感覚がしたのです。
その瞬間、緑の悪魔は私の方へ飛んできました。そして、私の胸元に着地したのです。
手で押さえてる口元からヒッと、声にならない音が漏れましたが、幸い先生には気づかれていませんでした。
紺色のセーターにエメラルドのブローチのように動かないそれ。
私は震える手を、お腹の方からセーターとカッターシャツの間にゆっくりと差し入れ、胸あたりのセーターをできる限り自分の身体から離しました。椿象はまだ微動だにしません。
手の震えくらいではびくともしないそれを追い払うために、もう片方の手もお腹からセーターとシャツの間に入れ、神に祈りました。
何を祈ったかなど一つ。
どうか臭いを発しませんように、です。
椿象にとまられてから、緊張と可能な限り刺激しないため、呼吸も止めていました。
もうそれも苦しくなってきた。覚悟を決めなければ。
南無三!
心の中で唱え、セーターを離したまま、セーター越しの奴にデコピンをくらわしてやりました。人生初の反撃です。
祈りが通じたのか、奴は臭いを出さないまま、再び多田くんの背中に移動しました。
多田くんの方へ椿象が移動して数分後、長かった授業も終わり、私はそそくさとトイレへ避難しました。その間に奴に気付いた多田くんがどこかに追い払ってくれることを期待して。
とは言え、別にトイレも安全な場所ではありません。掃除の時に換気で窓を開けるので、奴らはここからも入ってくることができます。
キョロキョロとトイレの個室内を見渡し、何もいないことを確認して、個室に入りカギをかけました。
ふと、殺気を感じました。
いや、殺気ではなく違和感と言った方がいいかもしれません。シックスセンス的な感覚に導かれ、私はトイレットペーパーホルダーのカバーを上げました。
もうお察しでしょう。
奴らは、白いものが好きですからね。
二体仲良く、トイレットペーパーに鎮座しておりました。
私がトイレの個室を飛び出したのは、言うまでもありません。
------
【この記事のタグ】
>中学校 >冬 >思い出 >トラウマ >シックスセンス >椿象
------
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます